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東日本大震災 「差別・中傷」で福島原発の所員に強いストレス反応
2017年03月08日
福島第一、第二原子力発電所で事故後も働く所員の「心的外傷後ストレス反応」(PTSR)が根強く残っているとする分析結果を、順天堂大学などのチームがまとめた。津波や知人を亡くした被災体験よりも、差別・中傷などの社会批判によるPTSRの方が強いという。
メンタルヘルスの不調 3年経過しても非常に強い
順天堂大学の研究グループは、福島原子力発電所員のメンタルヘルスについて追跡調査を実施し、災害関連体験と心的外傷後ストレス反応(PTSR)との間に関連があることを明らかにした。
原発事故の災害関連体験によるメンタルヘルスの不調は時間とともに回復するが、「差別・中傷などの社会批判によるPTSR」は、3年経過してもなお、非常に強く残るという。
東京電力福島第一・第二原子力発電所員のメンタルヘルス支援を目的としたプロジェクト研究「NEWS」によると、2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故における災害関連体験を経験している所員は、経験していない所員に比べて、PTSRや精神的苦悩(GPD)といったメンタルヘルスの不調があることが明らかになった。
研究グループは、2011年?2014年までの3年間の縦断研究を実施し、原子力発電所員のメンタルヘルスを長期的に調査し、福島原子力発電所事故後の災害体験との因果関係について検討した。
災害2~3か月後に実施した自己記入式アンケート調査をもとに、(1)自分の命に危険が迫る体験や発電所の爆発などの「惨事ストレス」、(2)同僚を失った「悲嘆体験」、(3)財産喪失、自宅からの避難といった「被災者体験」、(4)「差別・中傷」などの社会批判を受けたなど、災害関連体験を経験した所員と経験しなかった所員に分け、「出来事インパクト尺度」を用いて、PTSRの有無を評価した。
その結果、「惨事ストレス」、「被災者体験」、「差別・中傷」といった災害関連体験を経験した所員のPTSRのリスクは、いずれも時間とともに徐々に低下する傾向があったが、経験していない所員に比べると、3年経過してもなお、PTSRのリスクが持続することが確かめられた。
心理面のサポートを考えるべき
特に、「差別・中傷」といった社会批判を受けた所員は、受けていない所員に比べて、2011年時点では約6倍、2014年時点でも未だ約3倍のPTSRリスクが有意に高いことが明らかになった。
また、同僚を失った「悲嘆体験」経験がある所員は、経験のない所員に比べて、2011年時点で約2倍、2014年時点においても回復することなく同等のリスクがあることが分かった。つまり、「悲嘆体験」といった悲しみの感情はずっと引きずることが示されている。
災害後4?12ヵ月の間、メンタルヘルスの不調を訴える所員に対して、精神科医や臨床心理士が、継続的に治療や心理カウンセリングを提供し、精神的支援を行ってきたが、今回の調査で支援が不足していることが明らかになったという。
研究をまとめた順天堂大学の谷川武教授(公衆衛生学)は、「惨事ストレス、悲嘆体験、被災者体験、差別・中傷といった災害関連体験は、長期間持続して、PTSRに強い影響を及ぼす。広範囲にわたる長期的な支援が必要だ」と話している。
研究は、順天堂大学大学院医学研究科・公衆衛生学講座の野田愛准教授、谷川武教授らの研究グループによるもので、英国の医学雑誌「Psychological Medicine」に発表された。
順天堂大学大学院医学研究科・公衆衛生学講座
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