武士の「礼法」が健康づくりに?1日5分の動作で脚力が25%アップ 東北大学が検証
かつて武士の生活に欠かせなかった礼法の所作が、現代人の健康づくりに役立つ可能性がある──。
東北大学の研究チームは、武士の礼法に基づく「しゃがんで立つ」動作を取り入れたトレーニングを3カ月間続けることで、1日わずか5分でも脚力が大きく向上することを明らかにした。日常生活に取り入れることで、高齢期の転倒防止や筋力低下の予防につながる可能性があるという。
高齢期前から取り入れることで筋力低下の予防に
この研究は、小笠原彩香さん(研究推進時:東北大学大学院医学系研究科大学院生)、佐藤明さん(同・非常勤講師)、永富良一教授(研究推進時:大学院医工学研究科、現・東北大学産学連携機構未来社会健康デザイン拠点長)らの研究チームによって実施され、科学誌に発表された。
研究チームが注目した「礼法」とは、かつて武士が受け継いできた動作様式で、「立つ・座る・歩く」といった日常の動作を、反動をつけずにゆっくりと行うのが特徴である。「一見すると効率の悪い動きに見えますが、足腰の力を保つ工夫であり、文化として受け継がれてきたもの」として研究を進めてきた。
研究では、礼法の経験がない20歳以上65歳未満の成人34人を「礼法トレーニング群」と「コントロール群」に17人ずつ分けて実施。「礼法トレーニング群」は、1日約5分の礼法を取り入れた運動を週4日以上、3カ月間継続。一方の「コントロール群」は特別な運動を行わず、普段どおりの生活を続けてもらった。
その結果、3カ月後には「礼法トレーニング群」で平均25.9%の筋力向上が見られたのに対し、「コントロール群」では2.5%の増加にとどまった。
筋力の低下は上半身よりも下半身で顕著に現れることが知られており、高齢者が自立して生活を続けるためには下肢の筋力維持が欠かせない。一方で、時間や費用のかかるトレーニング法は継続が難しいという課題がある。
今回の研究は、1日5分程度の礼法トレーニングで筋力向上が得られる可能性を示した点で、課題解決への新たな糸口となる。特に、高齢期を迎える前から取り入れることで、脚の筋力を鍛え、筋力低下を予防する手段の一つになり得るという。
研究チームは「これまで十分に検証されてこなかった日本の伝統的な動作である礼法の健康効果を科学的に評価した点に大きな意義があります」としており、今後、国内外から注目される新たな健康資源となる可能性を示唆している。
武士の日々の所作で脚力が強化する 1日わずか5分で高齢期の筋力低下を防ぐ効果に期待(東北大学/2025年9月1日)
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