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ウォーキングは脳も改善する 脳の記憶力と思考力を改善 認知症も予防
2017年03月29日

最近の脳科学で、運動をすることで、脳に対しても直接的な改善効果を得られることが分かってきた。運動の効果は、筋肉や骨が鍛えられたり、心肺機能が改善するといった身体的な改善だけではない。
インスリン抵抗性は脳にも作用
運動をするとブドウ糖がすぐ消費され、血糖値が下がる。さらに運動を習慣化すると、血中のブドウ糖の量をコントロールするインスリンが効きやすい体質になる。加えて、運動には「肥満を解消できる」「血圧が下がる」「中性脂肪が減る」「腎臓病を予防・改善できる」など、さまざまな利点がある。
運動の脳への効果に、「インスリン抵抗性」が関わっていることが、最近の研究で分かってきた。
2型糖尿病の原因のひとつであるインスリン抵抗性は、肥満や運動不足などが原因でインスリンが効きにくくなり、ブドウ糖が細胞に十分取り込まれなくなった状態をさす。
インスリン抵抗性があると、筋肉や肝臓、脂肪細胞でブドウ糖を吸収されにくくなり、血糖値が上がりやすくなる。すると血糖値を下げようと、膵臓はインスリンをさらに分泌する。
インスリン抵抗性は、身体的な作用だけでなく、脳にも作用する。インスリン抵抗性があると脳の記憶力な認知力などのパフォーマンスが急速に低下するおそれがあることが、イスラエルのテルアビブ大学の研究で明らかになった。
インスリン抵抗性があると認知能力が低下
「インスリン抵抗性は、運動を習慣として行うこと、栄養バランスの良い健康的な食事を摂ること、標準体重を維持することで改善できます。そうした習慣は脳の健康にとっても良いのです」と、テルアビブ大学医学部のデイビッド タンネ教授は言う。
研究には心血管疾患の既往のある平均年齢57.7歳の489人の患者が参加した。空腹時血糖値と空腹時インスリン値から算出されるHOMA-IRの値はインスリン抵抗性の指標となる。
研究チームは参加者を20年以上、追跡して調査し、研究開始時と5年ごとにHOMA-IRの値を測定した。同時に、記憶力や学習力、注意力、視覚的な空間把握などを調べる認知機能能力を行った。
その結果、HOMA-IR値が高い、つまりインスリン抵抗性のある患者では、認知能力が低下していることが判明した。HOMA-IR値の上位4分の1の患者では、下位4分の3の患者に比べ明らかに認知能力が低下していた。
「高齢になると認知症が増えます。インスリン抵抗性を改善し脳を保護することはいっそう重要となります」と、タンネ教授は指摘している。
脳の記憶力と思考力を改善

ウォーキングを続けるために
ウォーキングなどの運動を続けるために、研究者は次のことを勧めている。
・ 「ウォーキングを毎日30分行う」「週に5日行う」など目標をつくる。
・ 運動をしたら、それを記録に付ける。自分がどれだけ運動をしたかが分かるとやる気につながる。現在は、運動のためのスマートフォンアプリが多数出ているので、それを利用するのも効果的だ。
・ 運動を目的としたサークルやクラブに入る。仲間がいれば、運動は続けやすい。
・ 運動を指導してくれる人を見つける。専門家は効果的で長続きする運動のやり方を教えてくれる。
ウォーキングが認知症予防に
運動を習慣として続けると、「インスリン様成長因子」(IGF)が分泌されるようになる。IGFは、インスリンに似た構造のホルモンで、成長ホルモンや栄養状態の影響を受けながら増減し、細胞の増殖や分化などを促進する作用がある。
IGFは、BDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促進し、脳の神経細胞(ニューロン)や、脳に栄養を送る血管をつくり、成長を促すことで、脳の記憶と学習機能に重要な役割を果たすと考えられている。
「運動には認知症の予防の効果があると期待しています」と、マクギニス氏は述べている。認知症は世界規模で増えており、4秒に1人が認知症を発症しており、2050年までに世界で1億1,500万人以上が発症すると予測されている。
Insulin Resistance May Lead to Faster Cognitive Decline(テルアビブ大学 2017年3月21日)Regular exercise changes the brain to improve memory, thinking skills(ハーバード大学医学大学院 2014年4月9日)
Insulin Resistance and Future Cognitive Performance and Cognitive Decline in Elderly Patients with Cardiovascular Disease(Journal of Alzheimer's Disease 2017年3月21日)
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