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「孤独」と「社会的孤立」は心臓病・脳卒中・感染症などのリスクを高める 人との交流は健康を維持するために必要

 社会的孤立と孤独は、健康と寿命に深刻な影響を及ぼすことが分かってきた。これらは個人だけでなく、コミュニティや社会全体にも悪影響を及ぼす。

 人との交流は、免疫力を高め、心臓病、脳卒中、2型糖尿病などの病気のリスク減らし、健康を維持するために有用であることも明らかになった。

 「社会的な関係は、私たちの幸福にとって重要な役割を果たします。社会的な関係が健康に影響を及ぼすメカニズムを解明する必要があります」と、研究者は述べている。

社会的孤立と孤独は健康に深刻な影響を及ぼす

 世界的な調査によると、高齢者の4人に1人が社会的孤立を経験しており、青少年の5~15%が孤独を経験しているという。

 世界保健機関(WHO)は、社会的孤立と孤独を「世界的な公衆衛生上の懸念」として、2024年に「社会的つながりを育む委員会(WHO Commission on Social Connection)」を設けた。

 社会的孤立と孤独は、健康と寿命に深刻な影響を及ぼすが、その影響はまだ十分に理解されていないとしている。これらは個人に害を及ぼすだけでなく、コミュニティや社会全体にも悪影響を及ぼすという。

 この深刻化する問題に取り組み、人々が健康を維持できるよう、社会的つながりを保つ方法をみつける必要があるとしている。

社会的孤立を抱える人は死亡リスクが1.20倍に上昇

 社会的孤立は健康に悪影響をもたらし、死亡リスクを高めることが、日本人を対象とした大規模な調査でも確かめられた。

 千葉大学などは、「日本老年学的評価研究(JAGES)」に参加した、日本の65歳以上の高齢者3万7,604人を約6年間追跡し、社会的孤立者とそうでない人を比較した。

 その結果、社会的孤立者は、総死亡リスクが1.20倍に、心血管疾患による死亡リスクが1.22倍に、がん死亡リスクが1.14倍に、それぞれ上昇することが明らかになった。

 さらに、社会的孤立に影響を与えやすいものとして、「高収入」「都市部在住」「非婚姻」「退職後の高齢者」を推定した。

 研究は、千葉大学予防医学センターの中込敦士准教授らによるもので、研究成果は、「JAMA Network OPEN」に発表された。

 「社会的孤立は総死亡・心血管疾患による死亡・がんによる死亡と関連していることが分かりました。またその影響は人により異なる可能性が示唆されました」と、研究者は述べている。

 「社会的孤立への対策が広く行われており、今回の研究は、その健康面からの意義を支持するものです。社会的孤立によりとくに影響を受けやすい人がいる可能性も分かりました。今後の施策や介入の優先すべきターゲットの検討に役立つ可能性があります」としている。

出典:千葉大学、2024年

人との交流は免疫力を高め心臓病、脳卒中などの病気のリスクを減らす

社会的孤立や孤独があると健康状態が悪化

 友人や家族、仲間との交流は、免疫力を高め、2型糖尿病、心臓病、脳卒中などの病気のリスクも減らすため、健康を維持するために有用であることが、英ケンブリッジ大学などの調査で明らかになった。

 研究グループは、40~69歳の中高年約50万人を追跡して調査している大規模研究である「英国バイオバンク」に参加した4万2,062人を対象に調査した。

 「社会的孤立や孤独が健康状態の悪化に関係していることは、これまでの調査でも報告されていますが、その理由はよく分かっていませんでした」と、同大学臨床神経科学部のチュン シェン氏は言う。

 「今回の研究で、この関係で重要な役割を果たしているとみられるタンパク質が明らかになり、いくつかのタンパク質のレベルは、孤独の直接的な結果として増加することが示されました」としている。

社会的孤立や孤独に関係するタンパク質を特定

 生体内のタンパク質の機能や、タンパク質同士の機能的なつながりを解明し、生物学的メカニズムを調べる「プロテオーム解析」という手法が注目されている。

 研究グループは今回、参加者の血液サンプルを解析し、社会的に孤立している、または孤独を抱えている人々を対象に、どのようなタンパク質がより多く存在するか、そしてそれらのタンパク質が健康状態の悪化とどのように関連しているかを調べた。

 社会的孤立は、1人暮らしをしていたり、他人と社会的に接触する頻度が低く、社会活動にも参加していない状態で、客観的に測定できる。一方で孤独は、個人が孤独を感じているかどうかにもとづく主観的なものだ。

 研究チームは今回、社会的孤立に関連するタンパク質を175個、孤独に関連するタンパク質を26個、それぞれ同定した。これらのタンパク質の多くは、炎症、ウイルス感染、免疫反応の一部として生成されるほか、2型糖尿病、心血管疾患、脳卒中、早期死亡にも関連していることが分かった。

 研究チームはさらに、メンデルランダム化と呼ばれる統計手法を用いて、社会的孤立や孤独と関係しているタンパク質を調べた。

 こうした手法により、孤独により豊富に生成される、ストレスホルモンの調節などの役割をしている「ADM」や、コレステロール値の上昇や心血管疾患のリスク増加と関連している「ASGR1」など、5つのタンパク質を特定した。インスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化症、がんの進行などに関与しているタンパク質もみつかった。

あらゆる年齢層で孤独を感じている人は増えている

 「今回の研究結果は、健康維持での社会的接触の重要性を浮き彫りにしています。あらゆる年齢層で、孤独を感じている人は増えています」と、ケンブリッジ大学精神医学部のバーバラ サハキアン教授は述べている。

 「私たちが特定したタンパク質は、社会的に孤立したり孤独な人々の健康状態の悪さの根底にある、生物学的特徴を解明する手がかりを与えるものです」。

 「社会的な関係は、私たちの幸福にとって重要な役割を果たします。社会的孤立と孤独は、どちらも健康状態の悪化と早死につながることを示した研究は増えています。社会的な関係が健康に影響を及ぼす根本的なメカニズムを解明する必要があります」としている。

日本老年学的評価研究(JAGES)
Sociodemographic Heterogeneity in the Associations of Social Isolation With Mortality (JAMA Netw Open 2024年5月24日)
Loneliness linked to higher risk of heart disease and stroke and susceptibility to infection (ケンブリッジ大学 2025年1月3日)
Plasma proteomic signatures of social isolation and loneliness associated with morbidity and mortality (Nature Human Behaviour 2025年1月3日)
WHO Commission on Social Connection (世界保健機関)
WHO社会的つながりに関する委員会 (内閣府)

[Terahata]
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