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歯周病がCOPDの引き金に 発症リスクが4倍に上昇 喫煙だけがリスクではなかった

 歯周病とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の発症は関連があることが、九州大学の研究で明らかになった。歯周病が重度な人は、COPDを5年以内に発症する割合が3.5倍に上昇することが明らかになった。
歯周病は全身の健康を脅かす病気
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、世界的に増加しており世界の死因の第3位を占める。COPDは、たばこの煙を主とする有害物質を長期間吸入することで、呼吸機能が成人期以降に経年で加速して低下することで発症する。

 一方、歯周病対策は、健康日本21(第二次)の目標にも掲げられており、2022年度までに歯周病の罹患率を40歳代で25%(現状は37.3%)、60歳代で45%(同54.7%)にそれぞれ抑えることが目標とされている。

 研究チームは、喫煙以外の要因を調べるため、口の中だけでなく全身の健康を脅かす病気である歯周病に着目した。福岡県久山町の60歳以上成人900名の追跡調査データを分析し、COPD発症との関連を検討した。

 その結果、喫煙などの影響を加味した上でも、歯茎が健康な人や歯周病が軽度の人に比べ、歯周病が重度な人はCOPDを5年以内に発症する割合が3.5倍も高く、COPD患者の約4人に1人は中等度以上の歯周病が原因であることが示された。

 このことは、歯周病の予防のために普段から自宅や歯科医院で口内環境を健康に保つことはもちろん、歯周病になっても適切な歯周病治療を受けて重症化を未然に防ぐことで、COPD発症のリスクが下がる可能性を示している。

関連情報
虚血性心疾患や糖尿病などの全身疾患にも影響
 歯周病とCOPDとの共通点は、加齢、喫煙が発症に関与していること、口腔内の慢性炎症のみならず、虚血性心疾患や糖尿病などの全身疾患の発症や進行に影響を及ぼすことなどだ。

 COPDでは歯周病の合併が多い理由として、加齢、喫煙習慣、口腔内の衛生状態、健康に対する意識などに加えて、全身慢性炎症が相互に関与している可能性がある。そのほかに、歯牙の喪失、咀嚼機能の低下、低栄養、サルコペニアなども関連しているとみられている。

 「久山町研究」は、九州大学と久山町の共同研究として、久山町の住民を対象に、1961年から行われている疫学調査。40歳以上の全住民を対象にした健康診断結果のデータを蓄積しており、健診受診率や剖検率、追跡率が高く、日本を代表する精度の高い研究として知られる。

 「歯周病は、歯磨きなどのセルフケアや歯石除去などの歯科医院でのプロフェッショナルケアを組み合わせることで、予防・管理をすることができます。今回の研究により、肺の健康を守るために、口の健康をしっかりと守っていくことが重要であることが分かりました」と、研究者は述べている。

 研究は、九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授が主任を務める久山町研究の一環として、同大学歯学研究院口腔予防医学分野の竹内研時助教(現同大学共同研究員、名古屋大学大学院医学系研究科准教授)と山下喜久教授らの研究グループが、同大学医学研究院呼吸器内科学分野の松元幸一郎准教授らと共同で行ったもの。

九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野
Periodontitis Is Associated with Chronic Obstructive Pulmonary Disease(Journal of Dental Research 2019年3月8日)
[Terahata]
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