ニュース

グーグル、人工知能で網膜症を早期発見 医師不足に対策し失明を防止

 グーグルの開発している人工知能のプロジェクトが、糖尿病患者の網膜の画像から網膜症を自動的に判定するのに成功した。「ディープラーニング」の技術を応用しており、このプログラムを使い、眼科医と同程度の精度で、自覚症状のない初期の段階の糖尿病網膜症を発見できることを確かめた。人工知能を糖尿病網膜症の早期発見の役立てようという世界初の試みだ。
糖尿病網膜症を早期発見する技術を開発
 世界中で糖尿病網膜症が視力障害や失明の原因の上位を占めている。早期発見して治療をすれば失明を防げるが、治療が遅れたために多くの患者が失明という事態に陥り、生活の質(QOL)を大きく低下させている。

 米国では糖尿病患者の糖尿病網膜症の有病率は29%に上る。米国の治療ガイドラインでは、網膜症のスクリーニング検査を、網膜症がない場合は年に1回以上、単純網膜症のある場合は6ヵ月に1回以上受けることを推奨している。原則として、眼科医が眼底写真を撮影し、検査を行い診断する。

 しかし、糖尿病のかかりつけ医と眼科医の連携は進んでいるものの、医師の少ない地域では糖尿病患者が眼底検査を受けられる機会は少なく、糖尿病網膜症を診断できる眼科医も不足しているという課題がある。

 そこでグーグルは、「ディープラーニング」の手法を応用し、コンピュータの画像処理により、初期の糖尿病網膜症を発見する技術の開発に乗り出した。実用化すれば、糖尿病専門医や眼科医が少ない地域でも、すぐに検査を行えるようになる可能性がある。
糖尿病網膜症の早期の診断・治療が可能に
 ディープラーニングとは、システムがデータの特徴を学習して認識や分類を行う「人工知能」(AI)の手法。データの特徴をより深いレベルで学習し、特徴を高い精度で識別することが可能で、カメラで撮影した画像の認識などの応用が期待されている。

 ディープラーニングのもととなる「ニューラルネットワーク」は、脳の神経回路をまねしてデータを分類するという考えにもとづき作られている。回路の中間部分を多層から構成することで、データの特徴を多くの段階でより深く学習できるようになるという。

 グーグルの人工知能プロジェクト「ディープマインド」が開発した人工知能「AlphaGo」は昨年、囲碁のトッププロを破ったことで話題になった。グーグルは英国営保健サービス(NHS)と提携し、「糖尿病網膜症」と「加齢性黄斑変性症」という2つの疾患の検査の精度を上げる研究への応用に取り組んでいる。

 患者の眼底画像をディープマインドの人工知能が解析し、2つの疾患を早期発見する仕組みが考えられている。従来の診療は複雑であり、眼科医にとって技術と時間の必要な作業だが、人工知能を使えば早期診断が可能になり、早期に治療を開始し失明を防げるようになる可能性がある。
人工知能を臨床に応用 98%の精度で糖尿病網膜症を判定
 グーグルのリリー パン博士らの研究チームは、米国とインドの医師チームと協力し、糖尿病患者の網膜、視神経乳頭、黄斑などの画像を収集。12万8,175枚の網膜画像をもとに、ディープラーニングによる画像識別を行った。並行して米国の54人の眼科医が従来の手法で網膜症の判定を行った。

 その結果、画像の約8%にあたる4,997人の患者の9,963の画像が単純性および増殖性の糖尿病網膜症であると判定された。眼科医による判定に比べ、97.5%という高い感度で、人工知能によるディープラーニングの判定が正確であることが確かめられた。
 「人工知能による判定の精度は高いことが確かめられました。ディープラーニングのアルゴリズムを、糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫に応用する試みは可能性があることが示されました。臨床に応用するためには、さらに研究を重ねる必要がありますが、今後の研究で精度をさらに高められる可能性があります」と、研究者は述べている。

 「OCT」(光干渉断層計)による検査は、網膜の断面を映し出し、糖尿病網膜症に合併する黄斑浮腫など黄斑の異常を調べるもので、目の状態を3次元(3D)画像で調べることができる。今回の研究は眼底写真をディープマインドにより2次元(2D)で解析したものだが、3D画像で解析する研究も進めているという。

 「今回の研究は、例えば糖尿病のかかりつけ医が、初期の糖尿病網膜症のスクリーニング検査を診療所で小型のデバイスで行えるようになるなど、網膜症の早期発見につながる可能性を秘めています。医療の現場で人工知能が使えるようになれば、専門医や眼科医を必要とする患者の助けになります」と、研究者は述べている。

 今回の研究成果は、米国医師会が発行する医学誌「JAMA」に「Development and Validation of a Deep Learning Algorithm for Detection of Diabetic Retinopathy in Retinal Fundus Photographs」というタイトルで発表された。

Development and Validation of a Deep Learning Algorithm for Detection of Diabetic Retinopathy in Retinal Fundus Photographs(JAMA 2016年11月29日)
Study Examines Use of Deep Machine Learning for Detection of Diabetic Retinopathy(JAMA 2016年11月29日)
Detecting diabetic eye disease with machine learning(グーグル 2016年11月29日)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2018年05月23日
「子宮頸がん」の抗ウイルス薬の開発に成功 年内に治験を開始する予定
2018年05月23日
「ミドリムシ」からメタボを改善する成分 「痩せるホルモン」を促進
2018年05月23日
「高血圧」の治療で伝わらない説明 コミュニケーションのズレは深刻
2018年05月23日
「遺伝子検査」で糖尿病リスクが分かる 日本人4700人超を調査
2018年05月22日
【書籍プレゼント】『集団分析・職場環境改善版 産業医・産業保健スタッフのための ストレスチェック実務Q&A』を5名様にプレゼント
2018年05月22日
【報告】産保PCのこれまで活動内容をポスター発表しました(第91回日本産業衛生学会)
2018年05月21日
「血糖トレンドの"読み方":AGP」を公開 血糖トレンドの情報ファイル
2018年05月17日
敗血症性AKIにおける急性腎障害マーカー L-FABPの可能性
2018年05月16日
体重コントロールを成功させるシンプルな方法 必要なことは1つだけ
2018年05月16日
早期のアルツハイマー病「軽度認知障害」 日本人対象の研究で解明

最新ニュース

2018年05月23日
「子宮頸がん」の抗ウイルス薬の開発に成功 年内に治験を開始する予定
2018年05月23日
「ミドリムシ」からメタボを改善する成分 「痩せるホルモン」を促進
2018年05月23日
「ヒアリ」の早期発見のためのキットを開発 水際対策での効果に期待
2018年05月23日
「高血圧」の治療で伝わらない説明 コミュニケーションのズレは深刻
2018年05月23日
「遺伝子検査」で糖尿病リスクが分かる 日本人4700人超を調査
2018年05月22日
【書籍プレゼント】『集団分析・職場環境改善版 産業医・産業保健スタッフのための ストレスチェック実務Q&A』を5名様にプレゼント
2018年05月22日
食育の取り組みをエビデンスに基づいて整理、解説―農林水産省がパンフレット作成
2018年05月22日
【報告】産保PCのこれまで活動内容をポスター発表しました(第91回日本産業衛生学会)
2018年05月21日
「血糖トレンドの"読み方":AGP」を公開 血糖トレンドの情報ファイル
2018年05月17日
敗血症性AKIにおける急性腎障害マーカー L-FABPの可能性
2018年05月17日
【健やか21】パンフレット『「食育」ってどんないいことがあるの?』
2018年05月16日
体重コントロールを成功させるシンプルな方法 必要なことは1つだけ
2018年05月16日
SNSの「自殺防止相談」に月に1万件以上 「対策強化月間」に実施
2018年05月16日
早期のアルツハイマー病「軽度認知障害」 日本人対象の研究で解明
2018年05月16日
やせていても糖尿病に? 筋肉が少なく脂肪がたまると高血糖に
2018年05月16日
「睡眠障害」が高血圧・糖尿病に関連 日本で最大規模の研究
2018年05月16日
トマトのリコピンはニンニクやタマネギで調理すると吸収されやすくなる
2018年05月15日
6割強が食中毒予防で「肉は水で洗う」に効果があると誤解-東京都の実態調査
2018年05月11日
【新連載】イラストで魅せる!健康啓発「見せ方」の工夫
2018年05月10日
【健やか21】SNS等に起因する被害児童の現状と対策の掲載(警察庁)
2018年05月08日
元気高齢者を「介護サポーター」に 介護予防の観点から社会参加を促進
2018年05月08日
米国糖尿病学会「立ち上がって運動しようデー」 8つの対策で運動推進
2018年05月08日
「鰹だし」で抗がん剤の副作用を予防 血管を拡張する作用を確認
2018年05月08日
【投票企画】プルーンレシピコンテスト開催中! 栄養を効率よく吸収できる「食べ合わせ」
2018年05月07日
大豆から食べる「大豆ファースト」で食後の血糖値の急上昇を改善
2018年05月07日
従業員のいる飲食店は屋内禁煙に~東京都・受動喫煙防止条例の骨子案
2018年05月02日
新入社員の健康教育や女性の健康啓発に最適 「働く人のための健康づくりシリーズ」指導箋
2018年05月01日
健康イベント、健康教育のお土産に!!(腹囲メジャー)※在庫残り僅か※
2018年05月01日
休日の寝過ぎが体調不良の原因に 「社会的時差ぼけ」を解消
2018年05月01日
「がんとの共生を考える」へるすあっぷ21 5月号
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,145 人(2018年05月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶