ニュース
妊娠可能な女性すべてに「葉酸」を推奨 子どもの障害リスクを下げる
2017年02月02日

妊娠前から積極的に取るべき栄養素に「葉酸」がある。米国の専門委員会は、出産が可能な、または妊娠を考えているすべての女性は、葉酸サプリメントを摂取するべきだと発表した。
葉酸は妊娠の1ヵ月以上前から必要
妊娠するとほとんどのビタミンの必要量が増えるが、特にビタミンB群のひとつである「葉酸」は重要だ。葉酸を妊娠前から妊娠初期の間に摂取することで、二分脊椎症などの「神経管閉鎖障害」の発症リスクを減らすことが期待できるからだ。
「神経管閉鎖障害」は、脳や脊髄のもととなる「神経管」と呼ばれる管状の細胞の一部が塞がり、脳や脊髄が正しく成長できなくなる先天性障害。
厚生労働省は、妊娠の1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月までの間、食品からの摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mg(400μg)の葉酸を摂取すること、特に神経管閉鎖障害の子どもを妊娠したことのある女性は医師の管理下で葉酸を摂取することを勧めている。
また、抗てんかん薬などを服用している場合にも葉酸が不足しやすくなるので、医師の管理下での葉酸摂取が勧められる。
葉酸を豊富に含む食品は以下のものがある。・ ホウレンソウ、ブロッコリー、アスパラガス、芽キャベツなどの緑黄色野菜
・ 精製されていない全粒粉や玄米などの穀類
・ アーモンド、カシューナッツ、クルミなどのナッツ類
・ オレンジなどの果物 葉酸は水溶性で熱に弱く、調理によって多くが失われてしまうので、サプリメントの使用も勧められている。
葉酸は妊娠前から積極に摂取した方が良い
米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、出産が可能な、または妊娠を考えているすべての女性に、葉酸サプリメントの摂取を推奨するという勧告を米国医師会雑誌「JAMA」に発表した。
米国における妊娠例の約半数は計画外妊娠であり、妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠可能な全ての女性に対して、葉酸のサプリメントを毎日摂取するようアドバイスするべきだとしている。
報告書によると、米国の女性の大半は効果を得るのに必要な量の栄養強化食品を摂取していない。出産適齢期の米国女性のうち、推奨量の葉酸を毎日摂取している人は全体の4分の1程度であることが判明した。
米疾病対策センター(CDC)によると、「神経管閉鎖障害」は先天性奇形症の中でもっとも多い疾患のひとつで、米国の生児出生10万件につき約6.5件で発症している。
日本では欧米に比べ、神経管閉鎖障害の発症頻度は低いとされるが、増加傾向にあるとも報告されている。また、食生活の多様化により、食物摂取の個人差が大きくなり葉酸摂取が不十分な妊婦が増加しているおそれがある。
一般的に妊娠に気づくのは早くて妊娠5週頃からだ。母子手帳をもらえるのは医師の診断後なので、葉酸について知る頃には摂取すべき時期を一部過ぎているおそれがある。
妊娠する可能性がある人や妊娠を望んでいる人は、葉酸を妊娠前から取り続けた方が良い。
ただし、1日1mgを超えると別の疾患を引き起こすリスクが出てくるので取り過ぎは避けたい。また、マルチビタミン剤を摂るときは、ビタミンAについては、妊娠初期に過剰摂取すると先天異常の原因となる可能性が指摘されている。
サプリメントの使用には注意が必要だ。気になる人は医師に詳しく相談しよう。
妊娠と薬情報センター:妊娠中・授乳中のお薬Q&A(国立成育医療研究センター)Folic acid supplementation recommended for prevention of neural tube defects(The JAMA Network Journals 2017年1月10日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
- 2025年02月10日
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 2025年01月23日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月06日
-
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」 - 2024年12月24日
-
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~ - 2024年12月17日
-
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ