ニュース

大気汚染で「胎盤早期剥離」リスクが上昇 大気汚染が母子を危険に

 妊娠中に胎盤が子宮からはがれてしまう産科救急疾患である「常位胎盤早期剥離」(早剥)と大気汚染は関連があるという研究を、九州大学が発表した。大気汚染物質、二酸化窒素の濃度が上昇すると、早剥のリスクが高まるという。
大気汚染が妊婦とお腹の子どもの健康に影響
 大気汚染は、肺がんや心筋梗塞などの原因になるだけでなく、最近の研究では、妊婦が大気汚染に曝露されることで、妊婦自身の健康、お腹の子どもの健康に影響する可能性が指摘されている。

 「常位胎盤早期剥離」(早剥)は、通常は子どもが生まれた後に子宮壁からはがれてくるはずの胎盤が、子どもが生まれる前にはがれてきてしまう状態で、発生頻度は全妊婦の0.6%ほどだ。

 母体については、出血が多くなったり、胎盤がはがれることが引き金になり、場合によっては「播種性血管内血液凝固症候群」(DIC)(血液が固まりにくくなる状態)になるおそれがある。

 胎児については、胎盤を通した酸素・栄養供給が絶たれるおそれがある。母子母児ともに命の危険にさらされる産科救急疾患だ。

 いまのところその発生機序ははっきり分かっていないが、もともと形成不全のある胎盤に血流障害や炎症が起こると子宮と胎盤の間に出血が生じて、貯留した血のかたまりによって子宮の壁から胎盤がはがれてくると考えられている。
二酸化窒素濃度が上昇すると早剥が1.4倍に増加
 研究グループは、妊婦の大気汚染物質曝露が早剥と関連するのではないかと考え、疫学的に検討した。

 具体的には、日本産科婦人科学会(周産期委員会)が実施している周産期登録事業により提供を受けた九州沖縄地域内28病院での2005~2010年のデータから、単胎妊婦(4万7,835人)の中で早剥と診断された821人を対象に、出産した病院に一番近い一般環境大気測定局(24局)で測定された大気汚染物質濃度を解析した。

 この研究で評価した大気汚染物質は、二酸化窒素(NO2)、浮遊粒子状物質(SPM)、光化学オキシダント(Ox)と二酸化硫黄(SO2)。

 今回の研究で関連を認めたNO2は、燃焼(自動車、工場、ビル、家庭、自然界など)にともない排出される一酸化窒素(NO)が大気中で酸化されて発生する大気汚染物質だ。

 大気汚染の影響を受けて胎盤に影響がおよぶまで約1日、早剥発生から出産まで1日以内と見積もり、その前後(出産1~5日前)の大気汚染について、その前後(出産1~5日前)の大気汚染について、特に出産2日前の大気汚染に着目して解析した。

 その結果、大気汚染物質の中で二酸化窒素(NO2)が早剥と関連しており、濃度が10ppb上昇すると早剥の発症が1.4倍程度に増加する(95%信頼区間1.1~1.8)ことが明らかになった。

 母子の状態によっては、早産にならないように出産を先延ばしにした可能性がある妊娠35週未満の出産例を除いた解析でも、1.4倍(95%信頼区間1.0~2.0)に増加した。
大気汚染と早剥との関連性を示した世界初の研究
 まれにゆっくり進行する早剥もあるため、急激に進行して緊急対応したと考えられる緊急帝王切開での出産例にしぼった解析でも、10ppb上昇に対して1.4倍(95%信頼区間1.1~1.9)に上昇した。

 母子の状態によっては、早産にならないように出産を先延ばしにした可能性がある妊娠35週未満の出産例を除いた解析でも1.4倍(95%信頼区間1.0~2.0)という結果だった。

 今回の研究で使用した周産期登録データは、個人が特定できないように匿名化されており、妊婦の自宅住所情報(里帰り出産の場合の実家情報を含む)がないため、出産した病院の所在地から早剥を起こした妊婦が曝露されていた大気汚染物質濃度を推定した。

 そのため、実際にその妊婦が曝露されていた大気汚染物質濃度とは差がある可能性がある。

 「今回の報告は世界ではじめてのものであり、今後、早剥の発症予測や予防を目指して、知見の蓄積を進めていく必要がある」と、研究者は述べている。

 この研究は、九州大学環境発達医学研究センターの諸隈誠一特任准教授、同大学大学院医学研究院の加藤聖子教授、国立環境研究所環境リスク・健康研究センターの道川武紘主任研究員らの研究グループによるもの。研究は医学誌「Epidemiology」オンライン版に発表された。

九州大学環境発達医学研究センター
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2019年01月18日
健康について何でも相談できる「かかりつけ医」を検索できるサイトを公開
2019年01月16日
慢性腎臓病(CKD)対策 透析を防ぐために「睡眠」の改善が必要 大阪大
2019年01月16日
産後うつと関連して対児愛着が悪くなる 母親を早期支援し「ボンディング障害」を予防
2019年01月15日
糖尿病腎症の重症化予防 保健師・管理栄養士・薬剤師が連携 先進的な取組みを紹介 厚労省
2019年01月15日
乳がん手術の革新的な診断技術を開発 迅速・簡易な検査で「乳がんの取り残しなし」
2019年01月15日
アルコール依存症の飲酒量を低減する薬が登場 飲酒の1~2時間前に服用
2019年01月10日
【先着順申込み受付中!】 2/6 市民公開講演会 全国生活習慣病予防月間2019
2019年01月09日
「働き方改革と健康経営」へるすあっぷ21 1月号
2019年01月09日
【産保PC第7回(2018年度 第3回)レポート】職場巡視~ありのままの現場を見られる産業保健師になる~
2019年01月08日
高齢者の肥満症のガイドラインを公開 認知症やADL低下の観点を付加 日本老年医学会

最新ニュース

2019年01月18日
健康について何でも相談できる「かかりつけ医」を検索できるサイトを公開
2019年01月18日
【健やか21】2/11(月・祝日)シンポジウム「周産期からの虐待予防」
2019年01月16日
慢性腎臓病(CKD)対策 透析を防ぐために「睡眠」の改善が必要 大阪大
2019年01月16日
産後うつと関連して対児愛着が悪くなる 母親を早期支援し「ボンディング障害」を予防
2019年01月15日
糖尿病腎症の重症化予防 保健師・管理栄養士・薬剤師が連携 先進的な取組みを紹介 厚労省
2019年01月15日
乳がん手術の革新的な診断技術を開発 迅速・簡易な検査で「乳がんの取り残しなし」
2019年01月15日
アルコール依存症の飲酒量を低減する薬が登場 飲酒の1~2時間前に服用
2019年01月10日
【先着順申込み受付中!】 2/6 市民公開講演会 全国生活習慣病予防月間2019
2019年01月10日
【健やか21】ピアサポーター養成講座受講生の募集について(難病のこども支援全国ネットワーク)
2019年01月09日
「働き方改革と健康経営」へるすあっぷ21 1月号
2019年01月09日
【産保PC第7回(2018年度 第3回)レポート】職場巡視~ありのままの現場を見られる産業保健師になる~
2019年01月08日
高齢者の肥満症のガイドラインを公開 認知症やADL低下の観点を付加 日本老年医学会
2019年01月08日
大人のがん教育を始めよう がん患者の就労問題に取り組む企業を支援 がん対策推進企業アクション
2019年01月08日
がん終末期患者の3割が「苦痛あり」 介護など家族の負担も大きい 国立がん研究センター調査
2019年01月08日
「冷え性」を克服するための6つの改善策 足の冷えに動脈硬化が隠れていることも
2019年01月07日
保健指導リソースガイド 2018年に読まれた記事ランキング・ベスト20
2019年01月04日
妊娠~子育て期にだれもが切れ目ない支援を受けられるように―成育基本法が成立
2019年01月04日
厚労省が医療的ケア児と家族を支えるサービスの事例紹介の報告書を作成
2019年01月03日
IT導入で「障がい者雇用の可能性を広げる」期待高まる―野村総研調査
2018年12月26日
連休の夜更かし朝寝坊が体調不良の原因? 朝型生活でメタボや糖尿病のリスクを低下
2018年12月26日
認知症の発症を予想する新たなマーカーを発見 久山町研究の成果 九州大学
2018年12月26日
がん患者のための情報サイトを公開 就労や生活上の課題などの情報が中心
2018年12月26日
学生時代の運動歴が将来の健康を左右? 大学時代のスポーツ経験が影響
2018年12月26日
慢性腎臓病(CKD)患者はBMIが高値だと生命予後が良好 2万6,000人を調査
2018年12月21日
【健やか21】「アドバンス助産師1万2,000人に」日本助産評価機構が新たに992人認証
2018年12月20日
経団連の「働き方改革事例集」掲載企業の取り組み② ~仕事と育児・介護の両立支援 編~
2018年12月20日
経団連の「働き方改革事例集」掲載企業の取り組み① ~健康経営・健康増進活動の展開 編~
2018年12月19日
肥満や病気の予防を「まちづくり」から推進 健康になるための「都市デザイン」とは 千葉大と竹中工務店
2018年12月19日
「糖尿病リスク予測ツール」を公開 3年後の糖尿病発症リスクを予測 国立国際医療研究センター
2018年12月19日
果物は肥満・メタボに良いのか悪いのか? 果物の健康効果を科学的に検証
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,762 人(2018年12月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶