ニュース
治療と仕事の両立支援ガイドライン 脳卒中と肝疾患の留意事項を追加
2017年03月06日
厚生労働省はこのほど、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の参考資料に、「脳卒中に関する留意事項」と「肝疾患に関する留意事項」を追加した。2016年2月の同ガイドライン策定時には「がんに関する留意事項」が作成されており、同様に今回は脳卒中と肝疾患についての基礎情報や、特に留意すべき事項を分かりやすくまとめている。
分かりづらい症状に配慮が必要な脳卒中
同ガイドラインは、事業場が疾病を抱える労働者に適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするための取り組みなどをまとめたもの。
まず脳卒中については、再発予防や治療のための配慮、また復帰後の職場適応とメンタルヘルスなどに留意するよう求めている。
厚生労働省の「平成26年患者調査」によると、脳卒中など脳血管疾患の治療や経過観察で通院している患者数は118万人と推計され、うち約14%にあたる17万人が20~64歳の就労世代。就労世代など若い患者は約7割がほぼ介助を必要としない状態まで回復するので、適切な治療によって職場復帰(復職)できる可能性は高い。脳卒中の重症度や職場の配慮などによって状況は異なるが、脳卒中発症後の最終的な復職率は50~60%という報告もある。
一方で病状が安定していても、再発予防のために服薬や通院を必要とするため、事業者は労働者の服薬に伴う副作用の内容や、通院について配慮することが望まれる。また徐々に痛みやしびれ、記憶力・注意力の低下などが後遺症として出てくる可能性もあり、労働者は主治医から出やすい症状や注意すべきことについて確認し、必要な情報を事業者へ伝達することを勧めている。
そのほか、事業者には産業医や保健師、看護師など産業保健スタッフと連携し、障害の程度や内容に応じて作業転換などの措置を行うことを求めている。また、記憶力や集中力の低下など一見して分かりづらい症状に対しては「周囲の理解や協力が得られにくい場合もある」として、労働者本人の同意のもと、必要な情報に限定して上司や同僚などへ情報開示するのが望ましいと助言。手足の麻痺や言語障害、痛みやしびれなどの後遺症がある労働者は、職場復帰後にメンタルヘルス不調に陥る場合もある、と注意を促している。
肝疾患について周囲の正しい理解を啓発
肝疾患は病気があまり進行していない段階でも通院による治療と経過観察を必要とすることや、服薬治療では薬を飲むタイミングが一定ではないこと、注射によるインターフェロン治療を受けた場合は一時的に副作用が現れることもあること、などの特徴をまとめ、事業者は労働者と相談のうえ配慮することが望ましいと明記。肝硬変の症状がある場合や、肝がんに移行した場合などについても、それぞれ配慮すべき事項を説明している。
一方で、通常の日常生活や就業でB型やC型肝炎ウイルスに感染することは、ほとんどないが、周囲が誤った認識を持っていると労働者が「就業の継続のための理解や協力が得られない場合もある」として、事業者には疾患についての正しい知識の啓発などが重要だと記している。
厚生労働省は今後も、ガイドラインの普及や企業に対する各種支援によって、疾病を抱える人々が治療と職業生活を両立できる環境整備に取り組んでいく方針。
報道発表「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の参考資料に、脳卒中と肝疾患に関する留意事項を追加(厚労省)
関連する法律・制度を確認
>>保健指導アトラス【産業保健】
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2018 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「産業保健」に関するニュース
- 2018年04月18日
- 糖尿病の原因は「酸化ストレス」 肝臓の脂肪蓄積を防ぐ治療
- 2018年04月18日
- 「サルコペニア」を容易に評価 CKD患者の心疾患リスクを予測
- 2018年04月18日
- 糖尿病リスクは「雨」? 久山町研究の成果で「ひさやま元気予報」
- 2018年04月18日
- 乳がんと大腸がんを尿検査で早期発見 簡便ながん検査を実用化
- 2018年04月17日
- 建設業で働く女性の妊娠や出産をサポート~『女性にやさしい職場づくりナビ』
- 2018年04月13日
- 厚労省がGWの海外渡航に感染症予防注意を呼びかけ
- 2018年04月11日
- 「2時間の飲み会」の危険 アルコールのイッキ飲み・アルハラを防止
- 2018年04月11日
- ご存知ですか?「紫外線」 紫外線に打ち勝つ4つの方法
- 2018年04月11日
- 糖尿病の発症前に「慢性腎臓病」(CKD)は悪化 検査で早期発見を
- 2018年04月11日
- 「甘酒」を飲んでコレステロールを低減、便通を改善 プロラミンが作用
最新ニュース
- 2018年04月19日
- 【健やか21】パンフレット「住まいの中のアレルゲン対策」ご活用下さい
- 2018年04月19日
- 【新連載】女性のライフステージと、体と心の健康運動
- 2018年04月18日
- 糖尿病の原因は「酸化ストレス」 肝臓の脂肪蓄積を防ぐ治療
- 2018年04月18日
- 「サルコペニア」を容易に評価 CKD患者の心疾患リスクを予測
- 2018年04月18日
- 糖尿病リスクは「雨」? 久山町研究の成果で「ひさやま元気予報」
- 2018年04月18日
- 乳がんと大腸がんを尿検査で早期発見 簡便ながん検査を実用化
- 2018年04月17日
- 建設業で働く女性の妊娠や出産をサポート~『女性にやさしい職場づくりナビ』
- 2018年04月16日
- くるみを食べると腸内フローラが改善 くるみが善玉菌を増やす
- 2018年04月13日
- 厚労省がGWの海外渡航に感染症予防注意を呼びかけ
- 2018年04月12日
- 【健やか21】「母子保健指導部」の会員募集と30年度研修会一覧の掲載
- 2018年04月11日
- 子宮頸がんとHPVワクチン 日本産科婦人科学会が「接種は必要」と強調
- 2018年04月11日
- 「2時間の飲み会」の危険 アルコールのイッキ飲み・アルハラを防止
- 2018年04月11日
- ご存知ですか?「紫外線」 紫外線に打ち勝つ4つの方法
- 2018年04月11日
- 糖尿病の発症前に「慢性腎臓病」(CKD)は悪化 検査で早期発見を
- 2018年04月11日
- 「甘酒」を飲んでコレステロールを低減、便通を改善 プロラミンが作用
- 2018年04月09日
- 【連載紹介】何をどう食べるか―体験から得た震災時の食の"知恵袋"
- 2018年04月06日
- 【健やか21】「ふくおか子育てマイスター活動事例集」のご紹介
- 2018年04月06日
- 東京都が福祉保健基礎調査「東京の子どもと家庭」(速報版)を公表
- 2018年04月05日
- 糖尿病患者の痛風リスクがフェノフィブラートで半減 FIELD試験
- 2018年04月05日
- 栄養を効率よく摂取するには? くるみ病態別レシピ申し込み受付中
- 2018年04月04日
- 女性の「痩せ」志向は不健康 スポーツを通じて女性の活躍を促進
- 2018年04月04日
- 働きながら「不妊治療」を受ける人へのサポート 仕事の両立支援が課題に
- 2018年04月04日
- 魚の「オメガ3脂肪酸」が死亡リスクを低下 「食後高脂血症」に注意
- 2018年04月04日
- 体重増加の犯人は果物や野菜のジュースかも 毎日飲み続けるとどうなる?
- 2018年04月03日
- 【連載更新】ナースがおうちで産後ケア/私は踊る保健師!ワクワクを届ける
- 2018年04月02日
- 【健やか21】公開フォーラム 「多職種による母子保健の推進~歯科からの提案~」
- 2018年04月02日
- 驚きのコラボが実現!『健やか親子21と鷹の爪団のみんなで子育て大作戦』
- 2018年04月01日
- 「健康行動の壁 行動を後押しするヒント」へるすあっぷ21 4月号
- 2018年03月30日
- 【ちらし配布ご協力お願い】女性特有のがんコミュニティ型SNS「Peer Ring」
- 2018年03月28日
- 収入や教育年数が「健康格差」に影響 年収低いほど肥満リスクは上昇
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は2,800以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ