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歯を20本以上を残すための4つの対策 セルフケアが決め手に

 高齢者になって歯を失わないでいるために、成年や壮年期から対策を始めることが必要だ。40歳を過ぎてから歯を失わないために4つの対策が役立つ。
 日本人の平均寿命は延びているが、歯の寿命はそれに追いついていない。成人の歯は親知らずも入れて全部で32本だが、40歳代を境に急速に減り、多くの人が60歳代で20本近くまで減ってしまうのが現状だ。

 歯を失う原因として大きいのは「虫歯」と「歯周病」だ。米国歯科学会(ADA)によると、高齢者になって歯を失わないでいるために、成年や壮年期から対策を始めることが必要だ。
大人の虫歯が気が付かないうちに進行しやすい
 虫歯菌は糖質を栄養にして、ねばねばした物質を作る。それが食べかすとともに歯垢(プラーク)となり、その中で虫歯菌がさらに増えて酸を作り、歯のエナメル質を溶かして虫歯になる。

 特に大人が虫歯になりやすい箇所は、「歯と歯の間」「歯の根元」、以前治療をした「詰め物と歯の隙間」だ。歯と歯の間と歯の根元は手入れが行き届きにくいため、プラークがつきやすい。

 特に、「歯の根元」は、加齢によって歯ぐきが下がり、歯ぐきに守られていた箇所が露出してしまうと、その部分が虫歯になりやすくなるので注意が必要だ。
歯周病が40歳以降に歯を失う原因に
 一方、歯周病は、歯と歯ぐきの境目にプラークや歯石がたまり、その中にいる歯周病菌が歯ぐきに炎症を起こすことで発症する。

 歯ぐきの出血や腫れが続くと、やがて歯ぐきや歯ぐきの中にある骨(歯槽骨)などが破壊され、歯が抜け落ちてしまうこともある。

 最近は若い人の歯周病が増え、40歳以上で80%に達しているという。歯周病は年齢とともに悪化して、40歳以降に急速に歯が失われていく原因となる。

 糖尿病の人は特に注意が必要だ。糖尿病の人とそうでない人とはほぼ同じ割合で歯周病にかかるが、糖尿病の人のほうが歯周病が悪化しやすい傾向がみられる。糖尿病と歯の管理を両立することが大切となる。
口の中の健康を保つためのチェックリスト
 成年や壮年期には、仕事や家庭の忙しさにかまけて、つい歯や歯ぐきの小な異常を見逃しやすくなる。

以下のあてはまる症状があったら、
すぐにかかりつけ歯科医に相談しよう。

□ 歯垢(プラーク)・歯石が付いている
□ 歯肉が腫れる
□ 口の中が粘る
□ 息がくさい
□ 噛むと痛い
□ 歯肉が腫れる
□ 歯肉から出血する
□ 歯と歯の間にすき間ができている
□ 歯がぐらぐらする
 40歳以上になって歯を失わないでいるために、成年や壮年期から対策を始めることが必要だ。歯が抜ける原因の多くは歯周病で、歯周病には軽度な歯肉炎と進行した歯周炎がある。

● 週に1回以上は鏡で自分の歯ぐきの状態を観察しよう。
● 定期的に歯石をとるなど、歯のクリーニングを受けよう。
● 歯や口の状態にあった歯みがき方法を身につけよう。
● 口臭予防のためにお口のケアをしよう。
歯磨きが基本 毎日のセルフケアが重要
 歯周病が疑われて歯科を受診した場合、まず、歯や歯ぐきの状態を調べる「歯周組織検査」が行われる。この検査で歯周病と診断された場合に、「歯磨きの指導」と「歯石の除去」が行われる。その後、「再評価」を行い、改善がみられない場合は「歯周外科手術」が行われる。

 歯周病と診断された場合、まず必要なのは歯磨きの指導だ。歯周病の原因はプラークなので、自分で行う毎日のケアが重要となる。

 歯に対してブラシを90度に当てて磨く「スクラッビング法」や歯と歯ぐきの間にブラシを45度に当てて磨く「バス法」などの磨き方は効果的にプラークを落とすことができる。

 内科的な健診と同様に、歯科健診も半年に1回は受けるよう心がけよう。最寄りの歯科医院、あるいは健診によっては市町村の保健センターや指定歯科医療機関などでも受けられる。

 歯石は、プラークがミネラルなどを吸着して石のように硬くなったもので、そこが細菌のすみかとなって毒素をため込み、この毒素が歯周病の炎症を進めてしまう。

 歯石は歯科でスケーラ-という器具を使用して除去する。主に手用スケーラーで削り取る方法と超音波スケーラ-で粉砕する方法の2種類がある。

 また、歯石の除去とセットで、歯周ポケット内部の歯石や歯根表面の汚染されたセメント質を除去し、歯の根をなめらかにする処置である「ルートプレーニング」などが行われることが多い。

自分の歯が多いと、寿命・健康寿命が長く、要介護でいる期間が短い
 東北大学大学院歯学研究科の研究で、特に高齢期に保持できている歯の本数が多い人は、健康で長生きである傾向があることが明らかになった。

 これまでの研究で、歯が多いと死亡率が低いことや要介護になりにくいことは分かっていたが、要介護でいる期間との関連が明らかでなかった。そこで研究グループは、要介護になる前の歯の本数と、寿命・健康寿命・要介護でいる期間の関連を調査した。

 研究では、日本老年学的評価研究(JAGES)が2010年に行った全国24自治体の要介護認定を受けていない65歳以上高齢者を対象とした。7万7,397人の男女を3年間追跡して調査した。

 歯の本数を0本、1~9本、10~19本、20本以上の4つに区分し、回答してもらった。その後、自治体のデータベースから死亡日および要介護度2以上の認定日を取得し分析。

 その結果、歯が多いと、単に寿命が長いだけではなく、健康寿命も長く、さらに要介護でいる期間が短いということが明らかになった。

 その差は85歳以上でもっとも大きく、歯が20本以上ある人は、0本の人にくらべて健康寿命が男性でプラス92日、女性でプラス70日、寿命が男性でプラス57日、女性でプラス15日、要介護でいる期間は、男性でマイナス35日、女性でマイナス55日の差があったという。

 研究により、歯の健康を保つことが、健康寿命の延伸と要介護でいる期間の短縮に寄与する可能性が示された。

 厚生労働省が提唱する「健康日本21」(第二次)では、健康寿命の延伸と、寿命と健康寿命の差を小さくすることが目標として掲げられている。歯を健康に保つことは、健康寿命を延ばすことにつながる。

MouthHealthy - Oral Health(米国歯科学会)
東北大学大学院歯学研究科・歯学部
[Terahata]
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