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夕方から夜間のストレスは「体内時計」を狂わせる 肥満や糖尿病の原因に
2015年06月17日
早稲田大学理工学術院の研究チームは、朝よりも夕・夜のストレスが体内時計を狂わせる可能性が高いことを、マウスを用いた実験で明らかにしたと発表した。
夕方から夜間のストレスが体内時計を乱しやすい
ほとんどの細胞には約24時間周期の体内時計があり、時計遺伝子によって制御されている。体内時計が乱れると肥満・糖尿病やがんなどの発症リスクが高まるとされており、コルチゾールやアドレナリンなどの「ストレスホルモン」が影響を及ぼすことが分かっている。しかし、個体レベルでストレスが体内時計にどのように影響を与えるかは分かっていなかった。
研究チームは、ストレスによって体内時計が変化するか、いつ受けると影響があるのか、慢性的なストレスは体内時計に影響を与えるのか、さらにどのようなストレスが体内時計に影響するかをマウスを用いた実験で検討した。
マウスが寝ている時刻にストレスを2時間与えたところ、肝臓、腎臓、唾液腺、副腎の体内時計が早まり、脳内の海馬や大脳皮質でも変化が起こることが分かった。また、ストレス負荷の時刻を検討したところ、朝には影響がなかったが、夕方では体内時計が遅れ、夜では体内時計が組織間でバラバラになることが判明した。
夜のはじめのストレスでは、肝臓と唾液腺で時計の時刻が真逆になり、さらに腎臓では時計振動がストップしてしまい、体の中で時差ボケ状態になっていた。
一方、週3日間のストレス負荷を5週間続けた結果、ストレスによる体内時計の乱れはみられなくなった。また、高い場所で不安にさせたり、体が大きく攻撃的なマウスに近づけたりするストレスでも体内時計が大きく乱れることが判明した。
運動やトレーニングで体内時計を調整できる
体にはストレスに慣れる「ストレス耐性」が備わっており、連続したストレス刺激ではストレスホルモンの分泌も弱まる。今回の実験では、そのような「慣れ」が体内時計のストレス応答にもあることが示された。
「朝よりも夕方から夜間のストレスが、体内時計をより乱しやすいので注意が必要だ。夜間交代勤務などのシフトワーカーは時差ボケかつ体内時計が乱れていると考えられるが、夜勤中のストレスにさらされると、その影響をさらに強める可能性がある」と、研究者は述べている。
これまで光や食事が体内時計リセットに重要と考えられていたが、今回の研究でストレスもそれに匹敵する影響力をもっていることがわかった。
よって軽度なストレスは体内時計を正しい時刻に保つのに重要である可能性があり、アドレナリン分泌などストレスと似た生理応答を示す運動やトレーニングを、軽度なストレスとして利用すると、体内時計を調整できる可能性がある。
同研究グループは、実際に人の体内時計がストレスで大きく変動してしまうのか、また慢性的な過度なストレスにより発症するうつ病患者の体内時計も乱れているのかなどの解明を今後の課題として挙げている。
今回の研究は、早稲田大学理工学術院(先進理工学部電気・情報生命工学科)の柴田重信 教授、同大学高等研究所の田原優 助教らの研究グループによるもので、英科学誌「Scientific Reports」に発表された。
早稲田大学理工学術院
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