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親の経済格差が子どもの健康に影響 家計支出が低いと肥満が3倍に増加
2015年06月17日
親の経済格差が子どもの肥満に及ぼす影響を調べた調査で、経済水準が低い世帯では、青年期の子どもの肥満の割合が3倍以上に上昇することが明らかになった。
家計支出額が低いと子どもの肥満が3.4倍に増加
近年は子どもの貧困が社会問題になっており、親の経済状況が悪いと子どもの健康が悪くなるのではないかと懸念されている。欧米では親の経済状況が悪いほど、その子どもが肥満になるリスクが高くなることが報告されている。
研究チームは、日本での現状を調査するために、全国の子どもを対象に親の経済状況によって肥満の割合が異なるかどうかを分析した。
対象となったのは、厚生労働省が全国規模で無作為抽出により実施している「国民生活基礎調査」と「国民健康・栄養調査」に参加した学童期(6~11歳)と青年期(12~18歳)の各397人の子ども。
解析した結果、学童期の12.3%と、青年期の9.1%が、体格指数(BMI)が25以上の「肥満」と判定された。
月間の家計支出額の平均値を「低」「中」「高」の3群に分けて分析したところ、青年期では、月間平均家計支出額が「低(16.5万)」の場合、「高(45.2万)」と比較して、肥満の割合が3.4倍高いことが明らかになった(調整後オッズ比3.40:95% 信頼区間1.20-9.60)。
学童期では、家計支出が「低(15.0万)」と、「高(同39.0万)」との間に、肥満の割合に有意な差はみられなかった(調整後オッズ比1.45:95% 信頼区間0.64-3.26)。
海外の研究では、家計支出額が低い家庭では、(1)健康的な生活に関する教育が十分に行き届いていない、(2)家庭で生鮮野菜や果物、魚などの健康的な食品を購入していない、(3)コンビニエンスストア、ファストフード店などで売られている脂肪や糖質の多い食品をよく利用している、といった傾向がみられることが示されている。
研究者は、「日本の子どもの貧困と肥満との因果関係について不明な点が多い。今後のさらなる研究が必要とされている」と述べている。
この研究は、日本医科大学衛生学・公衆衛生学の可知悠子助教らによるもので、医学誌「Journal of Epidemiology」オンライン版に発表された。
日本医科大学大学院医学研究科 衛生学公衆衛生学分野
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