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子どもの肥満予防に必要な条件は? 生活スタイル改善は早いほど良い
2016年12月08日
朝食の欠食や、不規則な睡眠パターンが、子どもの肥満や過体重の増加の要因となっている。子どもの肥満の増加に生活スタイルや環境といった因子が大きく影響しており、生活スタイル改善の介入は早ければ早いほど良いことが明らかになった。
朝食を食べない子、就寝時間が不規則な子は肥満になりやすい
子どもの肥満の増加の原因は高カロリーの食品の食べ過ぎだけではなく、生活スタイルや環境といった因子が大きく影響していることを、英国のユニバーシティ カレッジ ロンドン(UCL)の研究チームが明らかにした。
「英国ミレニアムコホート研究」は、2000年に出生した約1万9,000人の子どもを追跡して調査している大規模研究だ。研究チームは、コホート研究に参加した2000年9月~2002年1月に生まれた1万9,244世帯の子ども健康状態や成長の記録を調査した。
子どもの肥満は発育期・成長期に特有なものである可能性がある。したがって、成人の肥満治療で行われるような食事制限は、成長期の子どもには適用できない。そこで研究チームは、子どもの年齢ごとの肥満度の「変化のパターン」に着目し、心理的、社会的な影響についても調べた。
具体的には、研究グループは、子どもが3、5、7、11歳時の身長と体重からBMI(体格指数)の変化のパターンを解析した。肥満や過体重ではなくBMIに「変化なし」と判定された子どもは83.8%、中等度の増加と判定された子どもは13.1%、過剰な増加と判定された子どもは2.5%だった。
解析した結果、子どもが肥満や過体重になるリスクは、朝食を食べない子は食べている子に比べ、BMIの中等度の増加は1.66倍に、過剰な増加は1.76倍にそれぞれ上昇した。
就寝時間が不規則な子の場合、決まった時間に寝る子に比べ、中等度のBMIの増加は1.22倍に、過剰な増加は1.55倍にそれぞれ上昇した。さらに、母親が妊娠中に喫煙していた場合、していない場合に比べて、中等度のBMIの増加は1.17倍に、過剰な増加は1.97倍にそれぞれ上昇した。
高カロリーの清涼飲料やお菓子、テレビ視聴、スポーツへの参加は、不健康な体重増加の予測因子にならないことも判明した。
生活スタイル改善の介入は早ければ早いほど良い
「高カロリーの食品の食べ過ぎだけが肥満や過体重の原因ではなく、睡眠パターンが不規則であったり、朝食を食べなかったりなど、生活スタイルの乱れが子どもの健やかな成長を妨げていることが示されました」と、UCL公衆衛生学部のイボンヌ ケリー教授は言う。
子どもの睡眠パターンが不規則で、朝食を食べないと、食欲が亢進し、日中に高カロリーの食品を食べたくなり、結果として体重増加につながるおそれがある。
母親が肥満や過体重であると、子どもも太りやすいことが知られている。これは、遺伝因子が影響しているだけでなく、肥満になりやすい生活スタイルが共通しているからだ。子どもの肥満を改善するには、親の生活習慣を改善する介入も必要になる。
子どもの生活指導は、食事内容だけでなく、生活全般の要因に注意を向けて、BMIの増加につながりやすい習慣を改めることが重要だ。「このことは子どもだけでなく、成人にも当てはまることです」と、ケリー教授は言う。
「肥満になりやすい生活スタイルや環境などの因子は、子どものうちに、あるいは母親の妊娠中に始まっている可能性があります。生活スタイル改善の介入は早ければ早いほど良く、若いうちに行動を起こして健康的な生活を身に付ければ、それが生涯にわたって影響をもたらします」と、ケリー教授は言う。
また、朝食を抜いたり、睡眠パターンが不規則な子どもは、肥満や過体重になりやすいだけでなく、情緒が不安定で、幸福感を得にくく、自分の身体に対する満足度や自尊心を得にくい傾向があることも判明した。さらに肥満の子どもは、成長してからアルコールやたばこに手を出す割合が高かった。
「不健康な生活スタイルはBMIの過剰な上昇に大きく影響しており、子どもにとって心理的にも社会的にも不健康な状態を招いてしまうおそれがあります。しかし、これらの因子は、健康的な生活をおくることで改善が可能です」と、ケリー教授は指摘している。
Skipping breakfast and not enough sleep can make children overweight(ユニバーシティ カレッジ ロンドン 2016年11月11日)BMI Development and Early Adolescent Psychosocial Well-Being: UK Millennium Cohort Study(Pediatrics 2016年11月)
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