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糖尿病の人は「膵臓がん」を発症しやすい 早期発見プロジェクトが成果

 糖尿病をもっている人が突然、血糖値コントロールが不安定になったり、それまで糖尿病ではなかった方がはじめて診断されたりしたときには注意が必要だ。背後に「膵臓がん」が隠れているケースが、予想以上に多いという研究が発表された。
 「膵臓がん」を早期発見して治療をするための対策も進められており、成果が出はじめている。
糖尿病の人は膵臓がんを2倍発症しやすい
 膵臓がんで亡くなる人の数は増えている。がんの医療は進歩しているが、膵臓がんの5年生存率は約10%と治療が難しいがんだ。日本でも毎年3万人以上が膵臓がんで亡くなっている。

 膵臓は体の深部に位置し、胃や腸、肝臓など他の臓器に囲まれており、がんが発生しても見つけるのが難しい。また、早い段階では特徴的な症状もない。

 そのため、胃がんや大腸がんのように早期のうちに見つけることは難しく、膵臓がんとわかったときにはすでに進行していることが多い。

 糖尿病の人では他の人に比べ膵臓がんが多いことが知られている。日本膵臓学会によると、糖尿病患者が膵臓がんを発症するリスクは、糖尿病でない人に比べ約2倍高い。
糖尿病は膵臓がんの重要なサイン
 糖尿病があることで膵臓がんになりやすくなるのか、それとも膵臓がんの合併症として糖尿病が出てくるのか、良く分かっていない。

 そこでフランスなどの国際研究チームが、2型糖尿病と膵臓がんの関連について詳しく調べた。研究チームは、ベルギーとイタリアで実施された、約100万人の2型糖尿病を対象とした後向きコホート研究の結果を解析した。

 その結果、がんを発症しなかった患者に比べると、膵臓がんを発症した患者は、短期間で血糖コントロールが悪化し、経口血糖降下薬をインクレチン関連薬やインスリンに切り替えた患者で多かった。

 「糖尿病は膵臓がんの重要なサインです。はじめて糖尿病になったときや、糖尿病の症状が突然悪化した場合は、背後に膵臓がんが隠れている場合があるので、注意が必要です」と、フランスのリヨン国際予防研究所のアリス ケックラン氏は言う。
急に血糖コントロールが悪化 膵臓がんが原因?
 調査の対象となったのは、ベルギーで2008~2013年に治療を受けた36万8,377人、イタリアのロンバルディで2008~2012年に治療を受けた45万6,311人の2型糖尿病患者。研究チームは大規模な処方情報データベースを分析した。

 膵臓がんと診断されたのは、ベルギーでは885人、ロンバルディでは1,872人だった。患者の50%は膵臓がんと診断された1年以内に2型糖尿病を発症していることが明らかになった。

 膵臓がんと診断された患者は、ベルギーでは25%が、ロンバルディでは18%が、90日以内に2型糖尿病と診断されていた。

 詳しく解析すると、服用している経口血糖降下薬をDPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬に切り替えた患者では、その3ヵ月以内に膵臓がんと診断された割合が3.3倍に上昇した(95%信頼区間[CI] 2.0~5.5)。

 また、経口血糖降下薬をインスリンに切り替えた患者では、その3ヵ月以内に膵臓がんと診断された割合が11.9倍に上昇した(95%信頼区間[CI] 10.4~13.6)。

 「糖尿病のある人が、急に血糖コントロールが悪化した場合は、膵臓がんが原因かもしれません。そうした場合は、医師に相談しがん検診で詳しく調べることをお勧めします」と、ケックラン氏は言う。
膵臓がんを早期発見し生存率を向上 「尾道プロジェクト」
 糖尿病は膵臓がんの重要な危険因子だが、日本膵臓学会によると、膵臓がんと診断された患者が、がん検診を受診した理由として、糖尿病の悪化を挙げた割合は1.5%と非常に少ない。

 しかし、近年はがん検診の普及や検査法の進歩によって、膵臓がんの早期発見が可能になってきている。

 広島県尾道市で行われている「尾道プロジェクト」は、膵臓がんを早期発見し、がん生存率を大幅に向上するのに成功した例として、全国から注目されている。

 「尾道プロジェクト」は、広島県の尾道市医師会が、診療所と膵臓がんの精密検査ができる中核病院が連携した、膵がん早期診断プロジェクトだ。

 このプロジェクトは、全国に先駆けて構築された尾道独自の地域包括ケアシステムを生かしたもので、成果を上げている。
膵臓がんの検査は進歩している
 「尾道プロジェクト」では、糖尿病などの危険因子のある人に、かかりつけ医が「腹部超音波検査」を行う。

 「腹部超音波検査」(エコー)は、健診や人間ドックで膵臓を調べる検査としてもっとも一般的だ。膵臓がんを発症すると、膵体部や膵尾部の膵管の拡張が起こりやすい。

 この検査で膵臓がん自体はみつけくいが、簡便で患者の体の負担が少ないというメリットがある。かかりつけ医により、膵臓がんが疑われた患者は、中核病院で詳しい検査を受けられる。

 また、「超音波内視鏡」(EUS)検査は、超音波(エコー)装置をともなった内視鏡で、消化管の中から消化管壁や臓器などの診断をおこなう検査。胃カメラと同じように口から内視鏡を挿入し、先端から発生する超音波を膵臓に当て、がんがないかを調べる。

 EUS検査であれば、腹部エコーよりも鮮明な画像が得られ、2cm以下の小さいがんや、がんが見えない段階でも起こる膵管の異常を発見できる。

 プロジェクトでは、膵臓がんの危険因子をもつ患者の多くが検査を受け、それまで難しかった早期発見ができた患者が増えた。その結果、5年生存率は20%まで、3年生存率は20〜30%程度まで改善した。
少量の採血だけで膵臓がんを発見
 日本の金沢大学発のバイオベンチャー「キュービクス」は、少量の採血だけで膵臓がんを見つけだす新たな検査手法を開発し、金沢大学付属病院などと共同で臨床試験に取り組んでいる。

 金沢大医薬保健研究域の金子周一教授らが開発した膵臓がんを血液で診断する新たな検査キットは、がんの有無を血中にあるRNAという物質の量の変化を遺伝子レベルで測定する「マイクロアレイ血液検査」法を応用している。

 体の中に異物が入ってきたり、がん細胞ができると、体が反応しそれを排除しようとする。血液からの排除信号をとらえ、そのもとになるRNAの働き方のパターンを数値化して、がんを発症しているかを判定するのがマイクロアレイ血液検査だ。

 この検査方法であれば、CT(コンピュータ断層撮影)、MRT(磁気共鳴画像)、PET(陽電子放射断層撮影)でさえも見つけられない早期のがんを発見することができるという。

 検査費用は1回当たり3万~3万5,000円を見込み、2019年中の実用化を目指している。

 現在のがんの検診には、身体的負担、時間的拘束といった課題があり、地域によっては検診率が伸び悩んでいる。この検査方法であれば、血液だけの検査のため課題を解決でき、がん検診の受診率向上をはかれると期待されている。

金沢大学大学院先進予防医学研究科(システム生物学分野)

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