ニュース

早食いほど肥満は増える 肥満予防に「ゆっくり食べる」と効果的

 2型糖尿病で、早食いになりがちな人は、食物をよく噛んで箸を休めながら食事をすることで、体重を減らせる可能性があることが、九州大学が日本人約6万人を対象とした研究で明らかになった。
 食べる速度が速い人は、就寝の2時間前以降に夕食を摂っている割合も高く、食事が不健康になりがちだという。
食事の速度が肥満や体格指数(BMI)に影響
 研究は、九州大学大学院医学研究院のハースト裕美、福田治久氏らによるもので、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」(BMJ)のオンライン版「BMJ Open」に発表された。

 研究チームは、調査期間中に2型糖尿病と診断された日本人5万9,717人を対象に、食べる速度と体重の増減との関連を調べた。日本医療データセンター(JMDC)が作成した健康保険組合の実施した健康診断のデータベースを利用した。

 研究チームは論文で、食事の速度は肥満や体格指数(BMI)の値、腹囲に影響すると指摘し、「食べる速さがゆっくりであるほど、肥満の割合は減少することが明らかになりました。ゆっくり食べるよう食事のスタイルを変えていくことで、肥満の予防や、肥満が関連する健康リスクを減らせる効果を得られる可能性があります」と結論付けている。
速く食べる人ほどBMIや腹囲が上昇 もっとゆっくり食べよう
 BMI(体格指数)は身長と体重から算出され、体重が適正範囲内かどうかを判断する際に用いられる。

 研究の対象となった2型糖尿病患者は、2008年から2013年にかけて定期健診を受けており、インスリン、SU薬、ビグアナイド、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、グリニド薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬などで治療を受けていた。年齢、性別、BMI、ウエスト周囲径、血圧、食生活、飲酒や喫煙の有無などを調べた。

 参加者の3分の1以上(36.5%)が6年間に1回以上の検査を受け、3分の1(29.5%)には2回の検査を受け、5人に1人(20%)3回の検査を受けていた。

 解析した結果、食べる速度が速い人は全体の37.6%、普通の人は55.4%、ゆっくりの人は6.9%であることが判明した。

 BMIが25以上の肥満の割合は、食べる速度が速い人では44.8%、普通の人では29.6%、ゆっくりの人では21.5%で、食べる速度がゆっくりであるほど肥満の割合は少なくなることが明らかになった。

 食べる速度はウエスト周囲径にも影響する。ウエスト周囲径の平均は、食べる速度が速い人では86.8cm、普通の人では82.8cm、ゆっくりの人では80.1cmで、食べる速度がゆっくりであるほど、お腹周りも引き締まることが分かった。

 また、就寝の2時間前までに夕食を食べている人の割合は、食べる速度が速い人では43.3%、普通の人では33.4%、ゆっくりの人では36.8%だった。就寝前の食事は肥満につながりやすい。食べるのがゆっくりであると、食事スタイルも健康的になる傾向がみられた。
夕食は就寝の2時間前までに 朝食も大切
 「食べるのが速いと満腹感が得にくくなり、十分なカロリー摂取をしたにもかかわらず、満腹感を得られるまで余計に食べ続けることになります。反対にゆっくり食べると、満腹感を得やすくなるので、食欲をコントロールし、食べ過ぎを抑えられるようになります。糖尿病の人にとって大切なことです」と、研究チームは述べている。

 また、就寝の2時間前以降に夕食を摂ったり、夕食後に間食を摂ったり、朝食を抜くなどすると、肥満につながりやすい。研究では、食べるのが速い人は、就寝の2時間前以降に夕食を摂るなど、食事スタイルが不健康になりがちであることも判明した。

 「夕食を摂る時間が遅いと、翌日の朝食を十分に摂れなくなるおそれがあります。長期間にわたって朝食を抜くと、糖尿病の人ではBMIが上昇し、心臓血管疾患のリスクが上昇することが報告されています。朝食をしっかり食べることが、肥満やBMIのコントロールにつながります」と、研究チームは指摘している。

九州大学 大学院 医学系学府 医療経営・管理学専攻
Slow eating speed may be linked to weight loss(BMJ Open 2018年2月12日)
Effects of changes in eating speed on obesity in patients with diabetes: a secondary analysis of longitudinal health check-up data(BMJ Open 2018年2月)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2023年08月28日
極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
2023年08月28日
カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
2023年08月28日
わずか5分の運動でも「がんリスク」を32%減少 無理なく続けられる「新しい運動法」を開発
2023年08月28日
週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
2023年08月28日
高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
2023年08月21日
肥満やメタボが「腰痛」を引き起こす コロナ禍でさらに増加 「腰痛」を改善する運動は?
2023年08月21日
朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
2023年08月21日
アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査
2023年08月21日
ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
2023年08月21日
「運動アプリ」がメンタルヘルスも改善 スマホアプリの導入は運動指導で障壁の低い介入に
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶