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アルコールを適量飲んでいる人は肥満リスクが減少 ただし少しでも飲みすぎると健康は悪化 アルコールによる健康障害は深刻な問題に
2025年01月06日
少量あるいは適度な量のワインを飲む習慣のある人は、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが低いことが、新たな調査により示された。
アルコールを適量飲んでいる人は、肥満のリスクが低いという調査結果も発表されている。
ただし、アルコールを少しでも飲みすると、肥満や糖尿病のリスクは逆に上昇することも、大規模な調査で確かめられている。
赤ワインを飲んでいる人は心筋梗塞や脳卒中のリスクが低い
少量あるいは適度な量のワインを飲む習慣のある人は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクが低いことが、スペインのバルセロナ大学の新たな研究で明らかになった。 心血管疾患のリスクは、ワインを少量(週に1杯から1日に半杯未満)飲んでいる人では38%低下し、中程度(1日に半杯から1杯)を飲んでいる人では50%低下した。ただし、ワインを飲む量が増えると予防効果は失われた。 研究グループは、「地中海式ダイエット」が心血管系の健康に及ぼす影響を調査している多施設共同研究である「PREDIMED」プロジェクトの参加者1,232人を対象に調査した。 「アルコールの飲みすぎは深刻な健康障害をもたらしますが、ワインを1日に適量を飲むくらいであると、心臓疾患のリスクを軽減できる可能性があります」と、同大学食品科学部および栄養・食品安全研究所のイネス ドミンゲス氏は言う。 「ただし、ワインを飲むのは食事中であるべきであり、空腹時に飲むべきではありません。アルコールを飲むときは食事も重要で、バランスの良い健康的な食事が勧められます」としている。 「地中海式ダイエット」は、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の伝統的な食事スタイルで、野菜や魚を食事に多く取り入れ、未精製の全粒穀物、チーズやヨーグルト、豆類、ナッツ類を食べ、不飽和脂肪酸が含まれるオリーブオイルを多くとることなどが特徴となる。 食事といっしょに、ポリフェノールが含まれる赤ワインを適量飲むのも、「地中海式ダイエット」の特徴のひとつだ。適度な飲酒は肥満のリスクを減らす?
適度な飲酒は、肥満のリスクを減らす可能性があるという別の研究も発表されている。研究は、米テキサス工科大学健康科学センターなどによるもの。 研究グループは、米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した8,236人のデータを解析した。調査の参加者のうち、46%は飲酒の習慣があり、1日にアルコール56g以上の大量の飲酒をしている人は10%に上った。 アルコール20gが含まれるお酒の量は、ビール中瓶(500mL)1本、ワイン小グラス(200mL)1杯、ウイスキーダブル(60mL)1杯が目安になる。 解析した結果、適度な飲酒を週に数回行っている人は、まったく飲まない人に比べ、肥満になる可能性が27%低いことが分かった。 一方で、大量の飲酒をしている人は、肥満になる可能性が46%も高いことも示された。 「今回の研究は、肥満に対策するために、アルコールを飲む習慣のない人に飲酒を勧めるものではありません」と、同センター医療サービス研究部門のアハメド アリフ氏は強調している。 「アルコールの飲みすぎは、肥満をはじめとするさまざまな健康障害を引き起こします。ただし、アルコールを飲む習慣のある人に、完全な禁酒を勧めるような保健指導は行き過ぎである可能性もあります」。 「アルコールとの上手な付き合い方を学ぶ必要があります」としている。少しでも飲みすぎると糖尿病リスクは逆に上昇
アルコールを少しでも飲みすぎると、肥満や糖尿病のリスクが上昇するという別の研究も発表されている。 米国内分泌学会が発表した研究では、1日に平均して純アルコールに換算して28g以上を飲んでいる人は、肥満や糖尿病のリスクが高く、体脂肪量も多いことが明らかになった。 研究グループは、大規模な調査研究である英国バイオバンクに参加した40万8,540人のデータを解析した。アルコールの摂取頻度や量と2型糖尿病や肥満などの発症との関連を調べた。 その結果、アルコール飲料を飲む量が、純アルコールに換算して14g増えると、肥満のリスクは1.08倍に、2型糖尿病のリスクは1.10倍に上昇し、体脂肪量は0.36kg増えることが示された。 「アルコール摂取は、肥満、肝臓病、心臓病、糖尿病など多くの病気に関係しており、公衆衛生上の重大な懸念事項になっています」と、カナダのマギル大学医学研究所のティアンユアン ルー氏は言う。 「これまで適度な飲酒をしている人は、糖尿病や肥満になりにくいという調査結果も発表されていますが、今回の研究では、アルコールの摂取量が少しでも増えると、それらの予防効果は打ち消されることが示されました」としている。アルコールの飲みすぎによる健康障害は深刻
米国では、アルコールの飲みすぎがもたらす健康障害が深刻な問題になっている。
フロリダアトランティック大学の研究によると、米国でのアルコールに関連する死亡者数は、1999年から2020年にかけてほぼ2倍に増加した。
アルコールによる10万人あたりの死亡率は、1999年の10.7人から、2020年には21.6人にほぼ倍増している。
すべての年齢層で増加がみられるが、とくに25~34歳の若年者と、55~64歳の中高者で、アルコールに関連する死亡者は増えている。男性だけでなく、女性でも死亡者は増えているという。
「アルコールの飲みすぎが、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の主要なリスク要因であり、全死亡率を引き上げる原因になっていることを知るべきです」と、同大学医学部および人口健康・社会医学部のリチャード ドール教授は言う。
「多量のアルコールを毎日摂取すると、肝臓障害も引き起こし、糖尿病や肥満にも影響します。プライマリケアでアルコール摂取のスクリーニングを実施し、アルコールがもたらす健康障害に対して、個別対応した介入により対処すれば、改善できる可能性があります」としている。
Urinary tartaric acid as a biomarker of wine consumption and cardiovascular risk: the PREDIMED trial (European Heart Journal 2024年12月18日)
Patterns of alcohol drinking and its association with obesity: data from the third national health and nutrition examination survey, 1988-1994 (BMC Public Health 2005年12月5日)
Light or moderate alcohol consumption does not guard against diabetes, obesity (米国内分泌学会 2023年6月27日)
Dose-dependent Association of Alcohol Consumption With Obesity and Type 2 Diabetes: Mendelian Randomization Analyses (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2023年6月27日)
Alcohol-Related Deaths in the U.S. More than Double from 1999 to 2020 (フロリダアトランティック大学 2024年11月18日)
New Clinical and Public Health Challenges: Increasing Trends in United States Alcohol Related Mortality (American Journal of Medicine 2024年11月10日)
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