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アルツハイマー病を防ぐためにいま必要なこと 5つの方法で対策
2016年09月28日
アルツハイマー病とは、脳がダメージを受けて記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出る病気だ。発症するともとの状態に戻すのは難しくなる。最近、認知症を予防する効果的な方法が分かってきたので、予防を第一に心がけていくことが大切だ。
2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満が
認知症リスクを高める
9月は「世界アルツハイマー月間」だ。この期間を中心に、世界各国でアルツハイマー病・認知症を正しく理解する啓発活動が行われている。
国際アルツハイマー病協会(ADI)は、世界のアルツハイマー病の有病者数は4,680万人に上り、今後20年間で2倍に増えると予測している。世界の認知症の医療費は82兆円(8,180億ドル)で、2018年までに100兆円(1兆億ドル)突破するとみられている。
アルツハイマー病は認知症の7割を占める。アルツハイマー病を発症すると、記憶をつかさどる脳の海馬の萎縮がはじまり、萎縮が脳全体に拡大していく。アルツハイマー病の人の脳には「アミロイドβ」や「タウタンパク」が多くたまり、脳の神経細胞を破壊していく。これらは、本来、自然に分解されるが、高齢になると分解する働きが低下し、脳にたまりやすくなる。
アミロイドβはアルツハイマー病を発症する10~20年前からたまりはじめ、個人差はあるが、50歳代から増える人もいる。50歳を過ぎたら脳にアミロイドβが蓄積しないよう、予防に取り組みことが大切だ。
近年、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病が、認知症のリスクを高めることが分かってきた。特に糖尿病の人がアルツハイマー病や血管性認知症を発症するリスクは2~4倍に上昇する。
生活習慣病のある人がアルツハイマー病を発症しやすいもうひとつの理由は、糖尿病は脳の動脈硬化を促進するからだ。動脈硬化が進めば脳梗塞の発症リスクが高くなり、血管性認知症にもなりやすくなる。
認知症リスクを高める
アルツハイマー病を予防するために、いますぐできること
国際アルツハイマー病協会(ADI)は、アルツハイマー病を予防するために、次のことを毎日続けることを勧めている。
・ ウォーキングなどの運動を続ける
最近の研究で、アミロイドβやタウタンパクをたまりにくくする方法が分かってきた。運動はもっとも効果が高い予防法だ。特にウォーキングなどの有酸素運動は、脳の血流を良くする効果がある。運動は内臓脂肪を燃やし、血糖値や中性脂肪値を下げ、血圧を下げる効果もあり、いわゆる善玉のHDLコレステロールを高める働きもある。
1日30分の運動を週3日以上行うのが目安だ。30分の時間をとるのが難しいという人は、10分を3回に分けて行っても効果がある。運動の強度は「楽」から「ややきつい」と感じられる程度が目安となる。楽しみながら行うと脳が活性化するため、認知症予防の効果がさらに上がることが期待できる。高血圧、糖尿病、脂質異常症のある人は、安全に運動するために前もってメディカルチェック(医学的検査)を受けよう。
・ 体と脳を同時に使うと効果的
記憶力の回復のためには、体と脳に同時に負担をかけると効果的だ。体と脳でそれぞれの課題を同時に行う能力は、認知症予備群(MCI)の段階から衰えていく。歩きながら計算をしたり、踏み台を昇降しながらしりとりを行うといった運動プログラムを行うと、記憶力や判断力が向上し認知症予防が期待できる。
・ 魚・野菜・果物・大豆を十分に食べる
2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドロームを予防・改善するための食事は、認知症を予防するにも重要だ。具体的には、コレステロールを減少させるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む魚、特にサバ・イワシ・サンマなどの青魚を摂ると、アルツハイマー病の発症リスクが低下するという報告がある。
また、大豆製品にはコレステロールや中性脂肪を低下させる働きのある栄養素が含まれる。納豆に含まれるナットウキナーゼには、血栓の主成分フィブリンを溶かす働きがある。
緑黄色野菜に含まれるビタミンやポリフェノールなどの抗酸化作用のある栄養素には、活性酸素によってうける神経細胞のダメージを減らす作用がある。野菜・果物・ベリー類・海藻類・ナッツ類が有効とされている。
これらの栄養素は日本食に多く含まれるので、日本食が認知症予防に効果的とする研究も報告されている。
・ コミュニケーションにも予防効果がある
人とのコミュニケーションにも予防の効果があり、ふだんから人と関わっている人は認知症になりにくいことが分かっている。大勢の人と一緒に活動したり、楽しくコミュニケーションをとることは、脳へ刺激を与えて脳の神経細胞を活性化させる。社会の中で役割を持つことが認知症予防につながる。できるだけ人の集まる場所に出かけて、積極的にコミュニケーションをとるようにしよう。
・ アルコールを飲み過ぎない
アルコール飲み過ぎは脳の働きを悪くさせる。多量に飲酒する人に認知機能の低下や認知症が多くみられることは良く知られている。高齢のアルコール依存症者には物忘れや認知症が高い割合でみられる。若い依存症の人でも、飲酒のために前頭葉機能が障害されている症例は多い。
アルツハイマー病などによる認知症では、長期間の断酒によって認知機能や物忘れが改善することもあるが、認知症は進行性なので回復するのは難しい。お酒を飲む量をほどほどにし、飲み過ぎないようにする習慣を、若いうちから身につけておくことが必要だ。
食事や運動でアルツハイマー病を防げることを実証
日本でもアルツハイマー病の予防のための大規模調査を開始
日本の国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループは、40歳以上の健常者を対象とした認知症予防に関する数万人規模の調査を7月に開始した。
このシステムは、インターネット健常者登録システム「IROOP」(アイループ)だ。同センターの他に、国立長寿医療研究センター、日本医療研究開発機構、日本認知症学会が協力している。
世界的に認知症患者が増加しており、とりわけアルツハイマー病に対しての予防や治療などの確立が急務とされている。だが実際は、認知機能の改善が期待される薬の治験が計画されても、その有効性を検証するに適した人に参加募集案内をするのが難しいなど、研究はあまり進められていないのが現状だ。
「IROOP」は、こうした状況をふまえ、全国の40歳以上の健康な人を対象に、インターネット上で数万人規模の登録者を募集するシステム。
登録にあたっては、登録者の氏名、生年月、性別等の基本的な情報や、メールアドレスの入力が必須となる。この際、性別や服薬の有無は問われず、同意が得られるのであれば、特に除外基準は設けられていない。
登録すると、基本情報を入力後にインターネット上で病歴や睡眠、食生活などに関する約160項目のアンケート(所要時間約20分)に答え、認知機能を簡易にチェックできる検査「IROOPあたまの健康チェック」(所要時間約15分)を電話で受ける必要がある。登録から6ヵ月ごとに定期アンケート(所要時間約20分)にも回答すると、認知機能を継続してチェックできる。
「IROOP」に登録するメリットとして、(1)健康コラムとしてさまざまなジャンルからの最新情報が届けられる、
(2)簡易認知機能検査による健康チェックが定期的に受けられる、
(3)認知症の発症を予防するような臨床研究や認知症に対する薬の臨床治験に関する情報が提供される
――などがある。 同センターは2016年度8,000人、5年間で4万人の登録を計画しており、初年度は7月から登録を受け付けた。患者でない健康な人を対象にした長期間にわたる大規模調査はこれまでに例がない。 研究グループの代表で国立精神・神経医療研究センターの水澤英洋理事長は「認知症はまだまだ解明されていないことが多い。国民ひとりひとりが最新の正確な情報をもとに、日々の生活の中であたまの健康を維持できるような環境づくりを目指す」と話している。 IROOP(アイループ)
Diet and exercise can reduce protein build-ups linked to Alzheimer's, UCLA study shows(UCLAデイビッド・ジーフェン医学大学院 2016年8月16日)
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