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ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関

 急性冠症候群患者に対する心臓リハビリテーションによる運動耐容能向上と血管内皮機能改善効果は正相関し、前者はCRPの低下と、後者はHDL-Cの上昇と相関することがわかった。昭和大学医学部内科学講座循環器内科部門の古山史晃氏らが第45回日本動脈硬化学会学術集会(7月18~19日・東京)で発表した。

 急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome.ACS)後の心臓リハビリテーションは、血清脂質や血糖、血管内皮機能、運動耐容能の改善をもたらすが、それら各指標の相互の関連は十分に検討されておらず、動脈硬化進展を抑制する作用機序に明らかでない部分が残されている。古山氏らの報告は、心臓リハビリテーション後の各指標の改善の程度が互いに関連するのか否かを詳細に検討したもの。

 対象は2009年4月から2012年5月にACSで入院した患者から、80歳以上、重症心不全、重症肝障害、重症腎障害、感染症、悪性疾患を除外した32名。急性期治療後、すべての患者に心臓リハビリテーションを開始。開始前と開始後平均6か月の時点で、採血および血管内皮機能検査、心肺運動負荷検査を施行し、各指標の相関を評価した。

 主な患者背景は、年齢63.6±8.9歳、BMI24.1±3.5、高血圧75.0%、脂質異常症90.6%、糖尿病37.5%、喫煙率78.1%など。心臓リハビリテーションは、体操および自転車型エルゴメーターによる約30分間の有酸素運動を週1~3回施行。血管内皮機能は、血流依存性血管拡張反応(Flow Mediated Dilation.FMD)で評価した。

心臓リハ開始6か月後、血管内皮機能、運動耐容能が有意に改善




 心臓リハビリテーション開始6か月後の各指標の変化をみると、血清脂質関連では、LDL-Cが119.9→84.6 mg/dL(p<0.001)、HDL-C 44.2→50.2 mg/dL(p<0.001)、nonHDL-C 153.1→114.5 mg/dL(p<0.01)、ApoA 1127.2→139.3 mg/dL(p<0.001)、ApoB 103.2→79.6 mg/dL(p<0.001)とそれぞれ有意に改善したが、TGは125.7→128.3 mg/dL、ApoEは4.1→3.9 mg/dLで、有意な変化はなかった。またHbA1cは5.8%(JDS)で変化がなかった。

 このほか、CRP0.28→0.08 mg/dL(p<0.05)、BNP194.7→68.5 pg/mL(p<0.05)、FMD3.43→4.83%(p<0.01)、嫌気性代謝閾値のVO(AT値)11.8→13.0 mL/分/kg(p<0.001)、PeakVO2 18.4→20.1 mL/分/kg(p<0.001)と、血管内皮機能や運動耐容能の指標も有意に改善していた。

FMDとPeakVOが正相関。それぞれHDL-C上昇、CRP低下が寄与
 続いて、FMDと運動耐容能、およびその他の各検査指標の相関を検討したところ、FMDとPeak VOの変化量は有意に相関していた(ρ=0.434,p=0.013)。またFMDの改善はHDL-Cの上昇と有意に相関し(ρ=0.355,p=0.049)、Peak VOの上昇はCRPの低下と有意な相関(ρ=-0.431,p=0.015)がみられた。このHDL-CとCRPの2項目以外、LDL-CやnonHDL-C、TG、HbA1c、ApoA1、ApoB、ApoE、BNPは、いずれもFMDやPeak VOと有意な相関がみられなかった。なお、AT値はいずれの検査指標とも相関がなかった。

 これらの結果から、ACS後の心臓リハビリテーションは血清脂質状態の改善による血管内皮機能向上、CRP低下による運動耐容能上昇といった多面的効果をもたらし、動脈硬化進展予防に益すると考えられる。

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