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食育推進計画を策定した市町村は78%に上昇 「平成28年度食育白書」

 農林水産省は「平成28年度食育白書」を5月30日に公表した。朝食を食べない成人は11.4%に上り、朝食欠食は20歳以降に習慣化していることが判明した。また、食育推進計画を策定した市町村は78.1%に上昇した。
「食事バランスガイド」の活用を呼びかけ
 食を取り巻く社会環境や生活様式等の変化により、国民の食に関する価値観やライフスタイルは多様化している。また、インターネットの普及により、食品や食べ方など、食に関する情報が増大する中で、情報の受け手である国民が食に関する正しい情報を適切に選別し活用することが難しくなっている状況も見受けられる。

 食育の推進基本計画や白書では、栄養バランスに配慮した食生活や、生活習慣病の予防や改善に気をつけた食生活の大切さを強調している。ただ、栄養バランスが取れている食事かどうかの判断するのは、一般の人にはなかなか難しい。そこで国では「食事バランスガイド」の活用を呼びかけている。

 「食事バランスガイド」は、1日に「何を」「どれだけ」食べたらいいかを考える際の参考になるように、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストで分かりやすく示したもので、農水省と厚労省が共同で作成した。

 その効果について、国立がん研究センターなどは、ガイドに沿った食事をしている人は、していない人に比べて死亡リスクが15%低くなるという調査結果を公表した。心疾患や脳卒中などを含む循環器疾患による死亡のリスクは、ガイドの遵守得点がもっとも高いグループは、得点が最も低いグループに比べて16%下がっていた。同センターは「不足しがちな野菜や果物を積極的に摂取し、栄養バランスを保つことが長寿につながる」と分析している。
「主食・主菜・副菜」を毎日食べている男性は半数
 農林水産省が平成28年に実施した「食育に関する意識調査」では、ふだんの食生活で特に力を入れたい食育の内容についての質問の回答は、「栄養バランスのとれた食生活を実践したい」(56.9%)がもっとも多く、次いで「食品の安全性について理解したい」(46.5%)、「規則正しい食生活を実践したい」(39.4%)という回答が上位を占めた。
 栄養バランスに配慮した食事の目安でもある「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ毎日食べている」人の割合は、男性53.0%、女性64.9%で、男女ともにその割合は2年間でやや低下している。
 また、主食・主菜・副菜のうち、組み合わせて食べられないものを尋ねたところ、男女ともに「副菜」と回答した人の割合が最も高く、その割合は7割を超えている。
成人の朝食欠食 半数は20歳以降に習慣化
 朝食を食べることは規則正しい食習慣の基本で、朝食を食べる習慣や成長段階に応じた基礎的な食生活習慣の形成が、将来にわたり健康的な心身の育成につながると、食育推進計画では定められている。

 ふだん朝食をほとんど毎日食べていると回答した成人は83.7%、小学6年生は87.3%、中学3年生は83.3%だった。

 朝食の欠食状況について、朝食を「週に2~3日食べる」「ほとんど食べない」と回答した成人は11.4%だったのに対し、朝食を「あまり食べていない」「全く食べていない」と回答した成人は11.4%、小学6年生は4.5%、中学3年生は6.6%という結果だった。
 また、成人の朝食欠食が始まった時期について、中学生、高校生の頃から習慣化したという人が2割程度であるとともに、20歳以降に朝食を欠食し始めたと回答した人は男女とも半数に上る。
 また、毎日朝食を食べる子供ほど、学力調査の平均正答率が高い傾向がみられた。さらに、2016年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査によると、毎日朝食を食べる子供ほど、体力合計点が高い傾向がある。
朝食を欠食する女性は冷え性になりやすい
 朝食欠食の習慣は健康な成人でも深刻な影響をもたらす。国立がん研究センターなどの調査によると、朝食欠食は脳卒中、中でも脳出血の発症リスクを高めることが明らかになった。

 一般社団法人Luvtelliなどが構成するWill Conscious Marunouchi実行委員会は、東京・丸の内で「まるのうち保健室」を開催。1,800人を対象とした測定結果によると、働く女性は忙しい日々の末に、朝食の欠食率が高いことや、デスクワークによる運動不足で筋力量が低下していること、平均睡眠時間が短いことなど、「栄養」「運動」「睡眠」の3つの要素が不足していることが分かった。

 また、朝食の大切さを重視する医学や栄養学の専門家でつくる「腸温活プロジェクト」は、朝食を食べる頻度が少ない女性は冷え性になりやすいという調査結果を発表した。20~40歳代の働く女性を対象に実施した、低体温と冷え、朝食についてアンケートでは、32.5%が体温36度未満の低体温であることが分かった。低体温の傾向は若いほど高く、20歳代は37.0%に達していた。

 低体温者は、「眠りが浅い」「胃腸の不調」「むくみ」「太りやすい」などの不調を日常的に感じていたという。「冷え」については、全体の82.5%が日常的に感じていると回答した。朝食を食べる頻度との関係を調べたところ、週の半分以下しか食べていない人は55.0%に達した。
78.1%の市町村が食育推進計画を策定 埼玉県、千葉県の例
 食育基本法では、食育の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、食育推進会議において、基本計画を作成するものと定めている。基本計画に作成の目標は、2010年度までに都道府県では100%、市町村では50%以上としている。

 都道府県の食育推進計画の策定率は、2007年度は85.1%だったのが、2008年には100%に到達し、目標を達成した。一方、市町村では、2007年度は4.1%(1,834市町村中75市町村)だったのが、2017年3月には78.1%まで増加し、作成割合が100%の都道府県は19県に上り、作成割合が50%に満たないのは7道県から5道県に減った。第3次基本計画では、市町村も2020年度までに100%にすることを目指している。

 

 埼玉県では、市町村食育推進計画の作成率は、2015年には68.3%だった。全国平均の76.7%をやや下回っているので、未作成市町村への作成支援を実施。未作成市町村での希望する支援を尋ねたアンケート調査では、「計画作成に際して専門的なアドバイスを具体的に適宜受けられること」が100%となっており、次いで「計画の作成方法に関する研修会や講習会等が開催されること」が多かった。そこで、それらを盛り込んだ研修が実施された。

 研修会は、保健所の参加も多く、保健所としての市町村支援がさらに必要な状況であることを認識してもらう機会にもなったという。その結果、2017年3月末には、作成 率が82.5%に上昇した。

 千葉県では、市町村食育推進計画の作成率は、2013年には33.3%だった。「市町村健康増進計画」と「市町村食育推進計画」は、関連部局の重なりが多く、相互の計画の整合性を図りながら総合的に推進しやすいことから、一体的な作成が推進された。

 具体的には、両計画とも作成されていない市町村が多い地域を重点支援とし、地域の健康福祉センター・農業事務所が連携して「市町村計画策定支援会議」を開催。2015年には「市町村食育推進計画作成のための手引き」を作成し、2016年には県の担当部局の幹部が、市町村の健康増進・食育関係課長等の幹部を訪問。その結果、2016年度末には、作成率が59.3%に上昇した。

平成28年度 食育白書(農林水産省 2017年5月30日)
[Terahata]
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