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子育て中にがんを発症する親が年間5万人超 子供へのケアも必要
2015年11月06日

がんと診断された際に、18歳未満の子供がいる患者は全国で年間5万6,143人に上るとの推計を、国立がん研究センターが発表した。患者の子供の数は合計で8万7,017人になるという。
親がんを発症 子供のストレスに対するケアも必要
日本では最近は結婚年齢や出産年齢が高齢化し、子供を持つ年齢も上がっている。こうした傾向から子供が思春期の時期に親がんになるケースも増えている。
子育て中の人に対するがん告知は、親にとっては子供にどう伝えるかという悩みにつながり、また患者の親をもつ子供にとっては、精神社会的な発達や心理的成長への影響が大きい。
自分の親がんと診断されたり、治療を受けたり、またがんによって死亡するというストレスに対するケアが必要とされている。
国立がん研究センター(国立がん研)は、18歳未満の子供をもつがん患者とその子供について調査し、国内で1年間に新たに発生する患者とその子供の人数などの全国推定値を明らかにした。
調査では、2009年1月~2013年12月までの5年間に、初めて国立がん研中央病院に入院した20歳~59歳までのすべての患者を対象に、同居する18歳未満の子供の有無と人数、子供の年齢・性別、および患者自身の罹患したがんの種類について、電子カルテ上より集計した。
さらに、これを2010年地域がん登録データおよび2011年院内がん登録データとつきあわせて、国内で1年間に新たに発生する患者とその子供の人数などを推定した。
この結果、国内全体では、1年間に新たに発生する18歳未満の子供のいるがん患者の数は5万6,143人、またその子供たちの数は8万7,017人と推定された。
これを2010年の人口構成データに当てはめると、1年間に自分の親が新たにがんと診断された子供の割合は全体の約0.38%となる。
社会全体で親と子供を支援する体制をつくる必要がある
日本人が一生涯にがんになる確率は男性約56%、女性約43%。年齢とともに罹患率は上昇する。
調査では、ひとつのがん診療連携拠点病院においては、1年間におおよそ82人の18歳未満の子供を持つがん患者と128人の子供たちが新たに発生していることが分かった。
18歳未満の子供のいるがん患者がんと診断された平均年齢は、男性46.6歳に対して、女性43.7歳だった。
がんの種類は、男性では胃がん(15.6%)、肺がん(13.2%)の順に多く、女性では乳がん(40.1%)、子宮がん(10.4%)の順に多いという結果になった。
親がんと診断された子供の平均年齢は11.2歳であり、子供の年齢の上昇とともに人数が増えていくことがわかった。
がんの宣告は、患者自身に加え、家族、特にその子供たちにも大きな影響を与える。研究グループは「子育て中の患者は多方面から支援を受けながら、より良い療養生活とその後の人生をおくることが重要となる。今後は社会全体で親と子供への支援体制をつくっていく必要がある」と強調している。

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