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「人工知能」(AI)を保健分野に活用 6分野で開発、安全対策も 厚労省

 厚生労働省の懇談会は、人工知能(AI)を利用した病気の診断や医薬品開発の支援、患者の遺伝情報に応じたゲノム医療など6分野で2020年度にも実現することを盛り込んだ報告書を発表した。
 厚生労働省が設置した「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」は4回の討議内容をまとめ報告書を公表した。人工知能(AI)の開発で今後優先的に取り組むべき重要6領域を選定し、それぞれの工程表も公開した。

 懇談会では日本におけるAI開発のこれまでを振り返り、保健医療分野で患者・国民の得るメリットは大きいとあらためて意義を確認した。
人工知能(AI)は新たな局面に
 「人工知能」(AI)とは、おおまかにいえば「人間の知的な機能を機械に代替させたり、再現させようとする試み」だ。その実現のために使われているのが、「ディープラーニング」と呼ばれる技術だ。

 ディープラーニングとは、機械が膨大な量のデータを読み込んで学習し、迅速に現状を判断したり、将来を予測したりする解析技術のこと。得意としているのは、膨大なデータの中から何らかの共通する特徴を見つけたり、シミュレーションを行うことで最適な解決法を見つけ出したり、必要なものを素早く検索することだ。

 AIはディープラーニングの登場により新たな局面を迎えた。懇談会はAIの特性をふまえ、開発推進のために必要な対応およびAIを用いた保健医療分野のサービスの質・安全性確保のために必要な対応などを検討した。

 現在の技術で強みを発揮でき、課題解決のために取り組むべき6分野として――▽ゲノム医療、▽画像診断支援、▽診療・治療支援、▽医薬品開発、▽介護・認知症、▽手術支援、を選定した。
AI開発が保健医療サービスの質を高める
 現在、医療等の現場においては、世界中から報告される膨大な科学的知見を評価・分析するとともに、患者等に係る大量の生体情報を把握して、患者に最適な医療や安全な医療を提供することが求められており、医療従事者などの負担は増大している。

 将来にわたって、国民に質の高い保健医療サービスを提供していくためには、科学技術の進歩を適切に活用することが求められている。

 AIに多くの患者のデータや関連する医学研究などを学ばせることで、患者にとって最適な診断や治療をすばやく推定できるようになると期待されている。

 AI開発に求められているのは、①日本の医療技術の強みの発揮、②保健医療分野の課題の解決(医療情報の増大、医師の偏在など)だ。

 懇談会によると、AIによって、(1)新たな診断方法や治療方法の創出、(2)全国どこでも最先端の医療を受けられる環境の整備、(3)患者の治療等に専念できるよう、医療・介護従事者の負担軽減――を実現できるという。

 AIの開発を促進する基盤整備とAIの質や安全性を確保するためのルール整備も必要だ。報告書では、AIの判定には誤りがあり得ることをふまえ、最終的な診断や治療方針の決定と責任は医師が担うべきだと明記している。
保健医療関係者にもAIの知識・技術が必要
 コンピューター技術の急速な進歩により、医師などの業務をAIに支援させようという研究は世界中で進んでいる。自ら学習し、成長し続ける能力をもったAIは、多忙を極める専門職を助ける存在として歓迎されるだろう。

 しかし、AIが医師や保健師などに取って代わるというわけではないという。

 保健医療関係者が行っている種々の業務をAIへ単純に置き換えると捉えるべきではなく、むしろAIは知能を増幅させるものとして、保健医療関係者による適切な判断や措置を支援して「保健医療の質の向上を増幅させるもの」と捉える方が適切だという

 ただし、将来の保健医療関係者には、AIをうまく使いこなしていく知識・技術が求められる。

 また、AI開発には学習のもとになる各種データベースの整備が不可欠だ。報告書では、AI予測が間違えば誤診を誘発しかねないためデータの質と量を確保し、開発に医師が関わる必要があるとした。
AIを活用し開発を進めるべき6分野
 今後、AIを活用し開発を進めるべき6分野について、懇談会は次のように解説している。

(1)ゲノム医療

 科学技術の発展によって、ゲノム解析のコストが以前に比べて大幅に低下していることから、ゲノム解析の結果にもとづき、個々人に合わせた診療を提供するゲノム医療の実現への期待は高まっている。

 AIを活用すれば、ゲノム解析で検出される多数の変異などを短時間でみつけることが可能となるほか、解析結果の臨床的意義の判定も容易になる。

 また、AIを用いてデータを包括的に解析することで、従来の方法では発見できなかった疾患の原因遺伝子を短時間で発見することが可能となる。

 今後、通常の医療として実施されるゲノム解析の結果情報についても、AIを活用し、既存のデータベースを集約していくことが求められている。

(2)画像診断支援

 診断系医療機器は、ディープラーニングとの親和性が高く、ディープラーニング の活用によって新たな付加価値(疾患名候補や異常所見候補を提示する機能等)を獲得することが可能だ。

 例えば、専門医が十分に存在しないへき地で、ディープラーニングを応用した診断用医療機器による疾患名候補や異常所見候補の提示などは、専門医でない医師にとって大いに役立つと考えられる。

 ディープラーニングを画像診断支援(ダブルチェック)に活用することによって、画像診断時の見落とし率の低下等が期待される。

 ディープラーニングの画像診断への応用は急速に進むことが予想され、2020年度には、検診で大量に発生するマンモグラフィや胸部X線の画像などでディープラーニングの応用が実用化されていると考えられる。

(3)診断・治療支援

 医師が極端に不足している地域においては、少ない医師が、多様な疾患の患者に 対し、自らの専門でない医療を提供する必要がある。

 診断・治療支援を行うAIは、さまざまな場面において活用することができ、質の高い医療の全国均てん化に資すると考えられる。

 診療は、問診、診察、検査、治療方針の決定のプロセスで成り立っているが、基本的には個々の医師の知識・経験(暗黙知)に依存するところが大きい。

 AIの応用によって、熟練の経験・技術(暗黙知)を補うことが可能となり、医療の質の向上に貢献することが期待できる。

(4)医薬品開発

 医薬品が実用化に至るまでには、長い年月とコストが必要であり、成功率も低く、画期的な医薬品を創出することは容易ではない。

 医薬品開発における課題に対してもAIの活用が有効で、開発期間の短縮と開発経費の削減が期待される。

(5)介護・認知症

 介護分野では、これまで高齢者の生活の質の維持・向上と介護者の負担軽減の観点から、介護ロボットの開発やその介護現場への普及が進められている。

 介護ロボット技術などにAI技術を新たに付加することによって、排せつなどの生活事象や生活リズムの予測が可能になり、高齢者の生活の質の向上や介護者の負担軽減につながる可能性がある。

(6)手術支援

 外科医は、手術中に迅速な意思決定を求められることが多いことなどから、 精神的・身体的負担が非常に大きい。

 一方で、40歳未満の若手外科医の数は減り続けている。外科医の負担軽減は喫緊の課題であり、その解決のためのAIの活用が期待される。
「AI開発エコシステム」の必要性を訴え
 報告書には上記の6分野の開発ロードマップも参考ながら掲載された。どの分野でも、遅くとも2021年にはAIの開発が完了、または着手される計画だ。

 なおこの懇談会は、厚労省内に設置された「データヘルス改革推進本部」の下に設置されており、推進本部で想定しているロードマップとも符号するタイムスケジュールとなっている。今後、報告書に基づいた施策が推進本部内で検討され、実施される見通しだ。

 報告書では日本独自のAI開発の重要性を強く訴えている。国民皆保険制度で生まれた膨大な保健医療データは「宝の山とも言うべき」「日本全体にとっての共有財産」であるとしている。

 「貴重な日本の保健医療データを国内で有効に活用できなければ、海外へ流出し、日本は海外で開発されたAIをただ輸入するだけの国になってしまうおそれもある」と危機感を示している。

 そうならないために、保健医療データをAIの開発のために積極的に活用して「保健医療AI開発エコシステム」を国内において早急に実現する必要があるという。

保健医療分野におけるAI活用推進懇談会 報告書(厚生労働省 2017年6月27日)
[Terahata]

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