ニュース
腸内の善玉菌が少ないとうつ病リスクが上昇 腸内環境とメンタルヘルス
2016年06月29日
腸内のビフィズス菌などの善玉菌が少ない人はうつ病リスクが高いことが、国立精神・神経医療研究センターとヤクルト本社の研究で明らかになった。
うつ病の治療で注目される「腸―脳相関」
うつ病の治療を受けている患者の数は70万人で、治療を受けていない罹患者はその3~4倍に上ると推定されている。うつ病の原因として、神経伝達物質の異常、ストレス反応における内分泌学的異常、慢性炎症などの生物学的な要因が考えられているが、いまだに不明な部分が多い。
一方、ヒトの腸内には重さにして約1~1.5kg、1000種類以上もの腸内細菌が生息し、食物からの栄養素の吸収、ビタミンやタンパク質の合成、体外からの新たな病原菌の侵入の防止など、多岐にわたる重要な機能を担っている。
最近の研究では、腸内細菌は脳の機能にも影響を与えることが分かっており、「腸―脳相関」が注目されている。
うつ病の動物モデルを用いた実験で、うつ病様の行動異常やストレス反応において腸内細菌が関与しているという報告が増え、ビフィズス菌や乳酸菌といったいわゆる善玉菌はストレス反応を和らげると考えられている。
また、健常者でのストレス症状に対するプロバイオティクス(生きた善玉菌を含む食品)の効果を報告した研究も増えている。
しかし、これまでうつ病患者を対象として腸内細菌の構成や菌数を健常者と比較した研究はほとんどなく、うつ病患者の腸内細菌において、善玉菌が多いか少ないかについて具体的なエビデンスが求められていた。
ビフィズス菌が少ないとうつ病リスクは3倍に上昇
今回の研究では、43人の大うつ病性障害患者と57名の健常者を対象に、被験者の便を採取して、ビフィズス菌と乳酸桿菌(ラクトバチルス)の菌量を測定し比較した。
その結果、ビフィズス菌およびラクトバチルスの菌数のそれぞれの単純な比較では、うつ病群は健常者群と比較してビフィズス菌が有意に低下しており、ラクトバチルスの総菌数も低下傾向が認められた。
ビフィズス菌の便1グラム当たりの量は、うつ病患者で約32億個、健康な人では約100億個だった。うつ病群と健常者群とを区別する最適の菌数(カットオフ値)を求めたところ、ビフィズス菌が約34億個以下だと、うつ病の発症リスクは3倍に上昇することが判明した。
ラクトバチルス菌については、うつ病患者が79万個、健康な人が398万個だった。ラクトバチルス菌が約309万個以下であると、うつ病の発症リスクは2.5倍になった。
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2024年04月30日
- タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月23日
- 生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
- 2024年04月22日
- 運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
- 2024年04月22日
- 職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
- 2024年04月22日
- 【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月16日
- 塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
- 2024年04月16日
- 座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
- 2024年04月15日
- 血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要