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運動とメンタルヘルスの深い関係 コロナ禍に活動的だった人はポジティブな感情を維持 運動は楽しく続けられることも大切

 新型コロナが流行し社会的な活動を制限されていた期間に、抑うつ気分を経験した人は、その後も活動が低下していることが、調査で明らかになった。

 反対に、期間中に身体的に活発であったり、活動量を減らないよう対策していた人は、その後もポジティブな感情を維持していることも示された。

 ウォーキングなどの運動に取り組むことで、うつ病や不安症を軽減できることも示されている。

 「運動を勧める保健指導を行うときは、個人の好みや能力などについても考慮し、運動を楽しく持続できるようにすることも重要です」と、研究者は指摘している。

身体活動とメンタルヘルスはポジティブな循環を形成

 新型コロナが流行し社会的な活動を制限されていた期間に、抑うつ気分を経験した人は、その後も活動が低下していることが、フィンランドのユヴァスキュラ大学の調査で明らかになった。

 反対に、期間中に身体的に活発であったり、活動量を減らないよう対策していた人は、その後もポジティブな感情を維持している傾向も示された。

 「この結果は、身体的に活発なライフスタイルを維持することが、メンタルヘルスを良好に保つためにも役立つことを示唆しています。身体活動とメンタルヘルスは、ポジティブな循環を形成していると考えられます」と、同大学でヘルスケア科学を研究しているティナ サビカンガス氏は述べている。

運動に取り組んでいる人はメンタルに対するプラス効果が大きい

 調査は、同大学老年学研究センターとスポーツ・健康科学部が実施したもの。研究グループは、60~88歳の計434人の男女が参加した、2020年4月~2021年7月および2020年4月~6月に実施された2件の調査研究のデータを解析した。

 参加者のメンタルヘルスの指標を調べたところ、身体活動の頻度が高いことと、肯定的な感情が高いこととは関連しており、身体活動が減少している人はうつ症状が多いことなどが示された。この傾向はとくに70歳以上の高齢者で顕著だった。

 「フィンランドではコロナ禍に、夜間外出の禁止令は発令されなかったものの、感染リスクの高い高齢者は、活動が厳しく制限されました。それだけに、運動や身体活動に取り組んでいた人では、メンタルヘルスに対するプラスの効果が大きかった可能性があります」と、サビカンガス氏は指摘する。

 「社会的な緊急事態であっても、活動的なライフスタイルを促進することは、心の健康をサポートするためにも重要です」としている。

運動がうつ病や不安症のリスクを軽減
運動は個人に合わせて楽しく続けられることも大切

 ウォーキングやサイクリングなどの運動・身体活動に取り組むことで、うつ病や不安症を軽減できることが、英国のアングリア ラスキン大学などによる別の研究で示されている。

 運動に取り組むことで、うつ病のリスクは23%、不安症のリスクは26%、それぞれ減少することが分かった。

 一方で、長時間のランニングなどの高強度の運動は、一部の人ではストレスに関連する反応を強めることも示された。運動は個別に最適化したものに取り組むことが利益をもたらすことが示唆された。

 研究グループは、メンタルヘルス不調などと運動・身体活動との関連について調査した、7件の前向き/コホート研究をメタ解析した。

 「一定の速度でのウォーキングやサイクリングなど、低強度から中強度の運動を習慣とすることは、メンタルヘルスに対しても有益であることが示されました」と、同大学公衆衛生学部のリー スミス教授は言う。

 「運動を勧める保健指導を行うときは、個人の好みや能力などについても考慮し、個人に合わせて調整し、運動を楽しく持続できるようにすることも重要です」としている。

健康的な習慣を身につけるために2ヵ月から1年が必要
あきらめないで続けることが大切
 南オーストラリア大学による、別の新しい研究では、健康的な食事や運動などのライフスタイルは、1度失われてしまうと、取り戻すのに、考えられている以上の時間が必要になることが示された。

 健康的な習慣を身につけるには、約2ヵ月の時間が必要で、定着するまでには最大で1年近くの時間を要することが示された。

 「オーストラリアでも、肥満症、2型糖尿病、心臓病、肺疾患、脳卒中などの疾患が、医療の負担の多くの部分を占めています。これらは、健康的なライフスタイルにより予防・改善が可能であることは多くの人に知られていますが、実行に移すのは難しいと感じている人も多くいます」と、同大学医療・ヒューマン行動学部のベン シン氏は言う。

 研究グループは、平均年齢が21.5~73.5歳の男女計2,601人を対象とした計20件の研究のデータを解析した。

 その結果、▼健康的な食事、▼運動を行う習慣、▼健康的な体重の管理などに取り組んだ人は、そうした健康的な習慣を形成するまでに要した時間が、4日からほぼ1年までと大きなばらつきはあるものの、平均して約2ヵ月以内にはじまり、最大で335日かかることが示された。

 「多くの人は、健康的な習慣を身につけるため、3週間もあれば十分と感じていますが、実際には、もっと長い時間がかかることが示されました」と、シン氏は指摘する。

 「3週間が経過した時点で、運動を行う習慣や、食べすぎないようにする習慣などが身に付いていないという人も、あきらめないで粘り強く取り組むことが重要です」。

 「大切なのは、目標をなかなか達成できないとガッカリするのではなく、毎日の生活の活動で、新しい健康的な習慣を取り入れる時間を作ることを継続することです」としている。

Mental Well-Being and Physical Activity Can Form a Positive Cycle (ユヴァスキュラ大学 2025年1月24日)
The associations of positive and negative mental well-being with physical activity during the COVID-19 across late adulthood (BMC Public Health 2024年11月26日)
Low intensity exercise linked to reduced depression (アングリア ラスキン大学 2024年4月24日)
Physical activity and prevention of mental health complications: An umbrella review (Neuroscience & Biobehavioral Reviews 2024年5月)
Myth busted: Healthy habits take longer than 21 days to set in (南オーストラリア大学 2025年1月24日)
Time to Form a Habit: A Systematic Review and Meta-Analysis of Health Behaviour Habit Formation and Its Determinants (Healthcare 2024年12月9日)

[Terahata]
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