ニュース
中年成人の肥満・メタボの解消にオンラインの保健指導が役立つ 社会的サポートは多ければ多いほど嬉しい
2024年03月04日

スマホアプリなどを活用したオンラインの保健指導や社会的サポートが、肥満や過体重の35~55歳の中年成人の減量やメタボ解消に有用であることが明らかになった。
「オンラインのプログラムを利用し、専門家によるアドバイスやサポートを受け、自分と同じように減量に取り組む仲間をつくり交流すれば、より幸せで健康的な生活をおくれるようになる可能性があります」と、研究者は述べている。
オンラインの保健指導や社会的サポートは有用
スマホアプリなどを活用したオンラインの保健指導や社会的サポートが、肥満や過体重の35~55歳の中年成人の減量やメタボ解消に有用であることが、米国のミズーリ大学の研究で明らかになった。 肥満は、2型糖尿病・高血圧・心臓病・脳卒中・肝臓病・がん・睡眠時無呼吸症候群など、深刻な健康上の障害を引き起こす。米国では肥満は、予防可能な死亡原因として、喫煙に次ぐ第2位にあげられている。米国では、20歳以上の成人の42.5%が肥満だという。 ウォーキングなどの運動の習慣化や、食事スタイルの改善、体重管理など、健康増進のために目標を立てる人は多いが、その多くは実行できていない。 「肥満のある人は、肥満に関連した身体的な不調だけでなく、うつ病のリスクが高く、自尊心の低下や社会的孤立などを経験することも多く、メンタルヘルス不調のリスクが高いことが知られています」と、同大学の健康科学部のマンスー ユ教授は言う。 「しかし、オンラインのプログラムを利用し、専門家によるアドバイスやサポートを受け、自分と同じように減量に取り組む仲間をつくり交流すれば、より幸せで健康的な生活をおくれるようになる可能性があります」としている。オンライン指導を成功させるための3つの要素
研究グループは今回、減量のためのオンラインによる保健指導を実施した研究を解析した。過体重または肥満の中年成人を対象に、2000年~2019年の20年間に実施され、6ヵ月以上の介入を行い70%以上が継続した、ランダム化比較試験(RCT)を含む、29件の研究を解析した。 その結果、オンラインの保健指導で成功しやすいのは、- 生活改善のための情報を提供し、食事や運動などの自己管理のためのツールを提供する
- 参加者がオンラインで自分と同じように減量に取り組んでいる仲間をみつけ、情報を共有できるグループチャットの機能がある
- 医療の専門家が参加者の疑問や質問に答えることができる
生活改善プログラムを成功させるための5つヒント
減量や健康増進のための生活改善プログラムを成功させるために、ユ教授は次の5つのことがヒントになるとしている。- 食事や運動などの生活スタイルの改善に取り組んでいることを、家族・友人・恋人・同僚に話し共有する。
- ウォーキングなど、取り組みやすい運動や身体活動をみつけて、日課に組み込む。
- オンラインで、生活改善の取り組みの進捗について知らせ、アドバイスや励ましの言葉をもらう。
- 自分と同じように健康増進や減量に取り組んでいる仲間をみつけ、たとえば毎日どれだけ歩いたかといった情報を共有し、励ましあう。
- 食事や運動などについて、分からないことや上手くいかないことがあれば、専門家に相談しアドバイスをもらう。
オンラインの保健指導に肥満やメタボを改善する効果
減量や体重管理を支援するように設計されたオンラインの保健指導プログラムは効果的という研究を、英国のインペリアル カレッジ ロンドンも発表している。
研究は、米国・欧州・東アジア・オーストラリアなどで行われた、計1,884人の参加者を対象に実施された12件の研究を解析したもの。オンラインの保健指導プログラムの利用により、全体で体格指数(BMI)の0.64の減少を達成した
「ソーシャルメディアを使用した介入は、いつでもどこでも日常で使用でき、効果的かつ実用的です。対人関係による介入や支援に比べて、コストがはるかに安くなる可能性もあります」と、同大学で医療政策を研究しているフータン アシュラフィアン氏は言う。
「ソーシャルメディアを効果的に活用すると、指導者は同時に多くの人にアドバイスやサポートを提供できるようになり、利用者はコミュニティの一員であるという感覚を得ることもできます」としている。
ただし、潜在的なプライバシーの問題や、患者がスマートフォンアプリの操作やインターネットに通じている必要があるなど、マイナス面も考えられるため、すべての人に適しているわけではないとも指摘している。
「肥満やメタボの改善や治療にソーシャルメディアを利用することで、参加者はより積極的になり、生活改善や治療に主体的に参加できるようになると期待されます。これが肥満に対する唯一の解決策ではないにしても、戦略のひとつの要素として検討する必要があります」としている。
Effectiveness of Different Online Intervention Modalities for Middle-Aged Adults with Overweight and Obesity: A 20-Year Systematic Review and Meta-analysis (Journal of Prevention 2023年12月20日)
Social networking can help people lose weight (インペリアル カレッジ ロンドン 2014年9月8日)
Social Networking Strategies That Aim To Reduce Obesity Have Achieved Significant Although Modest Results (Health Affairs 2014年9月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月25日
- ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
- 2025年02月25日
- 緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月17日
- 肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
- 2025年02月17日
- 中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
- 2025年02月17日
- 高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」