不妊症の原因の半分は男性 「知っていますか? 男性の不妊治療」
不妊症の半分は男性が原因とされる。不妊治療を受けるカップルは増えているが、男性の受診率は伸び悩んでいる。
アンケートは全30問の質問で構成されており、対象となるのは不妊治療中または不妊治療の経験のある男女、および「不妊かもしれない」という不安を抱えている男性本人。ウェブ調査は2月14日まで実施される。
不妊症は「正常な性生活を2年続けても妊娠しない状態」と定義される。男女ともに正常なカップルが性生活を1年間続けると8割以上が妊娠するが、15%程度は不妊症とみられる。政府が不妊男性への治療費助成の方針を決めるなど関心は高まっているが、男性の受診者は少なく、必要な治療を受けていない現状がある。
日本生殖医学会は「生殖医療専門医」として生殖医療のスペシャリストを認定している。男性不妊の診察・治療を専門とするのは泌尿器科の生殖医療専門医で、精液所見の改善などについてアドバイスをしている。
研究代表を務める横浜市立大市民総合医療センターの湯村寧・生殖医療センター部長は「男性の不妊症は情報が不足している。不妊治療を受けられることを知らない人が多い。アンケートでは、何を不妊や不妊治療の情報源としているか、精液検査を受けたことがあるか、不妊に悩む男性が生殖医療専門医に何を望んでいるかなどを聞いている。多くの人に参加してほしい」と話している。
不妊症は女性だけ、男性だけではなく、夫婦・カップルの問題だ。不妊症の原因が女性にあると考えがちだが、実際には男性が原因である場合も多い。WHO(世界保健機関)によると、不妊症の48%は男性に原因があり、不妊症の半分に男性が関わっている。
一方で、湯村氏らの調査によると、医療機関で不妊症の相談をしたカップルのうち男性の受診者数は10%未満だったという。男性不妊はあまり知られておらず、男性が受診していない現状がある。カップルが年齢を重ねるほど不妊症の治療の成功率は下がってしまうので、少しでも早く受診し治療をはじめることが必要だ。
「そもそも不妊が女性の病気と考えてしまうことが、男性の受診を遅らせている原因となっている。男性不妊も対象としている不妊のクリニックで診察や精液検査を受けることが大切。生殖医療専門医のいる泌尿器科であれば、適切なアドバイスを得られる。自治体によっては"不妊相談"を開設しているところもある」と、湯村氏は言う。
男性不妊の治療は効果的で、内服薬により精液の所見がよくなる可能性がある。精索静脈瘤が原因の場合は手術で治療できることも多い。体外受精の費用は高いが、治療を受けることで精液検査所見が改善して人工授精で済むケースも多く、精神的・経済的な負担の軽減につながる。
厚生労働省は、不妊治療にかかる費用の助成を拡大する。安倍政権が進める「1億総活躍社会」の実現に向けた緊急対策として、少子化対策の一環として盛り込まれた。
不妊治療は公的医療保険の対象外。現状は、体外受精でないと妊娠が難しい夫婦を対象に、夫婦の所得が計730万円未満ならば、体外受精1回につき15万円を上限に計6回(2013年度以前から受けている場合などは計10回)まで助成している。
今回、不妊治療を受ける世帯の負担を軽減するため、もっとも需要の多い1回目のみ30万円に引き上げ、不妊治療を受けやすくする。新たに行う夫の手術に対する助成は従来の助成に上乗せし、最大6回まで受けられる。夫の年齢制限は設けない。
不妊治療の助成制度は少子化対策として、不妊治療を受ける夫婦の経済的負担を軽減するために2004年度にスタートした。当初は10回まで助成を受けられ、年齢制限もなかった。しかし、不妊治療で出産した人の9割が治療6回目までに妊娠・出産していることをふまえ、2014年度に6回(40歳以上は3回)に減らし、年間の回数制限は撤廃した。
また、年齢が高くなると妊娠・出産に伴うリスクが大きくなることなどから、女性年齢に「42歳まで」の制限を設けることが決まっている。不妊治療の助成件数は、2004年度の1万7657件から2013年度の14万8659件と着実に増えている。
知っていますか? 男性の不妊治療 男性に対する不妊の検査・治療についてのアンケート(我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究)
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