ニュース

子宮頸がんワクチン最新情報 「予防接種は受けるべき」と学会が発表

 子宮頸がんワクチンの接種後に、原因不明の体の痛みなど副反応を訴える患者が相次いだ問題について、厚生労働省や自治体が対策を相次いで発表した。日本産科婦人科学会は「子宮頸がん予防のために接種を推奨するべき」と主張している。
子宮頸がんワクチンが「疾病・障害」に認定
 子宮頸がんワクチンの接種後に、原因不明の体の痛みなど、重い症状の訴えが相次いだ問題について、厚生労働省は疾病・障害認定審査会(感染症・予防接種審査分科会)の審議結果を公表した。子宮頸がんワクチンと疾病との間に因果関係があったとして「疾病・障害」を認定した。

 子宮頸がんワクチンの接種を受けた後に多発性の「疼痛」「腹痛」「倦怠感」「下肢痛」「頭痛」「腹痛」「四肢筋力低下」といった症状を訴える人が対象となる。ワクチンの副反応に対する被害救済制度としては、厚生労働省が12月に、副作用被害の救済制度を知らせるよう都道府県に要請した。この制度では、副反応の治療のためにかかった医療費などが支給される。

 ただし、子宮頸がん予防ワクチン接種後に副反応については、専門家による委員会が検討を行い、ワクチン接種の有効性と比較考量した結果、定期接種の実施を中止するほどリスクが高いとは評価しなかった。

検診のみで子宮頸がんを減少させるのは難しい
 日本では毎年約1万人が子宮頸がんを発症し、約3,000人が死亡している。特に20~30歳代に増加しており、若い女性や子育て世代の女性が子宮頸がんに罹患し、妊娠能力や命を失うことが深刻な問題となっている。

 子宮頸がんの予防対策として細胞診による検診が行われてきたが、日本の検診受診率が30~40%台で、欧米先進国の70~80%台と比較して低い。検診のみで子宮頸がんの死亡数を減少させるのは難しい状況だ。

 子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスだ。子宮頸がんワクチンにはHPVの成分が含まれており、接種することで免疫をつくり、HPVの感染を防ぐことができる。

 子宮頸がんワクチンは2013年度から「定期接種」になった。定期接種では、費用が公費で補助され、対象者には接種を受ける「努力義務」があって、国が呼びかける「積極的勧奨」が行われる。

 ワクチン摂取の対象となるのは、小学6年から高校1年の女子だが、接種後に全身の痛みや痙攣など、ワクチンの「副反応」が疑われる症状を訴える人が相次いで、わずか2ヵ月で「積極的勧奨」が中断された。

 現在も定期接種から外れたわけではないので、多くの自治体で無料で受けられるが、「受けたい人は受けて下さい」という状況だ。

医療費の負担を軽減する自治体が増えている
 子宮頸がんワクチンの副反応に対し、独自に医療費の自己負担を軽減する自治体も増えている。名古屋市は約7万1,000人の女性を対象に、ワクチン接種と副反応との関連を調べる独自調査を実施。回答率は43%で、3万人余から回答を得た。

 分析結果では、視力低下や過呼吸、歩行障害など24の症状について、接種による直接的な影響は統計学的には確認できなかった。ただ、市は「個々の事例の因果関係は慎重な判断が必要」として、今後詳細な分析を進めるとしている。

 同市は、副反応が疑われる症状に悩む人たちを対象に、医療や被害救済、福祉などの相談に総合的に対応する窓口を設置。市教委内には学校生活での支援など教育に関連する相談に対応する窓口を設ける。

 福島県の会津若松市は、ワクチンの接種を受けた1,182人のうち、約40%に当たる454人が「接種が原因と思われる体調変化」の症状があったとのアンケート結果を公表。接種後1カ月以内に370人は症状がなくなったものの、29人が現在も症状に苦しんでいる実態を明らかにした。

 同市は、厚生労働省の救済策拡大と合わせ、保険支払いまでの間の負担軽減を想定した独自の医療費補助策などを検討している。

安心してワクチン接種を受けられる環境が整ってきた
 一方、日本産科婦人科学会は子宮頸がんワクチンについて「検診(細胞診)とともに子宮頸がん予防のために必須の両輪であり、接種を推奨するべき」との声明を8月に発表した。

 日本人女性が生涯に子宮頸がんになる確率はおよそ1%。ワクチンによってこれを0.5%以下に下げられる可能性がある。製薬企業の調査によると、重篤な副反応の発生率は0.04%程度だという。

 日本医師会・日本医学会は8月に「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」をまとめ、接種医や地域の医療機関での、問診・診察・治療を含む初期対応のポイントやリハビリテーションを含めた日常生活の支援、家族・学校との連携の重要性について明記した。

 日本産科婦人科学会は、診療体制が整備され接種希望者がより安心してワクチン接種を受けられる環境が整ってきたと主張している。ワクチン接種により回避することができた子宮頸がん患者数は1万3,000人~2万人、死者数は3,600~5,600人と推計される。ワクチンを接種しないことによる不利益についても考慮する必要があるという。

 なお、子宮頸がんワクチンがもっとも優先的に接種が奨励されるのは10~14歳の女性だが、15~45歳の女性でもワクチンの有効性は証明されているという。子宮頸がんは20~39歳で患者が増えているので、ワクチン接種のメリットは大きい。

 「ワクチン接種の勧奨中止が現状のまま継続されることになれば、若い世代のワクチンによるがん予防の利益を受けられず、世界の中で日本だけが、将来も子宮頸がん罹患率の高い国となる可能性が懸念される」と、同学会は指摘している。

ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がん予防ワクチン)(厚生労働省)
第111回疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会(厚生労働省 2015年12月11日)
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種の勧奨再開を求める声明(日本産科婦人科学会 2015年8月29日)
子宮頸がん予防接種 調査結果(速報)(名古屋市 2015年12月14日)

[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2019年04月17日
厚労省「受診率向上施策ハンドブック」で受診率を上げる 強制ではなく自発的な行動に導く「ナッジ理論」とは
2019年04月17日
連休(GW)こそ健康管理に注意 食事・運動・体内時計の調整がポイント 8つの対策で連休を乗り切る
2019年04月17日
日本人のたばこ依存と関連する遺伝子を発見 心疾患、COPDなど11の病気の発症リスクと相関 理化学研究所
2019年04月17日
禁煙のメリットは体重増加のデメリットを上回る 糖尿病のコントロールも改善
2019年04月17日
高血圧が循環器病の原因に 薬を飲んで血圧が低くなっても安心はできない
2019年04月10日
未来投資会議「全世代型社会保障における疾病・介護の予防・健康インセンティブ」 受診率向上と重症化予防が柱
2019年04月10日
5人に1人が「不健康な食事」が原因で死亡 たばこや高血圧より深刻 食事改善で命を救える
2019年04月10日
「1日10分程度」のウォーキングで死亡リスクは低下 忙しい人も心配はご無用 運動は限られた時間に行っても効果がある
2019年04月10日
助産師・保健師・精神科医など多職種が連携する「母子保健システム」を開発 メンタルヘルスを向上 国立成育医療研究センター
2019年04月10日
皮膚の若さの維持と老化のメカニズムを明らかに 皮膚の老化を抑えるコラーゲンが判明

最新ニュース

2019年04月23日
【PR】参加受付中!「伊藤園 健康フォーラム~お茶で人生100年時代を豊かに生きる知恵~」健康寿命延伸におけるお茶の役割とは?研究に基づく知見を紹介
2019年04月18日
【健やか21】全国一斉「あそびの日」キャンペーンの実施について(スポーツ庁)
2019年04月17日
厚労省「受診率向上施策ハンドブック」で受診率を上げる 強制ではなく自発的な行動に導く「ナッジ理論」とは
2019年04月17日
連休(GW)こそ健康管理に注意 食事・運動・体内時計の調整がポイント 8つの対策で連休を乗り切る
2019年04月17日
日本人のたばこ依存と関連する遺伝子を発見 心疾患、COPDなど11の病気の発症リスクと相関 理化学研究所
2019年04月17日
禁煙のメリットは体重増加のデメリットを上回る 糖尿病のコントロールも改善
2019年04月17日
高血圧が循環器病の原因に 薬を飲んで血圧が低くなっても安心はできない
2019年04月17日
母乳だけにこだわらない授乳の支援を―厚労省が「授乳・離乳の支援ガイド」を改定
2019年04月12日
【IDAF】2018年国際糖尿病支援基金・年次報告書
2019年04月12日
【健やか21】ネット・スマホのトラブル等 SNS相談を始めます(東京都)
2019年04月11日
厚労省が自殺防止SNS相談事業のガイドラインを公表~具体例をふまえ分かりやすく~
2019年04月10日
未来投資会議「全世代型社会保障における疾病・介護の予防・健康インセンティブ」 受診率向上と重症化予防が柱
2019年04月10日
5人に1人が「不健康な食事」が原因で死亡 たばこや高血圧より深刻 食事改善で命を救える
2019年04月10日
「1日10分程度」のウォーキングで死亡リスクは低下 忙しい人も心配はご無用 運動は限られた時間に行っても効果がある
2019年04月10日
助産師・保健師・精神科医など多職種が連携する「母子保健システム」を開発 メンタルヘルスを向上 国立成育医療研究センター
2019年04月10日
皮膚の若さの維持と老化のメカニズムを明らかに 皮膚の老化を抑えるコラーゲンが判明
2019年04月08日
日本健康会議「健康スコアリング(2018年度版)の効果検証結果」を発表
2019年04月05日
【健やか21】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
2019年04月03日
認知症の危険因子は「糖尿病」「高血圧」「肥満」 生活改善でリスクを軽減できる
2019年04月03日
「世界腎臓デー」 10人に1人が腎臓病の危機にさらされている 早期発見・治療のための戦略が必要
2019年04月03日
介護士の「腰痛」に心身のストレスが影響 腰痛対策のためにストレスマネジメントを
2019年04月03日
1回の採血で10年以内のがん・脳卒中・心筋梗塞の発症リスクを評価できる 血中のアミノ酸バランスを解析
2019年04月03日
「骨粗鬆症」による骨折患者の介護 4人に1人が離職・転職 76%が復帰には悲観的
2019年04月03日
ビタミンCが不足すると筋肉が減る 不足している高齢者で筋力低下 摂取すると回復
2019年04月03日
「糖尿病重症化予防の推進TOPICS」へるすあっぷ21 4月号
2019年03月28日
多職種連携で効率的・効果的な産業保健活動を~厚労省が「産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集」発行~
2019年03月28日
【健やか21】2018年HIV感染者・AIDS患者及び梅毒患者の発生動向等について
2019年03月27日
松本市が掲げる「健康寿命延伸都市・松本」 新たな官民連携のあり方を提案 「健康パスポートクラブ」で市民参加を促す
2019年03月27日
「ファストフード」は健康的になったのか? 30年間の調査でカロリーと塩分が増えているとの結果に
2019年03月27日
緑豊かな公園でウォーキング たった20分でもメンタルヘルスに良い効果が 主観的幸福度が向上
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 8,121 人(2019年04月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶