職場のがん検診 女性の受診率は3割台どまり 精密検査も伸び悩み
厚生労働省は、企業の健康保険組合が実施するがん検診の実態調査の結果を公表した。健康診断などの機会にがん検診を受診している従業員の割合は、胃がん、肺がん、大腸がんでは6~7割と高い一方、乳がんや子宮頸がんなどの女性の検診受診率は3割台にとどまっていた。同省が職場のがん検診に関する実態調査をしたのは今回がはじめて。
調査は昨年12月~今年1月、全国の1,406の健康保険組合にアンケートを送付、1,238の組合から回答を得た。▽胃がん、▽肺がん、▽大腸がん、▽乳がん、▽子宮頸がん、▽前立腺がん、▽肝臓がん、▽甲状腺がんについて、検診の実施状況を調べた。
従業員の受診率は、肺がんがもっとも高く約72%、大腸がんは約61%、胃がん約57%、肝臓がん約50%に上り、国が目標とする5割を超えた。一方で乳がんは約35%、子宮頸がんは約32%と、婦人科系の受診率が低い傾向にあることが分かった。
検診で異常がみつかった人のうち、精密検査を受けたのは肺がん45%、大腸がんで約45%、胃がんは約44%、肝臓がん約83%、乳がん約70%、子宮頸がん約65%にとどまり、精密検査(二次検診)の受診率の向上が課題となっていることが浮き彫りになった。
健康保険組合(保険者)のがん検診の連絡方法は、「ポスターや広報などで、対象者全体に対して通知」(約69%)、「メールや手紙などで、対象者個人に対して通知」(約38%)となっており、精密検査が必要な従業員の把握方法は「検診機関が保険者に報告することになっている」(約80%)が多かった。
がん検診の目的は、早期発見により、そのがんで死亡する可能性を減少させることだ。がん検診の最大のメリットは、早期発見、早期治療による救命の効果だ。
がん検診は、一見健康な人に対して、「がんの可能性がある(異常あり)」「可能性がない(異常なし)」を判定し、可能性がある人を精密検査で診断し、がんを早期発見することを目的としている。
「がんの可能性がある(異常あり)」と判断された場合には、必ず「精密検査」を受診することが大切だ。精密検査を受診して「異常なし、または良性の病変」と判定された場合は次回の検診へ、「がん」と判定された場合は治療へ進むことがん検診の流れだ。途中で精密検査や治療を受けない場合は、がん検診の効果はなくなってしまう。
自覚症状が起きてから外来を受診する場合には、進行したがんが多くみつかる。一方、がん検診は症状のない段階で受けるので、健康な人でも早期がんが多く発見さる。早期がんはほとんどが治癒が可能で、しかも治療の負担も少なくて済む。
がん検診により発見されるがんの中には、生命予後に影響を与えない、すなわち死亡原因にならないものも含まれている。がん検診ではいわゆる前がん病変も発見されるからだ。大腸がんでの大腸腺腫(ポリープ)や、子宮頸がんでの異型上皮(がんになる前の状態)などがその例だ。
こうした前がん病変は、それを治療することでがんになることを防ぐことができる。
一方、がん検診によってがんの疑いがあると判定され、精密検査を行ってもがんがない場合も多くある。これを検診での「偽陽性」といい、一見すると不必要な検査にみえるが、がんの早期発見、早期治療のためにはある程度やむをえない。
がん検診で「精密検査が必要」を判定された場合でも、必要以上に恐れず検査を受けることが、がんの早期発見や早期治療につながり、寿命を延ばすことができる。
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