ニュース
1日20分の運動でも効果がある 「クロスフィット」が糖尿病の改善に有用
2017年06月28日
「機能的高強度トレーニング」(F-HIT)と呼ばれる、短時間の機能的運動や筋力トレーニングが、2型糖尿病の成人のβ細胞の機能を改善させる可能性があることが新しい研究で明らかになった。この研究は、米国生理学学会(APS)が発行する医学誌「American Journal of Physiology」オンライン版に発表された。
「クロスフィット」がインスリン産生を改善
膵臓のβ細胞はインスリンを産生し分泌し、体内でグルコース(ブドウ糖)がエネルギーとして利用できるようにする。今回の研究は、生活動作をベースにした機能的高強度トレーニング(F-HIT)や、スクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操などの筋肉に負荷をかけて行うレジスタンス運動が、血糖を下げるインスリンを産生するβ細胞の機能にもたらす影響を調べたはじめてのものだ。
これまでの研究で、有酸素運動(心拍数を上昇させる身体活動)がβ細胞の機能とインスリン分泌の改善につながることが分かっていた。今回の研究は、「機能的高強度トレーニング」(F-HIT)と呼ばれる、短時間の機能的運動や筋力トレーニングが、糖尿病の改善に有用であるかを検証したものだ。
F-HIT運動の代表的なものに、米国を中心に世界的に広まっている「クロスフィット」がある。
「クロスフィット」とは、米国で考案されたトレーニング法で、日常の基礎的な運動をベースに、筋力、スタミナ、持久力、瞬発力などをバランスよく向上させることを目的としている。歩く・走る・起きる・持ち上げる・拾う・押す・引くといった生活動作をベースに、ゲーム感覚で行える、筋力トレーニングと有酸素運動を組み合わせたプログラムが考えられている。
少人数制のクラスで、1回の運動時間は約20分、性別や年齢、体力などに合わせて運動量を調整したトレーニングをするスポーツジムなどが、米国を中心に増えている。
運動時間が短くともやり方次第で効果を得られる
「2型糖尿病のある人が、なかなか運動に取り組まない理由として"運動をする時間をなかなかとれない"ことを挙げることがしばしばあります。クロスフィットのような運動プログラムはそうした障壁を取り除き、最小限の負担で、運動を日常生活の中に組み込み、指導も行いやすいことが示されています」と、ケース ウェスタン リザーブ大学のステファン ニーウーアウト氏は言う。
研究では平均年齢53歳の2型糖尿病患者12人が、医師によるメディカルチェックを受けた上で、クロスフィットの認定トレーナーによって作成された6週間のF-HITプログラムに参加した。参加者は週3回の研修で運動の指導を受け、運動内容は毎週変えられ、参加者のそれぞれの最大目標心拍数の85%を超える高強度の運動が1回だけ含まれていた。
研究チームは参加者に、6週間の運動の前後に体脂肪や体重の測定を行い、経口糖負荷試験(OGTT)や血中インスリン値、インスリン分泌能を知るためのCペプチド値などの検査を行った。OGTTはβ細胞の機能を知るための指標として用いられている。
さらに、プログラムの2日目と最後の日に、参加者の腹筋、スクワット、ローイングの繰り返し回数を記録し、体力とフィットネスの能力がどれだけ向上したかを調べた。
その結果、短期のクロスフィットによって、β細胞のインスリン分泌能が向上し、AST(GOT)、ALT(GPT)などの肝機能検査の数値も改善した。運動によって体重が減り、体脂肪率も改善した。これらはインスリン感受性を良くし、血糖コントロールを改善するが、運動によりインスリン分泌そのものが増えていることが示された。
「2型糖尿病患者のβ細胞の機能は、1日10~20分の高強度・短時間の運動を週に3回、6週間続けることで改善できる可能性があります」と、ニーウーアウト氏は述べている。
Short, high-intensity exercise sessions improve insulin production in type 2 diabetes(米国生理学学会 2017年5月31日)Functional High Intensity Training Improves Pancreatic β-cell Function in Adults with Type 2 Diabetes(American Journal of Physiology 2017年5月16日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月18日
- 人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月18日
- 健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月09日
- 子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
- 2024年04月08日
- 【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
- 2024年03月18日
- メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
- 2024年03月11日
- 肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
- 2024年03月05日
- 【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
- 2024年02月26日
- 近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も