良い睡眠は肥満や高血圧のリスクを減らす 日本人の睡眠は足りていない 3つの方法で改善

睡眠を十分にとれていない人は、肥満や高血圧のリスクが高いことが明らかになっている。
睡眠で休養をとることは、免疫力を強化し、血圧値や血糖値を改善し、心臓病や脳卒中のリスクを減らすのに有用だ。
睡眠を改善するために3つの方法が効果的と、専門家はアドバイスしている。
日本人の睡眠は足りていない
OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本人の睡眠時間は、加盟国30ヵ国のなかでもっとも短いことが示されている。
厚生労働省の「2023年国民健康・栄養調査」によると、1ヵ月間に睡眠で休養がとれているという人の割合は74.9%で、2009年以降はすべての年齢層で減少傾向が続いている。
1日の睡眠時間の平均が6時間未満の人の割合は、男性で38.5%、女性で43.6%で、男性の30~50歳代、女性の40~60歳代で4割を超えている。
「健康日本21(第三次)」では、睡眠時間を6~9時間(60歳以上の人は6~8時間)とれている割合を60%に引き上げることが目標にされている。
睡眠不足は肥満のリスクを高める
睡眠を含めた生活リズムが乱れている人は、肥満や過体重になりやすいことが明らかになっている。
米オレゴン健康科学大学の研究グループは、体格指数(BMI)が25以上の太りすぎや肥満の男女30人を対象に、7日間の睡眠を記録してもらった。唾液サンプルを採取し、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌についても調べた。
メラトニンは、毎日の睡眠やホルモン分泌などの概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に関わっている。一般的に、メラトニンの分泌は、昼間に低く夜間に高くなる日内変動を示す。
夜になると自然にメラトニンは増え、眠りを誘うが、そうした眠りの信号を無視した生活をしている人は、肥満になりやすいことが調査では分かった。
とくに生活リズムが乱れていて、十分な睡眠をとれていない男性は、内臓脂肪が多く、中性脂肪の値も高く、メタボリックシンドロームのリスクが高かった。
「メラトニンの分泌に合わせた、睡眠と覚醒のリズムが規則正しい生活をしている人は、肥満のリスクが少なく健康である傾向があることも分かりました」と、同大学労働衛生科学研究所のアンドリュー マクヒル氏は言う。
「生活リズムを整えることで、睡眠を改善できる可能性があります。良い睡眠習慣を身につけることが重要です」としている。
睡眠をとることは高血圧の改善にも必要

睡眠を十分にとることは、高血圧を改善するためにも必要であることが、別の研究で明らかになった。
研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立心肺血液研究所(NHLBI)が発表したもの。研究グループは、18~91歳の成人1,100人以上が参加した2件の研究のデータを解析した。
その結果、睡眠時間がひと晩に7時間未満と寝不足の人は、7時間以上と睡眠を十分にとれている人に比べて、24時間の収縮期(最高)血圧の平均が、1件目の研究で12.7mmHg高く、2件目の研究で4.7mmHg高かった。
「時間やタイミング、質が適切である睡眠は、免疫力を強化し、血圧値や血糖値を改善し、心臓病や脳卒中のリスクを減らすなど、驚くべき効果があります」と、国立睡眠障害研究センターのマリシュカ ブラウン所長は言う。
「睡眠は体にとって魔法の薬のようなものだという話を聞いたことはありませんか。良い睡眠をとることを習慣にするのは、健康を維持するために重要です」としている。
睡眠を改善する3つの方法
睡眠を改善する方法 1 |
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運動をする習慣があると睡眠が改善 |
研究グループは、平均年齢が12歳の小児1,168人と、平均年齢が44歳のその保護者1,360人を対象に調査を実施。その結果、中強度から高強度の運動をする習慣のある人は、睡眠障害が少なく、睡眠の質が良く、疲労が軽減されている傾向があることが分かった。
「良い睡眠をとることが大切であることを、ほとんどの人は知っていますが、ぐっすり眠るのに苦労し、睡眠の悩みをもっている人は多くみられます」と、同大学で健康科学・看護学を研究しているリサ マトリチアーニ氏は言う。
「大人も子供も、適度な運動を行うことを習慣にすると、睡眠の質が向上し、疲労感も減ることが分かりました」。
「睡眠を直接妨げる習慣をやめることも大切です。朝起きたら朝日を浴びて体内時計を調整し、日中に起きているときはなるべく活動的に過ごすことなども必要です」としている。
睡眠を改善する方法 2 |
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夜は高カロリーのジャンクフードを食べないようにする |
「これまでの疫学研究でも、私たちが食べるものは、睡眠に影響することが分かっています。不健康な食事と睡眠不足は、どちらも公衆衛生上のリスクを高めます」と、同大学で細胞生物学を研究しているジョナサン セデルナエス氏は言う。
研究グループは、15人の標準体重の男性を対象に、研究室で睡眠を数日間とってもらう試験を行った。カロリーは同じだが、健康的な食事と不健康な食事をランダムな順番でとってもらい、睡眠への影響を調べた。
その結果、参加者が不健康な食事をしたときは、健康的な食事をしたときに比べて、深い睡眠を示す徐波活動が少なくなることが分かった。
「基本的に、夜に不健康な食品を食べると、睡眠が浅くなることが示されました。ジャンクフードの多くは、糖質と飽和脂肪酸が多く、食物繊維は少なく、高カロリーです。睡眠を改善するために、健康的な食事をとることも大切です」と、セデルナエス氏は指摘している。
睡眠を改善する方法 3 |
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就寝前にスマホやタブレットなどの画面を見ない |
「ベッドに入ってからスマートフォンなどの画面を見ると、睡眠が妨げられることが分かりました」と、ニュージーランドのオタゴ大学糖尿病・肥満研究センターのブラッドリー ブロスナン氏は述べている。
「そうしたデバイスをベッドのまわりに置かないようにして、ベッドのなかでは使用しないようにすると、睡眠を改善できる可能性があります」としている。
研究グループは、11~14歳の若年者85人を対象に、胸にボディカメラを装着してもらい、就寝の3時間前から就寝後の行動を1週間にわたり記録した。
その結果、若年者の99%が就寝前の2時間以内にスクリーンを使用し、半数以上が就寝後にもスクリーンを使用していた。とくに就寝後にもスマホやタブレットを見ていた人は、睡眠が妨げられ、睡眠時間も短いことが分かった。
令和5年「国民健康・栄養調査」の結果 (厚生労働省 2024年11月25日)
健康づくりのための睡眠ガイド2023 (厚生労働省)
Good sleep habits important for overweight adults, OHSU study suggests (オレゴン健康科学大学 2024年8月23日)
Circadian alignment, cardiometabolic disease, and sex specific differences in adults with overweight/obesity Get access Arrow (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2024年8月20日)
The link between sleep and blood pressure: New research sheds light on sex differences (米国国立心肺血液研究所 2024年11月26日)
Sleep duration and 24-hour ambulatory blood pressure in adults not on antihypertensive medications (Journal of Clinical Hypertension 2018年10月30日)
Healthy sleep needs a healthy day: boost exercise to beat your bedtime blues (南オーストラリア大学 2024年3月1日)
Time use and dimensions of healthy sleep: A cross-sectional study of Australian children and adults (Sleep Health 2024年1月9日)
Junk food may impair our deep sleep (ウプサラ大学 2023年5月30日)
Exposure to a more unhealthy diet impacts sleep microstructure during normal sleep and recovery sleep: A randomized trial (Obesity 2023年5月28日)
Keep devices out of bed for better sleep - study (オタゴ大学 2024年9月4日)
Screen Use at Bedtime and Sleep Duration and Quality Among Youths (JAMA Pediatrics 2024年9月3日)


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