ニュース

便をみれば腸内環境が分かる 最新の腸内デザインで「病気ゼロ社会」に

 腸内環境の乱れがさまざまの病気の発症に関わることが、最新の「メタボロゲノミクス」の技術で明らかになりつつある。便にはその人の健康状態を表す情報が隠されているという。腸内環境を改善するためのプロジェクトが開始された。
人の腸には100兆個の腸内細菌が生息している
 人の体には多くの細菌が住みついていて、さまざまな作用をしている。体を構成する体細胞の数はおよそ37兆個なのに対し、大腸内に生息している腸内細菌の総数は100兆個にもなる。

 「善玉菌」「悪玉菌」という言葉はよく知られているが、腸内環境についてはまだ分かっていないことも多い。次世代シーケンサーの登場などの影響を受け、腸内細菌全体のバランスやそこでつくられる物質に着目した研究が増えている。

 「メタジェン」(山形県鶴岡市)は、慶応義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任准教授らが立ち上げた腸内細菌に関わるベンチャー企業だ。腸内環境から人の健康状態を科学的に評価する便解析システムなどを開発している。

 メタジェンは、慶應義塾大学と東京工業大学とのジョイントベンチャーとして2015年に設立された。腸内細菌の最先端の研究で世界から注目されている。
「腸内エコシステム」が全身のコンディションに影響
 腸管は体の「内なる外」とも呼ばれ、体内でありながら外環境にさらされている器官で、特に大腸は細菌の増殖に適した環境で、糞便1gあたりおよそ1,000億個の細菌が存在しているという。

 腸内細菌は、人間の消化酵素だけでは消化できない成分を分解して栄養素を作ったり、免疫系を活性化したり、有益な働きをしている。

 通常、腸内細菌叢はバランスを保っているが、ストレスや過労などの二次的な作用、あるいは暴飲暴食や抗生物質の摂取などさまざまな要因によって、「腸内フローラ」と呼ばれる腸内細菌の集団全体のバランスが崩れる。

 腸内フローラは複雑な腸内微生物生態系、すなわち「腸内エコシステム」を形成している。腸内エコシステムはヒトの健康維持に重要で、バランスが崩れると大腸がんや炎症性腸疾患といった腸そのものの疾患に加えて、自己免疫疾患や代謝疾患といった全身性疾患にもつながることが知られている。

 「最近の研究で腸内エコシステムが、生体恒常性維持の重要な役割を担っていることが次々と明らかになっています。腸内フローラは、その宿主である人間の腸だけでなく全身のコンディションに影響を与えており、私たちの体内のもうひとつの臓器とも捉えられます」と、メタジェンの代表の福田氏は言う。
便には健康状態を示す情報が眠っている
 福田氏らはこれまでに、腸内フローラの遺伝子地図と代謝動態に着目した「メタボロゲノミクス」を基盤とする統合オミクス解析技術を構築し、腸内フローラから産生される酢酸や酪酸が腸管感染症を予防することや、免疫応答を抑制する制御性T細胞の分化を促し、大腸炎を抑制することを明らかにしてきた。

 メタジェンは、腸内エコシステムが体にどのような影響を与えるのかを、腸内環境の解析、すなわち便の分析から解明しようとしている。これまで、腸内細菌の研究は培養法を用いて細菌を単離・培養して個々の機能を調べるのが主流だったが、次世代シーケンサーの出現や質量分析計の感度の高度化により、便そのものを高い精度で解析できるようになった。

 無菌マウスと呼ばれる、腸内に細菌がいないマウスに、肥満の人の腸内フローラを移植するとマウスは太り、逆にやせている人の腸内フローラを移植するとマウスは太らないことが報告されている。つまり、腸内フローラは宿主である人間の体質や健康をコントロールしているという。

 「便にはその人の健康状態をあらわす情報が眠っている。この情報を抽出し、還元することができれば、人々の健康長寿に貢献できる」と、福田氏は言う。
「腸内デザイン応援プロジェクト」を始動
 メタジェンは、腸内細菌叢の遺伝子情報と腸内代謝物質情報を網羅的に統合解析する独自技術「メタボロゲノミクス」を開発した。

 この技術をもとに、腸内環境改善による健康維持・セルフメディケーションを提案していく「腸内デザイン応援プロジェクト」を立ち上げた。

 腸内細菌叢の遺伝子情報を解析するだけでは、人の体に与える影響を理解するのは難しいので、メタボロゲノミクス技術により、腸内細菌叢由来の代謝物質の情報も含めて統合解析することが、腸内環境評価による新たな健康維持・疾患予防技術の確立につながるという。

 「食習慣の改善、適切なサプリメント開発や創薬など、腸内エコシステムをコントロールするのは可能だ。"腸内デザインによる病気ゼロ社会"の実現を目指したい」と、福田氏は言う。

 同プロジェクトには、江崎グリコ、サン・クロレラ、サントリー、ダイセル、日本ユニシス、はくばく、ビオフェルミン製薬、平田牧場、マルヤナギ小倉屋、森下仁丹、森永乳業、ユーグレナ、ロート製薬、CPCC、UHA味覚糖が、「腸内デザイン応援企業」として参加している。

メタジェン
腸内デザイン応援プロジェクト
慶應義塾大学先端生命科学研究所
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2018年10月18日
【参加募集中】第6回(2018年度 第2回)産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「メンタルヘルス」※定員に達したため、応募を締め切りました
2018年10月17日
日本肥満学会など23学会が「肥満症」の撲滅目指し「神戸宣言2018」
2018年10月17日
高齢者の体力が向上 女性の運動離れは深刻 【体力・運動能力調査】
2018年10月17日
母乳で育てた女性は脳卒中リスクが低下 8万人を12年以上調査
2018年10月17日
全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討
2018年10月17日
魚を食べると大動脈疾患リスクが低下 食べない人では死亡リスクが2倍に
2018年10月15日
パートナー企業とヘルスケア分野でオープンプラットフォーム構築―タニタヘルスリンク
2018年10月10日
「歩幅プラス10cmウォーキング」でロコモ・サルコペニアを防ぐ
2018年10月10日
たった一晩の「不眠」でメタボや糖尿病に 睡眠を改善するための7ヵ条
2018年10月10日
「子宮頸がんワクチン」の効果は高い HPVウイルス感染を90%以上予防

最新ニュース

2018年10月18日
【参加募集中】第6回(2018年度 第2回)産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「メンタルヘルス」※定員に達したため、応募を締め切りました
2018年10月18日
帝京大学産業保健プログラム 受講生募集
2018年10月18日
【健やか21】平成30年度「麻薬・覚醒剤乱用防止運動東京大会」(参加申し込み受付中)
2018年10月17日
日本肥満学会など23学会が「肥満症」の撲滅目指し「神戸宣言2018」
2018年10月17日
高齢者の体力が向上 女性の運動離れは深刻 【体力・運動能力調査】
2018年10月17日
母乳で育てた女性は脳卒中リスクが低下 8万人を12年以上調査
2018年10月17日
全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討
2018年10月17日
魚を食べると大動脈疾患リスクが低下 食べない人では死亡リスクが2倍に
2018年10月15日
パートナー企業とヘルスケア分野でオープンプラットフォーム構築―タニタヘルスリンク
2018年10月15日
厚労省専門委が5歳児虐待死亡事件の検証結果を公表
2018年10月12日
【健やか21】第 77 回日本公衆衛生学会総会 自由集会 ~知ろう・語ろう・取り組もう~
2018年10月10日
「歩幅プラス10cmウォーキング」でロコモ・サルコペニアを防ぐ
2018年10月10日
たった一晩の「不眠」でメタボや糖尿病に 睡眠を改善するための7ヵ条
2018年10月10日
「子宮頸がんワクチン」の効果は高い HPVウイルス感染を90%以上予防
2018年10月05日
乳がん検診に「人工知能(AI)」を導入 マンモグラフィの欠点を克服
2018年10月05日
肺の健康を守るには口の健康から 歯周病が進行すると呼吸機能が急速低下
2018年10月05日
「改正健康増進法成立! 受動喫煙対策を強化」へるすあっぷ21 10月号
2018年10月05日
厚労省が「働く女性の実情」を公表~女性活躍推進法に基づく取組状況を解説
2018年10月05日
「健康なまち・職場づくり宣言2020」2018年の達成状況を報告~日本健康会議
2018年10月04日
【講演会レポート】「10月8日は、糖をはかる日」講演会 「"これからの"血糖コントロール」
2018年10月04日
【回答期限延長(10/30 15:00まで)】「保健師の活動基盤に関する基礎調査」(日本看護協会)
2018年10月04日
【健やか21】若い世代に向けた妊娠・出産に関する普及啓発Webサイト(東京都)
2018年10月03日
【産保PC第5回(2018年度 第1回)レポート】テーマ:保健指導
2018年10月02日
心不全が急激に増えている 「心不全パンデミック」時代の3つの予防法
2018年10月02日
「なぜ運動が良いのか」メカニズムを解明 筋肉ホルモンが心臓を保護
2018年10月02日
魚のオメガ3系脂肪酸が「不安症状」を軽減 魚を食事療法に活用
2018年10月02日
10月は「乳がん啓発月間」 定期的なマンモグラフィ検診は効果的
2018年10月01日
保健指導リソースガイド「よろず相談センター」が誕生
2018年09月28日
働き盛りの睡眠不足が問題に~睡眠障害への早期対応も必要
2018年09月28日
スマートフォンアプリ「ぜんそくリスク予報」をリリース~JMDCと日本気象協会
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,558 人(2018年10月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶