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母乳育児が糖尿病と高血圧のリスクを低下 糖尿病リスクは半分に減少
2019年11月27日

母乳育児をしている女性は、将来に糖尿病や高血圧を発症する危険性が低いという研究を、米国のクリーブランド クリニックが発表した。
出産した女性を30年間の追跡して調査した研究では、母乳育児は糖尿病のリスクを最大で半分に減らすという結果が出た。
出産した女性を30年間の追跡して調査した研究では、母乳育児は糖尿病のリスクを最大で半分に減らすという結果が出た。
母乳育児が糖尿病と高血圧のリスクを低下
「母乳育児は母親にとって健康的です。授乳することで、エネルギー消費量が増え、出生後の体重減少を促進します。これにより、血糖値を下げる能力の向上、血中の中性脂肪などの脂肪の低下など、代謝に関わる問題を改善できる可能性があります」と、クリーブランド クリニックのハイサム アーメド氏は言う。
研究チームは、計20万6,000人の女性を対象とした、授乳と糖尿病の関連を調べた4件の研究のデータを解析。さらに、計約25万5,000人の女性を対象とした、授乳と高血圧の関連を調べた5件の研究のデータを分析した。
その結果、12ヵ月以上、母乳で育てた母親は、そうでない女性に比べ、2型糖尿病を発症するリスクが30%低く、高血圧を発症するリスクが13%低いという結果になった。
関連情報
母乳育児の保護効果 ストレス軽減も
母乳育児の保護効果について、生物学的なメカニズムの解明が必要だが、これまでの研究で、母乳育児は、産後うつ病や乳がん、卵巣がん、子宮内膜症のリスクを低下させることが指摘されている。
母乳育児は、ストレスを抑え、摂食を抑制する作用のあるオキシトシンと、母性行動を誘導するプロラクチンの分泌を刺激する。これらのホルモンは、授乳中の母親のストレス軽減とポジティブな感情を促進するという。
「母乳で育てることのできない女性も多くいます。そうした女性も、喫煙や過度の飲酒をやめて、食事を改善し、適度に運動をすることで、糖尿病と高血圧の予防に取り組むことができます」と、アーメド氏は付け加えている。
母乳育児が糖尿病リスクを低下 30年間の調査

母乳育児を支援する政策が必要
「今回の研究で、出産後に母乳で育てる母親は、年齢を重ねると2型糖尿病を発症するリスクを最大で半分まで減らすことができることが示されました」と、カイザー パーマネンテのトレーシー フラナガン健康部長は言う。
世界保健機関(WHO)は、出産した女性は母乳のみの育児を6ヵ月以上続け、1年間以上は授乳と食物を組み合わせて、母乳育児を続けることを推奨している。
「このことは、医師、看護師、医療機関、政策立案者が、女性とその家族が母乳で育てるのをできるだけ支援すべきであることを示しています」。
Study examines breastfeeding and risk of maternal diabetes, hypertension(JAMA Network Open 2019年10月16日)Association of Maternal Lactation With Diabetes and Hypertension: A Systematic Review and Meta-analysis(JAMA Network Open 2019年10月16日)
The Benefits of Breastfeeding for Baby & for Mom(クリーブランド クリニック 2018年1月1日) Women who breastfeed 6 months or more reduce diabetes risk(カイザー パーマネンテ 2018年1月16日)
Lactation Duration and Progression to Diabetes in Women Across the Childbearing Years: The 30-Year CARDIA Study(JAMA Internal Medicine 2018年3月)
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