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東日本大震災で被災した6万人超の健康調査 メタボ、抑うつ傾向を確認
2017年02月09日

東日本大震災で被災した宮城県と岩手県の住民の多くでメタボの割合が高く、抑うつ傾向もみられることが、東北大学と岩手医科大学が6万3,002人を対象にした大規模調査で明らかになった。
震災被災地の健康状態 地域住民コホート調査より
日本医療研究開発機構らは、2013年~2015年度に「東北メディカル・メガバンク計画」の地域住民コホート調査に参加した6万3,002人のデータを分析し、その調査結果を公表した。
地震や津波により家族・親族や住宅を失った被災者の多くに抑うつ症状がみられることはこれまでも指摘されていたが、今回の大規模調査でその傾向が確認された。
大震災6年目を迎えるこれからも「保健指導」や「メンタルケア」を継続することが重要であることが浮き彫りになった。
調査は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が実施機関となっている「東北メディカル・メガバンク計画」の一環として行われた。
同計画では、東日本大震災被災地の医療の復興と健康増進に役立てるために、2013年より合計15万人規模の地域住民コホート調査および三世代コホート調査を実施。今回は特定健康診査に参加した6万3,002人のデータを分析した。
自宅が全壊した被災者でメタボが1.29倍に上昇
今回は、そのうちの2013~2015年度に宮城県内および岩手県内の特定健康診査会場などで参加した宮城県3万7,175人、岩手県2万5,827人の計6万3,002人について、調査結果を分析。男女比は男性約37%、女性約63%。男女合わせた平均年齢は60.8歳だった。
その結果、メタボリックシンドロームの割合について、被災者の方が被災していない人より高い傾向が出た。
男性では自宅被害なしの者に比べ、自宅が全壊した者は1.29(1.16-1.44)、大規模半壊した者は1.26(1.06-1.48)とリスクが高く、自宅の被害の程度は、喫煙・飲酒・身体活動量・心理的苦痛・抑うつ症状を考慮してもなお、統計学的に有意なリスク上昇と関連していた。
PTSR(心的外傷後ストレス反応)は沿岸部で1.57倍に上昇
また、抑うつ症状を示す人は沿岸部、内陸部合わせて26.4%で、その割合は沿岸部の方が高かった。
内陸部に対して沿岸部では、心理的苦痛、抑うつ症状、不眠およびPTSR(心的外傷後ストレス反応)のオッズ比が高く、内陸部居住者に対する沿岸部居住者のオッズ比は、心理的苦痛で1.08(0.99-1.17)、抑うつ症状で1.14(1.09-1.19)、不眠で1.15(1.09-1.20)、PTSRで1.57(1.38-1.77)だった。
沿岸部の被災者にメタボ割合が高いのは、狭い仮設住宅などに長期間居住しているために日常の運動量が減っていることなどが原因とみられている。
このほか、高血圧の治療中断率が内陸部と比べ沿岸部で高く、高血圧治療中断者の収縮期血圧は、通院中の者に比べて高いことなども判明した。
心理士がカウンセリングや相談に応じる
「東北メディカル・メガバンク計画」では、PTSRのため日常に支障があると回答した参加者を対象に、専属の心理士が電話でその後の経過を尋ね、必要に応じて、カウンセリングや相談に応じ、医療機関への受診勧奨や情報提供を行うなどの支援活動を行っている。
2016年12月末までに、コホート調査の参加者のうち、1,922人のハイリスク者に対して、3,880回の電話をかけ、1,380人の対象者に支援を行った。
同計画では今後、地域支援センターやサテライトで調査に参加した人々についても集計を進め、傾向の分析を進めていく。また、ゲノム解析やオミックス解析なども進め、一部の情報はデータベースとして公開し、広く多くの研究者の利用に供するという。
東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)地域住民コホート調査 | 三世代コホート調査
岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)
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