ニュース
「社会的な孤立」「閉じこもり」は危険 高齢者の死亡リスクが2倍超に
2018年07月31日

「社会的な孤立」と「閉じこもり」は、高齢者の健康に悪影響をもたらたす。両者が重なると、高齢者の死亡リスクは2倍に上昇することが、東京都健康長寿医療センター研究所の研究で明らかになった。
埼玉県和光市で郵送調査を実施
健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」と「閉じこもり」が重なると、どちらも該当しない高齢者に比べ、6年後の死亡率が2.2倍に上昇することが、東京都健康長寿医療センター研究所の調査で明らかになった。
「社会的な孤立」が高齢者の死亡率を高めることが知られている。また、週1日以下程度しか外出しておらず、外出頻度が低い状態である「閉じこもり」も、同様に高齢者の死亡率の上昇に関連する。しかし、これらが重積すると、高齢者の健康にどのような負の相乗効果をもたらすかは不明だった。
そこで研究グループは、首都圏近郊の埼玉県和光市で2008~2014年に行った郵送調査(有効回答数は1,023人)をもとに、高齢者の「社会的な孤立」と「閉じこもり」について解析した。
公共交通機関の使用や日常品の買い物、食事の用意などの日常生活動作に問題のない健康な研究参加者を、社会的孤立および閉じこもり傾向の有無の組み合わせで4群に分け、6年間の死亡率の違いを検討した。
この研究では、同居家族以外との対面や、電話やメールなどの非対面のコミュニケーション頻度が、両者を合わせても週1回未満の者を「社会的な孤立」とみなし、ふだんの外出する頻度(買い物、散歩、通院など)が1日1回未満を「閉じこもり傾向」とみなした。なお、「社会的な孤立」とは、他者との接触頻度が極端に減少した状態で、主観的な孤独感や孤立感とは区別した。
関連情報
「社会的な孤立」と「閉じこもり」が重責すると危険
「社会的な孤立」と「閉じこもり」が重責していた高齢者は7.6%だった。解析した結果、両者が重積している高齢者では、それぞれ該当しない高齢者に比べて、6年後の死亡率が2.2倍高くなり、社会的孤立か閉じこもり傾向どちらか一方のみに該当する者より死亡率が顕著に高くなることが判明した。
また、完全に閉じこもりになる前の、外出頻度が1日1回未満の「閉じこもり傾向」も健康に悪影響を及ぼすことが分かった。
これまでの研究では、「社会的な孤立」と「閉じこもり」は、それぞれが高齢期の健康度に影響することが確かめられている。「今回の研究では、これらの要因の片方だけが健やかな生活を脅かす危険因子なのではなく、どちらか一方の要因の影響が強いわけでもないことが分かりました。両者が重積している状態が、高齢者の健康にとって問題なのです」と、研究者は述べている。
これは、孤立にともなうコミュニケーション・ソーシャルサポート面の欠乏と、閉じこもり傾向に伴う身体・認知・精神的不活動が、相乗的に健康状態に影響するからだと考えられる。
「高齢期の健康を維持するために、社会的にも身体的にも活動的な生活が重要であり、"交流なき外出"と"外出なき交流"の両者に気をつける必要があることが示されました。また、完全に閉じこもってしまう前の閉じこもり傾向の状態であっても、健康に負の影響を及ぼすため、予防的な観点から早めの注意が必要です」と、研究者は指摘している。
研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典研究部長の研究グループによるもので、医学誌「International psychogeriatric」オンライン版に発表された。

Co-existence of social isolation and homebound status increase the risk of all-cause mortality(International psychogeriatric 2018年7月19日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2019 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「地域保健」に関するニュース
- 2019年02月21日
- 【参加者募集中!】第5回年次講演会/医療や保健指導の現場で役立つプログラム「スローカロリーのアンケート結果」も発表
- 2019年02月21日
- 【健やか21】梅毒予防に向けた啓発動画の作成について(東京都)
- 2019年02月20日
- 府民のための健活マイレージ「アスマイル」が始動 700万人の健康づくりを支援 大阪府
- 2019年02月20日
- 高カロリーの清涼飲料は肥満やメタボの敵 腎臓病のリスクも高める
- 2019年02月20日
- 虐待対策ワーカー配置など児童相談体制強化に向けた取組を強化―東京都
- 2019年02月20日
- 認知症と腸内細菌が強く関連 認知症患者で少ない菌が判明 長寿医療研究センター
- 2019年02月19日
- アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 全国生活習慣病予防月間2019 公開講演会 レポート
- 2019年02月15日
- 【書籍プレゼント】保健指導リソースガイド10周年特別企画 第1弾!『保健師と放射線 すぐ使える講義・演習・事例検討』を10名様にプレゼント
- 2019年02月14日
- 風疹のワクチン接種と妊婦への予防を呼びかけ―先天性風疹症候群の報告を受け
- 2019年02月13日
- 子宮頸がんは2000年を境に増加 世界では31万人超が死亡 専門家は「早期診断とHPVワクチンの普及が欠かせない」と強調
最新ニュース
- 2019年02月21日
- 【参加者募集中!】第5回年次講演会/医療や保健指導の現場で役立つプログラム「スローカロリーのアンケート結果」も発表
- 2019年02月21日
- 【健やか21】梅毒予防に向けた啓発動画の作成について(東京都)
- 2019年02月20日
- 府民のための健活マイレージ「アスマイル」が始動 700万人の健康づくりを支援 大阪府
- 2019年02月20日
- 高カロリーの清涼飲料は肥満やメタボの敵 腎臓病のリスクも高める
- 2019年02月20日
- 虐待対策ワーカー配置など児童相談体制強化に向けた取組を強化―東京都
- 2019年02月20日
- 認知症と腸内細菌が強く関連 認知症患者で少ない菌が判明 長寿医療研究センター
- 2019年02月19日
- アルコールががんや生活習慣病を引き起こす「少酒の勧め」 全国生活習慣病予防月間2019 公開講演会 レポート
- 2019年02月15日
- 【書籍プレゼント】保健指導リソースガイド10周年特別企画 第1弾!『保健師と放射線 すぐ使える講義・演習・事例検討』を10名様にプレゼント
- 2019年02月14日
- 風疹のワクチン接種と妊婦への予防を呼びかけ―先天性風疹症候群の報告を受け
- 2019年02月14日
- 【健やか21】シンポジウム「社会で守る子どもの安全 〜『ネットの声』を分析してみてわかったこと〜」3/3(日)
- 2019年02月13日
- 子宮頸がんは2000年を境に増加 世界では31万人超が死亡 専門家は「早期診断とHPVワクチンの普及が欠かせない」と強調
- 2019年02月13日
- 低所得が糖尿病リスクに 1.2〜1.4倍の格差 ストレスや就労困難が原因か?
- 2019年02月13日
- 地域活動に参加する高齢者はうつになりにくい ソーシャル・キャピタルの整備が必要 3万人を調査
- 2019年02月13日
- 「脂肪の味」は6番目の味覚 味覚に敏感になると食欲を抑えられる?
- 2019年02月13日
- 後期高齢者の6割が3疾患以上の慢性疾患を併存 後期高齢者約131万人分のレセプト情報を分析
- 2019年02月07日
- 【PR】 【資料ダウンロード開始】健康的にダイエット! 保健指導で活用したい「おにぎりダイエット」のススメ
- 2019年02月07日
- 【健やか21】第71回「保健文化賞」の募集について
- 2019年02月06日
- H31年度実施を目指す未就園児等全戸訪問事業で児童虐待を防止
- 2019年02月06日
- 特設ページ「妊産婦のための食習慣」を開設~健やか親子21公式HP
- 2019年02月05日
- 高齢者は運動をどこまでできる? 強めの運動でも楽しんで続けられる
- 2019年02月05日
- 宮城県がメタボ対策のアプリを配信 働き盛り世代に「あと1500歩 歩こう」
- 2019年02月05日
- 牛乳やヨーグルトの成分が炎症を抑制 血管を改善し脳の活性化にも効果的
- 2019年02月05日
- 母親のストレスが子どもの肥満に影響 生後1歳までがとくに重要との結果に
- 2019年02月05日
- 「適正受診が医療を守る~上手な医療のかかり方~」へるすあっぷ21 2月号
- 2019年02月03日
- 大人のがん教育への活用も。がん医療の現状とサバイバーの今をていねいに描くドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」を鑑賞して
- 2019年01月31日
- 【健やか21】子ども予防接種週間(3/1~3/7)/低年齢層の子供の保護者向け普及啓発リーフレット
- 2019年01月30日
- 肥満より怖い「サルコペニア肥満」 食事と運動で筋肉低下を予防
- 2019年01月30日
- 糖尿病発症の予測アプリは「医療機器」ではない スマホアプリにも規制の波
- 2019年01月30日
- 健保組合加入者の37%が肥満 健診検査値で「リスクなし」は19% 健保連
- 2019年01月30日
- すべてのがん患者は運動を治療として行うべき 運動が乳がん患者のQOLを改善 欧州臨床腫瘍学会
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は2,800以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ