ニュース

糖質を抑えて糖尿病リスクを低下 清涼飲料の過剰摂取をやめさせるには

 コーラやジュースなどの清涼飲料水、お菓子などに含まれる糖類を減すことで、2型糖尿病や肥満のリスクを低下できることが判明した。
 体内で増えすぎた糖(グルコース)の悪影響を抑える酵素も発見された。
高カロリー飲料を飲まなければ30万人の糖尿病を防げる

 コーラやジュースなどの清涼飲料水、お菓子などに含まれる糖類を減すことで、2型糖尿病や肥満のリスクを低下できるという研究が発表された。

 ヒトの味覚は食事スタイルの影響を受けやすい。糖類の多い食事を続けていると味覚がそれに慣れてしまい、より多くの糖類を求めるようになる。

 「逆に糖類を少しずつ減らしていけば、味覚はその変化に適応するので、少ない糖類で満足できるようになります」と、英国のロンドン大学クイーン メアリー校のグラハム マグレガー教授は言う。

 マグレガー教授らの研究チームは、英国食事栄養調査(NDNS)と、英国人の清涼飲料の消費量の調査を解析し、糖尿病や肥満の発症率との関連を調べた。

 その結果、高カロリーの清涼飲料やお菓子に含まれる糖類を40%減らすと、1日の摂取カロリーを38.4kcal減らせ、5年間で体重を平均1.2kg減らせることが判明した。

 さらに、糖類を制限する食事スタイルを続けると、20年で過体重が50万人、肥満が100万人それぞれ減少し、2型糖尿病の発症数を27万4,000人~30万9,000人減らせることが分かった。

糖類の過剰摂取により2型糖尿病が増える

 英国の公共の医療サービスを提供する国民保健サービス(NHS)は、英国内の病院で高カロリーの清涼飲料を販売する際に、独自の"砂糖税"を設けることを発表した。

 「清涼飲料やお菓子の糖類を減すために食料品メーカーが支払うコストはそれほど高くなく、売上げを大きく落とすこともありません。少しの企業努力で達成可能です」と、マグレガー教授は指摘する。

 「糖類の過剰摂取により2型糖尿病の患者数が増えると、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病や網膜症などの破壊的な合併症を防ぐのが難しくなります」と、英国糖尿病学会(Diabetes UK)のクリス アスキュー氏は言う。

 英国では国をあげて塩分の制限を訴えるキャンペーンを展開した結果、平均塩分摂取量が5年間で40%減少した実績がある。「たばこやアルコールに含めて、砂糖についても健康リスクに対する課税を行うべきです」と、アスキュー氏は指摘する。

糖類を総エネルギー摂取量の5%未満に制限

 世界保健機関(WHO)は、2型糖尿病や肥満、虫歯など健康上のリスクを防ぐために、1日に摂取する糖類を、総エネルギー摂取量の5%未満に抑えるべきだとするガイドラインを2015年に発表した。

 ガイドラインでは、糖類の摂取量を1日の総エネルギー摂取量の5%を超えないよう制限している。この量は、平均的な体格指数(BMI)の成人で1日当たり約25g、小さじ6杯分の砂糖に相当する。

 ガイドラインの対象となるのは、一般家庭に含めて、食品加工業や外食産業など全般。単糖類(ブドウ糖、果糖など)と、二糖類(ショ糖、テーブル砂糖など)だけでなく、天然のハチミツやシロップ、フルーツジュース、濃縮果汁なども含まれる。

 糖類の過剰な摂取が、全般的なエネルギー摂取量を増大させ、炭水化物以外の必要な栄養素の摂取を減少させる可能性があるとしている。

 日常生活では、加工食品などに"隠された"かたちで糖類を摂取している場合が多く、例えば、大サジ1杯分のケチャップには糖類が約4g(小サジ1杯分)が含まれ、清涼飲料1缶には最大で糖類が約40g(小サジ10杯分)含まれている。

体内の余分な糖を取り除く酵素を発見

 糖類の過剰摂取を防ぐだけでなく、体内で増えたブドウ糖の悪影響を取り除く治療法の開発も進められている。

 体内でグルコース(ブドウ糖)が過剰に増えると、体のさまざまな器官に悪影響がもたらされる。この毒性を阻止する酵素を、カナダのモントリオール大学糖尿病センターのマーク ブレンティ教授らが発見した。

 「G3PP」(グリセロール-3-リン酸ホスファターゼ)と命名されたこの酵素は、体内で糖や脂肪が利用されるのをコントロールしており、細胞中に過剰に存在する糖を解毒する能力もあるという。

 血糖値が上昇すると、グルコースから作られる「グリセロール3-リン酸」(G3P)が過剰になり、インスリンを分泌する膵臓のベータ細胞など、体内のさまざまな組織に有害な作用をもたらすことが分かっている。

 G3PPは過剰なG3Pを分解して細胞外に排出する働きをする。G3PPによって、β細胞などが過剰なグルコースによる毒性から保護される。

 研究チームは、過剰なグルコースをアルコールの一種であるグリセロールとして排除させるメカニズムを探していて、G3PPを発見した。

 「G3PPは体のあらゆる組織にあります。G3PPのメカニズムは肝臓の細胞でも作用しており、脂肪がつくられ過剰に貯蔵されるのを防ぎます。糖尿病の人では、肝臓におけるグルコースの過剰生産が障害になることがありますが、G3PPにはこれを防ぐ作用があります」と、ブレンティ教授は説明する。

 G3PPの働きを高める治療を開発すれば、2型糖尿病や肥満をより効果的に治療できるようになる可能性があるという。

Reducing sugar content in drinks could prevent one million cases of obesity(ロンドン大学クイーン メアリー校 2016年1月7日)
Reducing sugar in sugar-sweetened drinks could prevent 300,000 cases of Type 2 diabetes(英国糖尿病学会 2016年1月7日)
Gradual reduction of sugar in soft drinks without substitution as a strategy to reduce overweight, obesity, and type 2 diabetes: a modelling study(Lancet Diabetes & Endocrinology 2016年1月6日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「栄養」に関するニュース

2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
2024年04月08日
子供の頃から肥満対策が必要 学校で座りっぱなしの時間が減ると子供の肥満は改善 早期介入が効果的
2024年04月08日
「歯周病」が肥満・メタボ・糖尿病を悪化 「うがい薬」で口のなかの悪玉菌を減らせる
2024年04月02日
果物の食べすぎは肥満・メタボの原因になる? ドライフルーツなら大丈夫? 果物の安全・効果的な食べ方が判明
2024年04月01日
「低カロリー甘味料」が過体重や肥満の人の体重管理を改善 甘い食品への欲求も低下 欧州肥満学会議が発表
2024年03月25日
健康的な食事が老化を遅らせ認知症リスクを低下 運動も効果的 40歳になったら対策が必要
2024年03月18日
「温泉」が腸内細菌叢に良い影響 泉質によって異なる健康効果 温泉療法は肥満・メタボの人にも良い
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶