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【乳がん検診】40歳になったら毎年受けるとリスクは最小限に 乳がん検診は進歩している
2024年03月25日

女性は40歳になったら、乳がん検診を毎年受け、少なくとも79歳まで継続すると、死亡リスクはもっとも減少し、寿命はもっとも長くなるという調査結果が発表された。
マンモグラフィ検査は偽陽性が出ることがある。偽陽性は、実際にはがんではないのに、がんの疑いがあると診断されること。陽性と判定されると、より多くの乳がんの精密検査が求められる。
「がん検査は、リスクがともなうことがありますが、ほとんどの女性にとって対処可能なものです」と、専門家は指摘している。
乳がん検診の精度を高めるための技術開発も進められている。乳がんを高感度に検出でき、偽陽性を大幅に低減し、乳房圧迫もなくした、新しい乳がんの検査法が開発されている。
40歳になったら乳がん検診を毎年受けると乳がんリスクは最小限に
女性は40歳になったら、乳がん検診を毎年受け、少なくとも79歳まで継続すると、乳がんリスクを最小限に抑えられ、死亡率も最大限に下げることができるという調査結果を、北米放射線学会(RSNA)が発表した。 女性でもっとも多いがんである乳がんは、患者数が年々増加している。早く発見して適切な治療をすれば、治る可能性が高いがんなので、早期発見のためにマンモグラフィ検査や超音波検査などの検査を受けることが大切になる。 日本でも、自治体による乳がん検診は、40歳以上の女性を対象に2年に1回行われている。また、乳房に何か変化がないか、ふだんから自分でチェックすることも効果がある。40~79歳の女性が乳がん検診を毎年受けるとリスクはもっとも低下
研究グループは今回、米国立がん研究所が支援している「CISNET」(がん介入・監視モデリング ネットワーク)に登録された、乳がん検診と医療情報のデータを解析した。 乳がんによる死亡リスク、生存年数、死亡を回避するための検診のメリット、必要のない生検などのリスクを、4つの異なるシナリオで比較した。 乳がん検診を、(1) 50~74歳の女性が2年に1度受ける場合、(2) 40~74歳の女性が2年に1度毎年受ける場合、(2) 40~74歳の女性が毎年受ける場合、(3) 40~79歳の女性が毎年受ける場合を比べた。 その結果、40~79歳の女性が乳がん検診を毎年受けると、死亡リスクはもっとも低く、41.7%減少することが示された。マンモグラフィ検査の偽陽性も6.5%、必要のない生検も0.88%と、もっとも少なかった。乳がんは早期発見で治療が可能 がん検診を受けることが大切
「乳がん検診を受けるのを40歳からはじめて、少なくとも79歳まで継続すると、死亡リスクはもっとも減少し、死亡をもっとも多く回避でき、寿命はもっとも長くなることが示されました」と、米ダートマス大学医学部放射線医学のデブラ モンティチョロ教授は言う。 米国では乳がんは、女性の死亡原因となるがんのなかで2番目に多い。マンモグラフィ検査を継続して受けることで、乳がんによる死亡リスクを40%減少できることが証明されているにもかかわらず、がん検診を毎年受けている女性は50%以下だという。 マンモグラフィ検査は偽陽性が出ることがあり、追加の画像検査が必要になったり、良性であるのに生検が行われることがある。そのことが、メリットとデメリットのバランスを重視する女性が、検診を避ける理由のひとつになっている。 偽陽性は、実際にはがんではないのに、がんの疑いがあると診断されること。陽性と判定されると、より多くの乳がんの精密検査が求められる。 乳がん検診の進歩も求められている。通常のマンモグラフィ検査の再現率は10%未満だが、新たに開発された「乳房トモシンセシス(3Dマンモグラフィ検査)」であれば、再現率は6.5%に大幅に改善するとしている。 「がん検査は、リスクがともなうことがありますが、それは致死的ではなく、ほとんどの女性にとって対処可能なものです」と、モンティチョロ教授は指摘する。 「しかし、乳がんが進行すると、しばしば致死的になります。乳がんは早期に発見できれば治療が可能であり、手術や化学療法の必要性を減らすことができます。乳がんを早期発見するために、検診を毎年受けることは良い考えです」としている。乳がん検診は進歩している 偽陽性を大幅に低減
乳房圧迫もなくして負担軽減
乳がん検診の精度を高めるための技術開発も進められている。北米放射線学会(RSNA)が発表した別の研究によると、革新的な乳房画像技術により、がんを高感度に検出できると同時に、偽陽性の可能性が大幅に低減できる。
マンモグラフィは乳がんの早期発見に有効なスクリーニング方法だが、乳房組織が密集している場合は精度が低下する。これは、とくに20~40歳代の女性で多くみられる高濃度乳房によるものが多い。そうした女性は、マンモグラフィ検査の後に、MRI(磁気共鳴画像)検査などが必要となることがある。
陽電子放射乳房撮影(PEM)は、マンモグラフィと同等の放射線量で、診断性能を向上させる新しい分子イメージング技術だ。
研究では、乳がんと診断された女性25人(年齢中央値52歳)が、PEMによる検査を受けたところ、浸潤がんのうち96%を識別でき、MRIと同等の精度があることが分かった。偽陽性率もわずか16%で、MRIの62%よりも大幅に優れていた。
「PEMは、高い精度と低い偽陽性率に加えて、MRIに比べて必要のない検査を防げる可能性もあり、医療費の削減につながります。さらには、この新しい技術は、女性にとって不快なことが多い乳房圧迫を必要とせずに、従来のマンモグラフィと同等の放射線量を照射できるように設計されています」と、米トロント大学のビビアン フレイタス氏は言う。
「近い将来に、乳がんのスクリーニング検査を変革し、画像診断法を補完または改善し、乳がん治療を大きく前進できると期待しています」としている。
乳房圧迫もなくして負担軽減
Outcomes of Breast Cancer Screening Strategies Based on Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network Estimates (Radiology 2024年2月20日)
Novel Technique Has Potential to Transform Breast Cancer Detection (北米放射線学会 2024年2月9日)
Breast Cancer Detection Using a Low-Dose Positron Emission Digital Mammography System (Radiology: Imaging Cancer 2024年2月9日)
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