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世界のがん発症数は1.5倍に増加 30%は生活改善で予防可能
2014年02月07日
「世界がんデー(World Cancer Day)」が2月4日に、世界各地で開催された。世界がんデーは、世界保健機関(WHO)のサポートを受け、世界最大の連合団体である国際対がん連合(UICC)が実施している。世界の155ヵ国の800以上のがん学会、対がん協会、行政機関、研究機関、治療センターが協力している。
これに先立ち、WHOの付属機関である国際がん研究機関(IARC)が、報告書「世界がんレポート2014(World Cancer Report 2014)」を発表した。5年ごとの発表される報告書は、40ヵ国以上の約250人の科学者が協力し作成された。
がんによる死亡数は年間820万人 発症数は1,410万例
「世界がんレポート2014」の主な内容は次の通り――
・ がんは、ひとつの疾患として、世界でもっとも多くの死亡数を出している。2012年のがんによる死亡数は820万人に上ったと推定されている。
・ がんの発症数は毎年、約11%ずつ増えており、発症数は2012年には1,410万例と推定されている。これは、インド最大の都市ムンバイの人口とほぼ同じ数だ。
・ がんの発症数は2030年には50%増え、2,200万人に達すると予測されている。
・ がんを部位別に、死亡数の多い順にみると、肺がん(159万人)、肝臓がん(74.5万人)、胃がん(72.3万人)、大腸がん(69.4万人)、乳がん(52.1万人)、食道がん(40万人)となっている。
・ がんによる経済的負担は、2010年には227兆円(1.16兆ドル)に上る。がん治療が整備されている先進国では、医療経済を圧迫している。
・ がんによる死亡の30%は、5つの生活スタイル(肥満、不健康な食事、運動不足、喫煙、アルコール摂取)が原因となっている。
がんの30%は生活スタイルを改善すれば予防が可能
IARCディレクターのクリストファー ワイルド博士は、「がんによる死亡の30%は、不健康生活スタイルを改善すれば予防が可能です」と指摘する。
がんの危険因子となるのは、▽喫煙、▽過体・肥満、野菜・果物などの健康的な食品の不足、▽運動不足、▽アルコールの過剰摂取、▽発がん性HPVなどの感染症、▽都市の大気汚染、▽農村でのばい煙などだ。
世界がんデーの2014年のテーマは「がん神話を疑え」。がんは完治できない病気であり、がんに対し行動できることはないと思い込んでいる人が多いが、実際にはがんに対策できる方法はたくさんあるという。
特に深刻なのは喫煙の影響だ。肺がんの70%は、喫煙が原因となり発症する。喫煙習慣のある人は、たばこをやめるだけで、肺がんの発症リスクを大きく下げることができる。
肺がんによる死亡数は年間160万人に上り、がんの中ではもっとも多く、がんによる全死亡の5分の1に相当する。
20歳の人が、たばこを吸わずに、健康的な食事と運動を行い、アルコールはほどほどにし、適正体重を維持していれば、歳をとってからがんを発症するリスクはかなり下げられる。
また、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染していると胃がんの発症が増え、肝炎ウイルスに感染すると肝臓がんが増える。これらは、適正な治療を行えば、多くは予防が可能だ。
がんによる死亡者の70%は途上国に集中
途上国でも寿命は延びており、生涯にがんを発症するリスクは拡大している。途上国では、がん対策が始まったばかりで、十分な成果を得られていない。がんによる死亡者の70%は、アフリカ、アジア、中央・南アメリカに集中している。
WHOのマーガレット チャン事務局長は、「途上国では、人口の増加と寿命の延長に伴い、がんの脅威が増している。これらの国では、がんのスクリーニング検査と早期発見プログラムが着手されたばかりだ」と話す。
2012年にがんと診断された新たな患者数は、全世界でアジアが半数近くを占め、その大半は中国だった。次いで欧州が25%、北中南米が20%、アフリカ・中東が8%となっている。また、がんによる死亡者の70%は、アフリカ、アジア、中南アメリカに集中している。
途上国では公衆衛生上のアナウンスは十分に行き届いていない。中国では世界のたばこ製品の3分の1が消費されているが、中国政府が公衆の場での禁煙や分煙を禁止するようになったのは最近のことだ。
途上国でも寿命は延びており、生涯にがんを発症するリスクは拡大している。途上国では、がん対策が始まったばかりで、十分な成果を得られていない。
がんは早期発見・治療により治癒率が上昇する病気
がんの予防とともに大切なのはがん検診だ。がんは早期発見・治療により治癒率が上昇する疾患。日本でも厚生労働省が「がん検診推進事業」を勧めている。
がん検診の目的は、初期のがんを見つけ、適切な治療で治すこと。これが、結果的に個人や社会集団全体の死亡リスクを下げることにつながり、大きなメリットがある。
日本のがん検診の対象となっているのは、主に▽胃がん、▽肺がん、▽大腸がん、▽乳がん、▽子宮頸がんだ。国と市区町村では、無料や少額の自己負担でがん検診を実施している。
現在では、日本人のおよそ2人に1人がんになり、3人に1人がんで死亡している。がんを早期に見つけることは重要な課題となっている。
国際がん研究機関(IARC)世界保健機関(WHO) がん
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