ニュース

ラジオ体操により要介護や認知症のリスクが低下が低下 高齢化社会の健康施策に体操を活用

 体操(とくにラジオ体操)の実践により、高齢者の要介護および認知症のリスクを低下できる可能性が、世界ではじめて示された。

 ラジオ体操を行ったグループは認知症のリスクが18%低下した。体操による身体活動量の増加、多様な動作をともなう、音楽がともなう運動であることや、他者とのつながりなどによる効果が考えられる。

 「高齢化が進む日本で、体操の実践が要支援・要介護や認知症のリスク低減につながる可能性が示されました」と、研究者は述べている。

ラジオ体操により高齢者の認知症リスクが18%低下
それ以外の体操でもリスクは低下

 高齢者における体操(とくにラジオ体操)の実践により、要介護および認知症のリスクを低下させる可能性があることが、世界ではじめて明らかになった。

 研究は、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の金森悟准教授らによるもの。研究成果は、「SSM - Population Health」に掲載された。

 研究グループは、体操が要支援・要介護や認知症のリスクをどの程度低減できるかを明らかにするため、全国規模の前向きコホート研究である日本老年学的評価研究(JAGES)を用いて検証した。

 その結果、体操なしのグループと比べ、ラジオ体操のみを行ったグループは認知症のリスクが18%低下し、その他の体操のみのグループでは要支援・要介護リスクが13%低下、要介護2以上および認知症リスクはそれぞれ19%低下した。

 研究は、全国19市町村に住む65歳以上の1万1,219人を対象に、平均5.3年間の追跡調査を実施したもの。

 「高齢化が進む日本では、要支援・要介護や認知症を予防することが重要な課題となっています。今回の結果は、高齢化社会における健康施策として、体操の普及の重要性を示しています」と、研究者は述べている。

体操の実践パターンと介護・認証との関連

出典:帝京大学、2025年

ラジオ体操などの普及率が高い体操の有効性を確認
日常での体操の実践が健康増進や介護予防につながる

 研究者によると、日本で広く普及している「体操」(とくにラジオ体操)は、筋力や柔軟性を高める運動として推奨されているが、その効果についての科学的根拠は限定的だった。

 そこで研究グループは、体操が要支援・要介護や認知症のリスクをどの程度低減できるかを明らかにするため、全国規模のデータを用いた検証を行った。

 日本老年学的評価研究(JAGES)では、全国の大学・国立研究センターなどの研究機関の研究者が協力し、高齢者を対象に、多面的な視点から実証的な老年学的研究を推進しており、健康の社会的決定要因の解明などに取り組んでいる。

 研究グループは今回、JAGESのデータを用いた全国規模の前向きコホート研究(集団を長期間観察することで特定の要因による健康影響を調べる方法)を実施。

 介護認定を受けていない65歳以上の高齢者1万1,219人(平均年齢 74.2歳、男性 46.3%)を対象に、体操の実践状況にもとづき、4群[体操をしない群、ラジオ体操のみを行う群、その他の体操のみを行う群、両方を行う群]に分類した。

 主要な評価項目は、要介護認定の判定結果をもとにした要支援・要介護、要介護2以上、認知症で、年齢、性別、所得、教育水準、身体機能などの要因を調整してCox比例ハザードモデル(観察期間の考慮ができる分析方法)とした。

 平均5.3年間の追跡調査を実施した結果、体操を実践していない群と比較して、ラジオ体操のみを実践した群では、認知症のリスクは18%低下した。その他の体操のみを実践した群では、要支援・要介護のリスクが13%、要介護2以上のリスクが19%、認知症のリスクが19%、それぞれ低下した。

 両方を実践した場合は、統計学的に明らかな関連は示されなかったが、要介護2以上や認知症のリスク低下の傾向がみられた。

 なお、対象となった高齢者の、追跡期間中の要支援・要介護は2,580人、要介護2以上は1,307人、認知症は1,271人だった。

 「本研究では、高齢者における体操の実践が要支援・要介護や認知症のリスク低減につながる可能性が示されました。とくにラジオ体操は認知症リスクを、その他の体操は要支援・要介護および認知症リスクを効果的に低減する可能性が明らかとなりました」と、研究者は述べている。

 「認知症予防のメカニズムとして、身体活動量の増加とともに、多様な動作をともなう運動であること、音楽がともなうことによる効果、他者とのつながりなどが考えられます」。

 「これらの結果は、高齢化が進む社会において、体操が要支援・要介護や認知症の予防に効果的であることを科学的に示すもので、体操の普及が高齢者の健康維持や介護予防に役立つ可能性を示唆しています」。

 「とくにラジオ体操などの普及率が高い体操の有効性を確認できたことで、日常的な体操の実践が健康増進や介護予防につながることを示唆しています。この知見は、高齢者の健康施策や地域社会での運動プログラムの設計・推進に実用的な示唆を提供し、高齢者の生活の質向上や医療・介護負担軽減に貢献する可能性があります」としている。

JAGESプロジェクト (日本老年学的評価研究機構)
Taiso practice and risk of functional disability and dementia among older adults in Japan: the JAGES cohort study (SSM - Population Health 2024年12月)

[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年02月04日
ラジオ体操により要介護や認知症のリスクが低下が低下 高齢化社会の健康施策に体操を活用
2025年02月03日
【日本肥満症予防協会:Web講演会 開催のおしらせ】
行動医学・ヘルスリテラシーからみた働き盛り世代の肥満対策(2025年3月11日・オンデマンド配信あり)
2025年02月03日
良い睡眠は肥満や高血圧のリスクを減らす 日本人の睡眠は足りていない 3つの方法で改善
2025年02月03日
運動とメンタルヘルスの深い関係 コロナ禍に活動的だった人はポジティブな感情を維持 運動は楽しく続けられることも大切
2025年02月03日
タバコを吸う人は認知症リスクが上昇 喫煙は歯を失う原因に 全身疾患のリスクが上昇
2025年02月03日
男性の「健康寿命」低下 新型コロナ感染症拡大が影響か
2022年の「健康寿命」公表
2025年01月27日
座位時間の長い労働者は睡眠の問題を抱えやすい 立ち上がって体を動かし対策 運動で血流を改善
2025年01月27日
働く人のストレスに効果的に対策 わずか10分間の「マインドフルネス」でメンタルヘルス改善 スマホアプリの効果を検証
2025年01月27日
コロナ禍のウェルビーイング格差は所得格差に連動 コロナ禍に孤独を感じている人が増加 健康的な高齢化に関する調査
2025年01月27日
「孤独」と「社会的孤立」は心臓病・脳卒中・感染症などのリスクを高める 人との交流は健康を維持するために必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶