ニュース

糖尿病治療薬「GLP-1受容体作動薬」をダイエットなどに使うのは適応外 注意を呼びかけ

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、2型糖尿病の治療薬である「GLP-1受容体作動薬」が、ダイエットや痩身などを目的とした適応外の使用をされているとして、製薬各社が「2型糖尿病以外に使用された場合の安全性・有効性は確認されていません」と強調していることを公表した。
GLP-1受容体作動薬の適正使用を呼びかけ
 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、2型糖尿病の治療薬である「GLP-1受容体作動薬」について、製造・販売している製薬企業4社が「適正使用に関するお知らせ」の公開を始めたことを、公式サイトの注意喚起情報のページに掲載した。

 注意喚起を公開したのは、ノボ ノルディスク ファーマ、アストラゼネカ、サノフィ、日本イーライリリーの4社。

 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として承認されているが、「美容・痩身・ダイエットなどを目的とした適応外の使用を推奨していると受け取れる広告などがインターネット上の一部ホームページなどに掲載されている」としてる。

 「現時点で日本でのGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病のみを効能・効果として承認を取得しているものであり、それ以外の目的で使用された場合の安全性および有効性については確認されておりません」と、適正使用を呼びかけている。

 「GLP-1受容体作動薬は、医師により2型糖尿病の患者さまおのおの状態をご確認いただいた上で、添付文書に従って適切に処方・使用されることを目的とした医薬品であり、国内で承認された使用法以外で使用された場合、本来の効果が見込めないだけでなく思わぬ健康被害が発現する可能性も想定されます」と強調している。
GLP-1受容体作動薬はどんな薬か?
 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病を効能・効果とする薬剤。内因性のインスリン分泌が残っている2型糖尿病患者向けの注射薬だ。

 食事をしてブドウ糖やアミノ酸が小腸に到達すると、小腸からインクレチンという消化管ホルモンが分泌される。GLP-1はインクレチンの1つで、膵臓のβ細胞にあるGLP-1受容体と結合してインスリン分泌を促し、血糖値を下げる働きをする。

 GLP-1は体内のDPP-4という酵素によって速やかに分解されてしまう。そこでGLP-1の働きが持続するように作られた薬がGLP-1受容体作動薬。

 血糖値が上昇したときのみにインスリン分泌を増やすため、単独で使用する場合には低血糖を起こしにくいことが特徴となる。DPP-4阻害薬とほぼ同じ仕組みだが、GLP-1受容体作動薬の効果はこれより強い。

 GLP-1受容体作動薬は、それぞれの専用の注入器を使って、患者自身が投与する。1日1~2回注射する薬剤と、週に1回注射する薬剤がある。

 ボタンを押すだけで、あらかじめ充填されている1回分の薬液が自動的に注入される、注射に慣れていない人でも簡単な操作で使えるように工夫された新しいタイプの注入器も使われている。

 持効型インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬を配合した製剤も新たに登場している。2つの薬剤を1回の注射で投与でき、お互いを補い合う作用を期待できる。持効型インスリン製剤の作用で1日を通して血糖値をコントロールし、食後の血糖値が上昇するタイミングでGLP-1受容体作動薬が効き、血糖値の上昇を抑制するという仕組みだ。

 さらに、GLP-1受容体作動薬の飲み薬の開発も進められている。自己注射で治療するのが難しい人でも、効果的な治療ができるようになると期待されている。
食欲を抑え体重減少を促す作用も
 GLP-1受容体作動薬はインスリン分泌を促して血糖値を下げる薬だが、その他にも多様な働きがある。

 膵臓のβ細胞に作用して血糖値を下げるインスリン分泌を促したり、α細胞に作用して血糖値を上げるグルカゴン分泌を抑える働きがある。また、食欲を抑える作用があり、体重減少を期待できる。

 肥満または過体重の2型糖尿病の成人を対象に行われた臨床試験では、GLP-1受容体作動薬が、空腹感を軽減し、満腹感を高めることで食事の量を減らし、カロリー摂取量を減らすことを助け、体重減少を促すことが示された。

 この試験では、食事や運動などの生活習慣の改善を指導を行った上で、GLP-1受容体作動薬が投与された。その結果、同剤が投与されなかった群に比べ、同剤が投与された群では3倍以上の体重減少がみられた。

 なお、同剤の肥満症の効能・効果の追加については、日本を含め世界中で現在開発中であり、まだ承認はされていない。

関連情報
GLP-1受容体作動薬の肥満症に対する治療効果 臨床試験で有意な体重減少を示す
臨床試験の結果はまだ出ていないと強調
 GLP-1受容体作動薬については、日本糖尿病学会が7月9日に「GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」を公開した。「一部のGLP-1受容体作動薬については、健康障害リスクの高い肥満症患者に対する臨床試験が実施されていますが、その結果はまだ出ていません」と指摘している。

 製薬企業4社は、「GLP-1受容体作動薬の製造・販売に責任を有する企業として、製品をご使用になる患者さまの安全を確保することが最も重要と考えております」として、「今後も引き続き医療関係者の皆さまおよび患者さまに製品の適正な使用をお願いしていくとともに、承認された効能・効果外の使用を推奨していると受け取れる記事などについては、確認次第、規制当局への連絡、相談を速やかに実施してまいります」と述べている。
GLP-1受容体作動薬 製造販売元および製品一覧
ノボ ノルディスク ファーマ

ビクトーザ皮下注18mg

オゼンピック皮下注0.25mg SD

オゼンピック皮下注0.5mg SD

オゼンピック皮下注1.0mg SD

リベルサス錠3mg
(販売提携:MSD)

リベルサス錠7mg
(販売提携:MSD)

リベルサス錠14mg
(販売提携:MSD)

アストラゼネカ

バイエッタ皮下注5µgペン300

バイエッタ皮下注10µgペン300

ビデュリオン皮下注用2mgペン

サノフィ

リキスミア皮下注300µg

日本イーライリリー

トルリシティ皮下注0.75mgアテオス
(販売元:大日本住友製薬)

[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶