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40代女性の乳がんを早期発見 マンモグラフィと超音波検査の組合せ
2015年11月06日
40歳代の女性を対象にした乳がん検診の大規模臨床試験で、マンモグラフィ(乳房エックス線)検査に超音波(エコー)検査を併用すると、早期の乳がんの発見率が1.5倍に上昇することを、東北大学などの研究グループが世界ではじめて明らかにした。
マンモグラフィと超音波の長所をかけあわせた検診
乳がんは30~60歳代の日本女性が発症するがんのトップになっている。もっとも乳がんを発症しやすい年代は40歳代と若く、より有効な乳がん検診の開発が急務となっている。
乳がん検診は現在、マンモグラフィ(乳房エックス線)検査が基本とされており、国は40歳以上の女性に2年に1回受けることを推奨し、自治体が公費助成している。
マンモグラフィは一般に「50歳以上で有効」「高濃度乳房では精度が落ちる」「妊娠中は受けられない」という特徴がある。
超音波検査を使う診断方法も開発されているが、乳がん検診における有効性は十分に確かめられていない。超音波検査には「高濃度乳房では精度が落ちない」「妊娠中でも検査可能」「小さな石灰化を検出できない」「精度管理にばらつきがある」といった特徴がある。
そこで、厚生労働省は国家的プロジェクトとして「J-START」試験を立ち上げた。J-STARTでは、超音波検査を併用する検診と併用しない検診(マンモグラフィのみ)を比較する試験を世界ではじめて実施し、超音波検査が有効かどうかを検証している。対象となっているのは40歳代の女性だ。
早期の乳がんの発見率が1.5倍に上昇
今回実施されたのは、マンモグラフィのみと、超音波検査を追加した2つのグループを比較するランダム化比較試験。2007年度から6年間で全国42の機関で、計7万6,196人の40歳代の女性がどちらかのグループに無作為に分けられ検診を受けた。
その結果、マンモグラフィのみのがん発見率は0.32%(117人)だったのに対し、超音波の併用では0.5%(184人)に上昇した。
がんを正しく判定できる感度は、マンモグラフィのみで77.0%だったが、超音波も受けると91.1%に上がった。発見したがんの進行度を比べると、超音波では早期の「ステージ0」「ステージ1」の割合が高かった。
研究を発表したのは、東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科学分野の大内憲明教授らの研究グループ。医学誌「ランセット」に発表された。
自治体が行う検診に超音波を組み込むには、実際に死亡率を下げる効果を示すことが必要だが、「マンモグラフィで判断しにくい場合に超音波を加えるなど、検査の精度を高められる可能性が示された。超音波検診の体制づくりを進める必要がある」と、大内教授は述べている。
一方で、精密検査が必要とされた人の割合も増え(8.8% 対 12.6%)、針を刺して細胞を調べる針生検の追加も増えた。「超音波検診導入による利益と不利益のバランスを検討することも必要」と、大内教授は付け加えている。
マンモグラフィの定期検診をめぐっては、米国がん協会(ACS)が10月に、年に1度のマンモグラフィ(乳房X線撮影法)による乳がん検診の推奨年齢を40歳から45歳に引き上げるガイドラインを発表した。
マンモグラフィは若い女性の乳がんを発見するに不利だという見解が示され、がん検診についての議論が続いている。
J-START-乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科学分野
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