ニュース

健康診断でパーキンソン病・認知症のリスクが分かる 健診で早期発見・予防できる可能性が

 名古屋大学などの研究グループが、健康診断の受診データから、パーキンソン病(PD)とレビー小体型認知症(DLB)を合わせた「レビー小体病」のリスクの高い受診者をみつける方法を開発したと発表した。2つ以上の前駆症状を有する50歳以上の受診者の5.7%に高リスク者が存在するという。
パーキンソン病・認知症を早期発見するための検査が必要
 パーキンソン病の国内患者数は20万人で、動作緩慢などの運動障害と認知機能障害があらわれる。また、レビー小体型認知症の国内患者数は、60~90万人程度と推定されるアルツハイマー型認知症に次いで多く、幻視などの認知機能障害とパーキンソン病に似た症状があられる。

 それらを合わせた「レビー小体病」は、異常タンパク質(αシヌクレイン)が脳の神経細胞内に蓄積することが特徴となる、難治性の神経変性疾患だ。

 治療薬も使われているが、たとえばパーキンソン病は発症後数年は良好にコントロールできても、その後は運動障害が高度になることが知られている。その原因は、神経症状の発症時にすでに神経変性が進行していることなどだ。発症時にすでに50%以上のドーパミンの神経細胞が死滅していることが知られている。

 「レビー小体病」を早期発見して、治療を開始することが重要となる。そのために、効果的な検査法が求められている。

健康診断で早期発見 50歳以上の受診者の5.7%がハイリスク
 「レビー小体病」を症状を発症する10〜20年前から、脳の神経細胞に異常タンパク質がたまり、便秘や、レム睡眠(浅い眠り)中に筋肉を抑制する神経の働きが悪くなるREM期睡眠行動異常症(RBD)、嗅覚低下などの前駆症状があらわれる。発症前に病態を抑制することが重要となる。

 画像検査により早期診断する方法も開発されつつあるが、日本人での前駆症状の保有率や高リスク者を見つけるのは難しい。

 そこで、名古屋大学などの研究グループは、JA岐阜厚生連久美愛厚生病院、だいどうクリニックの2つの検診センターと連携し、これらの施設の健診受診者(年間1万2,378例)を対象に、「レビー小体病」の前駆症状についてのアンケート調査と、高リスク者の疾患管理データベースの構築を目的とした研究を行った。

 その結果、50歳以上の健診受診者の中に、2つ以上の前駆症状をもとレビー小体病患者のハイリスク者が5.7%いることが明らかになった。

 また、高リスク者は他の症状(うつや日中の眠気)のスコアも高く、レビー小体病患者に似た前駆症状もあった。高リスクの男性では、血液検査で貧血がみられ、総コレステロールやLDLコレステロールも低かった。

 これまでの研究で、貧血やコレステロール低値は将来のパーキンソン病発症の危険因子であることが報告されており、今回の研究でも同様の結果が得られた。

 その後、ハイリスク者に対して、運動機能、認知機能、生理検査、画像検査などの二次精査を行い、神経症状はないものの、画像検査(ドーパミントランスポーターシンチグラフィー)や、心臓の交感神経機能を調べる画像検査などを行うと、レビー小体病に特徴的な異常を発見できた。

健診で早期発見し先制治療につなげるのが目標
 「レビー小体病の自覚症状がない人は医療機関を受診しないため、通常診療でハイリスク者をみつけるのは困難ですが、健康診断制度と連携したレジストリを活用すれば、神変性疾患・認知症のリスク評価が可能になります」と、研究グループは述べている。

 研究グループは今後は、前駆期のレビー小体病の患者に対して、疾患の発症を遅らせる先制治療につなげる研究をはじめる予定だ。

 研究は、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学の勝野雅央教授、服部誠客員研究員、国立長寿医療研究センターの鷲見幸彦病院長らの研究グループによるもの。研究成果は米医学誌「Journal of Neurology」に掲載された。

名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学
国立長寿医療研究センター
Subjects at risk of Parkinson's disease in health checkup examinees: crosssectional analysis of baseline data of NaT-PROBE study(Journal of Neurology 2020年2月7日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶