ニュース

心筋梗塞、脳卒中の発症率を予測 日本人9.5万人の大規模調査で判明

 心筋梗塞や脳卒中の発症率は死亡率から予測できることが、9.5万人の日本人を対象に行った調査で明らかになった。「心筋梗塞や脳卒中の死亡率の高い地域は、より積極的に対策することが重要」と、研究者は述べている。
心筋梗塞や脳卒中の発症率を予測 対策の手掛かりに
 心臓の太い血管が詰まり血液の流れが悪くなり、十分な血液を供給できなくなる心筋梗塞や、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中は、日本人に多い病気だ。心筋梗塞を含む心疾患は、日本人の死亡原因の第2位、脳卒中などの脳血管疾患は第4位と、いずれも上位を占める。

 そんな中、これまで分かっていなかった心筋梗塞や脳卒中の発症率を死亡率から予測することが可能であることが、多目的コホート研究「JPHC研究」で判明した。調査結果は医学誌「International Journal of Cardiology」に発表された。

 「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。今回の研究は、愛媛大学大学院医学系研究科や筑波大学人間総合科学研究科公衆衛生学コースなどの研究チームがまとめたもの。

 研究チームは、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の8保健所管内に在住していた40~59歳の男女9万4,657人を対象に、2009年(コホートI)あるいは、2010年(コホートII)まで平均18.5年間の追跡を行った。

 ひとたび心筋梗塞や脳卒中を発症すると、死に至る危険が高くなる。たとえ一命を取り留めたとしても、重い後遺症が残ったり行動が制限されるなど、生活の質(QOL)が著しく低下し、社会の負担増につながる。脳卒中は、寝たきりになる原因疾患の第1位だ。

 心筋梗塞や脳卒中が社会環境に与える影響を把握したり、対策を考える上で、病気の発症率はとても重要な指標となるが、心筋梗塞や脳卒中の発症を予測するのは難しい。

 一方で、死亡率は厚生労働省から毎年報告されている。病気の発症率との関連が分かれば、効果的な対策を施せるようになる可能性がある。
死亡率の高い地域はより積極的な対策が必要
 研究チームは、全国8ヵ所の保健所の管轄区域内に在住する40~59歳の男女9万4657人を、平均18.5年間追跡した。1985年の日本の人口構成を用いて、年齢構成の影響を調整した。

 心筋梗塞と脳卒中の死亡率および発症率を算出したところ、両疾患の死亡率と発症率には関連があることが明らかになった。

 年齢階級別の死亡率、年齢階級、地域から、年齢階級別の発症率を予測する式を作成したところ、死亡率から発症率を予測することが可能であることが分かった。

 追跡期間中に、967人が心筋梗塞を発症し、637人が心筋梗塞で死亡した。一方、脳卒中の発症数は4,613人、死亡数は1,292人だった。

 発症率と死亡率との関連性について分析したところ、死亡率が高い区域ほど発症率も高い傾向が見られ、特に脳卒中ではその傾向が強かった。

 心筋梗塞の発症率は、男性で死亡率の1.7倍、女性で1.4倍だった。また脳卒中の場合は、男性で3.7倍、女性で4.3倍だった。

 心筋梗塞については、男性では沖縄、岩手で死亡率が高く、女性では沖縄、茨城で死亡率が高かった。脳卒中については、男女ともに岩手で死亡率が高かった。
 心筋梗塞と脳卒中の発症率を比べたところ、脳卒中の発症率は、心筋梗塞に比べて、男性で3.7倍、女性では9.6倍高く、日本の循環器疾患予防は、脳卒中対策が重視されていることが示唆されている。
 「死亡率から心筋梗塞や脳卒中の発症率を見積もることが可能なことが分かった。心筋梗塞や脳卒中の死亡率の高い地域は、より積極的に循環器疾患対策を推進していくことが重要だ」と、研究チームは述べている。

多目的コホート研究(JPHC Study)(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究チーム)

関連する法律・制度を確認
>>保健指導アトラス【健康増進法】
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月18日
人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月18日
健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
2024年04月09日
子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
2024年04月08日
【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
2024年03月18日
メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
2024年03月11日
肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
2024年03月05日
【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
2024年02月26日
近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶