ニュース

世界の8.5億人が「腎臓病」 腎臓病の恐ろしさを知らない人が大半

 腎臓病の有病者数は世界で8億5,000万人に増えていると、国際腎臓学会(ISN)が発表した。有病者数は糖尿病の2倍、がんの20倍以上に上るという。
 腎臓病の脅威は世界中で拡大しているが、多くの人がその恐ろしさを理解していない。
腎臓病は「隠れた流行病」
 国際腎臓学会(ISN)は、世界の腎臓病の有病者数は8億5,000万人に上るという推計値を発表した。

 有病者数を比較すると、糖尿病(4億2,200万人)の2倍で、がん(4,200万人)やHIV/AIDS(3,670万人)の20倍以上に相当する。

 腎臓病はこれまで、健康問題としてクローズアップされることが少なく、過小評価されてきた傾向がある。しかし、腎臓病いまや世界中で「隠れた流行病」とも言える状態になっている。

 腎臓病は進行すると、腎不全、透析療法、血管疾患、感染症を引き起こし、入院治療を要することの多い疾患だ。

 しかも、事態をより深刻なものにしているのは、腎臓病の恐ろしさに多くの人が気付いていないことだ。

関連情報
CKDの有病率は男性10.4%、女性11.8%
 「腎臓病は世界中に蔓延しており、いまや"サイレントディジーズ"(静かな病気)とも言える状況になっています」と、国際腎臓学会のディヴィッド ハリス教授とアディーラ レヴィン教授は言う。

 「慢性腎臓病」(CKD)は、(1)尿検査や血液検査などで腎臓の障害がみつかる、(2)腎臓の働きが低下している、という状態が3ヵ月以上持続していると診断される。

 CKDの世界の成人の有病率は、男性で10.4%、女性で11.8%だ。CKDは腎臓の障害だけでなく、心疾患も引き起こす。2013年には腎疾患が原因となった心血管疾患により120万人が死亡したとみられている。

 CKDは、初期には自覚症状がないが、病気が進行すると、貧血、倦怠感、むくみ(浮腫)、息切れなどの症状があらわれてくる。これらの症状が自覚されるときには、すでにCKDがかなり進行している場合が多い。

 CKDが進行した結果、透析療法や腎臓移植が必要となった患者は530~1,050万人とみられているが、透析の医療費は高額なため、必要な治療を受けられる患者は一部の先進国に限られる。

 また、数時間から数日という短期間で急激に腎機能が低下する「急性腎障害」(AKI)の有病者数は毎年1,330万人と推計されている。
自分の腎臓病に気付いていない人が多い
 問題をより深刻なものにしているのは、腎臓病の有病者数が急増していることだけではない。腎機能に障害が起きていても、そのことに気付いていない人が多いことが、重大な健康問題になっている。

 「腎臓病の多くは早期発見して治療を開始すれば、進行を抑えられ改善できます。しかし、初期には自覚症状が乏しく、検査を受けなければ発見できないことが多いのです」と、欧州腎臓協会(ERA)のカーミン ゾォカリ教授は言う。

 慢性の腎臓病は、ゆっくり静かに進行する。腎臓の機能はいちど失われると、多くの場合で回復することがなく、進行すると腎不全という病態に陥る。

 腎臓の重要な働きは、血液から老廃物をろ過し、尿として体外に排出することだ。腎臓を通過した血液はきれいになった状態で全身に戻っていく。

 また、腎臓は尿の排出をコントロールすることで、体内の水分量を一定に保つ働きもする。ナトリウムなどの電解質の調節をしており、血液の酸性・アルカリ性の調整もする。

 腎臓には、血圧を調整するホルモンや、赤血球をつくるホルモンを分泌したり、ビタミンDを活性化させたりする働きもある。
腎臓病を放置すると重大な健康障害が
 糸球体濾過量(GFR)の低下による年齢調整死亡率は、10万人当たり21人だ。慢性腎臓病からの心血管疾患による死亡数は2013年には120万人に上った。

 「腎臓病の死亡率は驚くほど高く、たとえばHIVの11倍に相当します。しかし、腎臓病の恐ろしさを社会に啓発するキャンペーンは行われてきませんでした」と、ゾォカリ教授は指摘する。

 腎臓病が進行し腎不全に陥ると、高額な人工透析が必要になり、重い経済的負担となる。患者1人当たりの年間の人工透析の費用は、米国で980万円(8万8,195ドル)、ドイツで653万円(5万8,812ドル)、ベルギーで928万円(8万3,616ドル)、フランスで787万円(7万928ドル)に上る。

 「腎臓病について知らなくとも、腎臓病を放置し、適切な治療を行わないと、健康障害が確実に起こります。透析療法の負担は大きく、患者さんの生活の質を大きく低下するだけでなく、国の医療財政にとっても巨大な損失になるのです」と、ゾォカリ教授は言う。

 国際腎臓学会では「早期に発見して、治療を開始すれば、腎臓の機能低下を防いだり、遅らせたりすることができる」と強調している。

 腎臓病に対する認知を世界的に引き上げて、腎臓病の予防を呼びかけること、腎臓病の負担を減らすことを呼びかけている。腎臓病の負担が現在どれほど拡大しているかを知ることが、その第一歩になる。

International Society of Nephrology(ISN)
The hidden epidemic: Worldwide, over 850 million people suffer from kidney diseases(国際腎臓学会 2018年6月27日)
[Terahata]

「健診・検診」に関するニュース

2018年12月19日
肥満や病気の予防を「まちづくり」から推進 健康になるための「都市デザイン」とは 千葉大と竹中工務店
2018年12月19日
「糖尿病リスク予測ツール」を公開 3年後の糖尿病発症リスクを予測 国立国際医療研究センター
2018年12月19日
果物は肥満・メタボに良いのか悪いのか? 果物の健康効果を科学的に検証
2018年12月19日
「10の食品群」の栄養バランスをチェックできる無料アプリ 東京都健康長寿医療センターなど共同開発
2018年12月19日
転倒経験がある高齢者は、自転車での転倒発生率も高い 肥満も転倒の要因に
2018年12月19日
「オーラルフレイル」の予防を啓発 無料アプリや冊子の提供を開始
2018年12月18日
[ 2/6 市民公開講演会参加者募集中!]全国生活習慣病予防月間2019
2018年12月17日
【新連載】業務効率化で「働くひとと組織の健康を創る」
2018年12月12日
年末年始にアルコールを飲み過ぎないために 知っておきたい5つの対処法
2018年12月12日
手軽な運動で筋内脂肪を減少 「ウォーキング+筋力トレーニング」がもっとも効果的

最新ニュース

2018年12月19日
肥満や病気の予防を「まちづくり」から推進 健康になるための「都市デザイン」とは 千葉大と竹中工務店
2018年12月19日
「糖尿病リスク予測ツール」を公開 3年後の糖尿病発症リスクを予測 国立国際医療研究センター
2018年12月19日
果物は肥満・メタボに良いのか悪いのか? 果物の健康効果を科学的に検証
2018年12月19日
「10の食品群」の栄養バランスをチェックできる無料アプリ 東京都健康長寿医療センターなど共同開発
2018年12月19日
転倒経験がある高齢者は、自転車での転倒発生率も高い 肥満も転倒の要因に
2018年12月19日
「オーラルフレイル」の予防を啓発 無料アプリや冊子の提供を開始
2018年12月18日
[ 2/6 市民公開講演会参加者募集中!]全国生活習慣病予防月間2019
2018年12月17日
【新連載】業務効率化で「働くひとと組織の健康を創る」
2018年12月14日
【健やか21】不登校傾向にある子どもの実態調査 中学生約33万人
2018年12月12日
年末年始にアルコールを飲み過ぎないために 知っておきたい5つの対処法
2018年12月12日
手軽な運動で筋内脂肪を減少 「ウォーキング+筋力トレーニング」がもっとも効果的
2018年12月12日
うつ病を早期支援するのための社員向け研修プログラムを開発 職場のメンタルヘルス不調を早期発見・介入 九州大学など
2018年12月12日
保健指導にインセンティブを 世界の1億人の運動量を増やす「Vitality」の戦略
2018年12月12日
骨粗鬆症の検診受診率 全国ランキングを発表 1位は栃木県 骨粗鬆症財団
2018年12月06日
【参加募集中】第8回 産業保健プロフェッショナルカンファレンス「健康経営の視点での産業保健活動」
2018年12月06日
【健やか21】近年急増の梅毒 男性は40代、女性は20代が最多
2018年12月05日
保健指導をオンラインで支援 金沢大学がIoT活用で新たな保健指導サービス
2018年12月05日
【山梨県】糖尿病対策推進会議などと連携 「糖尿病腎症」の重症化予防
2018年12月05日
ペットロボ「アイボ」の癒やし効果を医療に活用 成育医療研究センター
2018年12月05日
骨が分泌する「若返り物質」 運動が若さを保つメカニズムを解明
2018年12月05日
「ストレス反応」は朝と夜で異なる 体内時計をストレスマネジメントに応用
2018年12月04日
糖尿病ネットワークがベトナムに進出 アジアの糖尿病医療を底上げ
2018年12月04日
「依存症を知る~今日的課題と対応~」へるすあっぷ21 12月号
2018年11月29日
「健康寿命をのばそう!アワード」最優秀賞決定~介護予防・高齢者生活支援分野/母子保健分野~
2018年11月29日
「健康寿命をのばそう!アワード」最優秀賞決定~生活習慣病予防分野~
2018年11月29日
【健やか21】伝染性紅斑が流行しています(東京都)
2018年11月28日
【参加募集中】第7回 産業保健プロフェッショナルカンファレンス テーマ「職場巡視~ありのままの現場を見られる産業保健師になる~」※申込みを締切りました
2018年11月28日
高齢者の入浴に「要介護」を防ぐ効果 ただし冬の入浴には注意も必要
2018年11月28日
高カロリー飲料やお菓子はなぜ危ないか メタボや糖尿病の原因糖質が判明
2018年11月28日
毎日30分のウォーキングが乳がんを防ぐ 女性の運動を増やすアイデア7選
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
  • 週1回配信(毎週木曜日)
  • 登録者数 7,558 人(2018年10月現在)
登録者の内訳(職種)
  • 保健師 44%
  • 看護師 20%
  • 管理栄養士・栄養士 22%
  • その他 14%
登録はこちら ▶
ページのトップへ戻る トップページへ ▶