ニュース
日本人高齢者のフレイル割合は8.7% プレフレイルは40.8% フレイルの予防・重症化予防を推進
2020年10月20日

「日本人高齢者のフレイル割合は8.7%、プレフレイルは40.8%」――東京都健康長寿医療センターは、日本人高齢者全体のフレイル割合をはじめて明らかにした。
75歳以上の後期高齢者を対象とした、フレイルの予防・重症化予防に着目した健診、いわゆる「フレイル健診」は、今年の4月に開始された。
「健康格差を是正する必要があります」と研究者は訴えている。
75歳以上の後期高齢者を対象とした、フレイルの予防・重症化予防に着目した健診、いわゆる「フレイル健診」は、今年の4月に開始された。
「健康格差を是正する必要があります」と研究者は訴えている。
日本人高齢者のフレイルの割合は8.7%
「日本人高齢者のフレイル割合は8.7%」――東京都健康長寿医療センターは、「全国高齢者パネル調査」のデータを用い、地域在住の日本人高齢者全体のフレイル割合をはじめて明らかにした。
「フレイル」は、「健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体機能や認知機能の低下がみられる状態」を指す。国や自治体は、健康寿命の延伸に向けフレイル予防に関する施策を打ち立てている。
フレイル予防に関する施策を実施・評価するために、日本でどのくらいの人がフレイルに該当しているかを把握する必要がある。しかし、これまでフレイル該当者割合を特定地域で調べた研究はあったが、全国の高齢者全体では把握できていなかった。
そこで研究チームは、代表サンプルによる「全国高齢者パネル調査」のデータを用い、地域在住の日本人高齢者全体のフレイル割合を算出した。研究成果は、「Archives of Gerontology and Geriatrics」に掲載された。
関連情報
プレフレイルは40.8% 西高東低の傾向が
2012年に行われた全国高齢者パネル調査の参加者のうち、訪問調査に協力した65歳以上の高齢者2,206人のデータを解析。フレイルの把握は、世界で最も使用されているFriedらの指標を用いた。
指標に含まれる5個の項目のうち、3個以上該当した場合に「フレイル」、1~2個の場合に「プレフレイル」(フレイルの前駆状態)、0個の場合に「健常」と判定。
回答者の性別、年齢の偏りを調整した上でフレイル割合を算出したところ、8.7%の人がフレイルに該当することが明らかになった。この割合は、諸外国に比べると低いものだ。
なお、プレフレイルは40.8%、健常は50.5%だった。また、女性、高齢、社会経済的状態が低い、健康状態が悪いほど、フレイル割合は高い傾向がみられた。
地域ブロック別では、おおむね西日本で高く、東日本で低い「西高東低」の傾向がみられた。
今回の知見は、日本ではじめて地域在住日本人高齢者のフレイル割合を明らかにし、地域によるフレイル割合の違いを「見える化」したもので、フレイル予防に関する施策の評価、あるいはフレイルに関する学術研究のマイルストーン(基準値・目標値)になる。

出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2020年
「フレイル健診」がスタート 75歳以上の後期高齢者のフレイル対策を強化
75歳以上の後期高齢者を対象とした、フレイルの予防・重症化予防に着目した健診、いわゆる「フレイル健診」は、今年の4月に開始された。
厚生労働省は、後期高齢者を対象に行う健診で活用されている現行の質問票に代わるものとして、フレイルの状態になっているかチェックする「後期高齢者の質問票」を2020年度より導入した。
後期高齢者については、フレイルに陥るリスクを抱えていることから、現役世代のメタボリックシンドローム対策と異なり、フレイルに着目した疾病予防・重症化予防の取組みとして、運動、口腔、栄養、社会参加などのアプローチを進める必要がある。
こうした状況をふまえ、厚労省は2015年の医療保険制度改革で、後期高齢者の保健事業について、「高齢者の心身の特性に応じ、保健事業を行うよう努める」「健康教育や健診に加え、保健指導・健康管理、疾病予防に係る本人の自助努力に対する支援を行う」ことを求めた。

高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン 第2版
こうした流れを受け、「高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ」は2019年10月に、「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン 第2版」を公表。
ガイドラインは、基本的な考え方を示した「総括編」と、保健事業の実施内容・方法・手順と、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施の手順などをまとめた「実践編」に分かれている。
実践編では、「事業の企画・調整・分析・評価などを行う人材と、通いの場などへの関与や個別訪問などの支援を行う医療専門職が必要になる」として、保健師や管理栄養士、歯科衛生士などの医療専門職が加わり、取組みの充実をはかるよう求めている。
ガイドラインには別添資料として「後期高齢者の質問票の解説と留意事項」が付いている。フレイル健診に関わる各質問についてエビデンス、統計、留意事項などが詳細に記載されている。
厚労省研究班「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施推進のための後期高齢者の質問票活用に向けた研究(研究代表者:津下一代)」の成果を参考にして作成された。
高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン 第2版 |
---|
「後期高齢者の質問票」で高齢者の健康状態を把握
高齢者(とくに後期高齢者)は複数の疾患をもつほか、フレイルやサルコペニア、認知症なども進行しやすい。ガイドラインでは、こうした高齢者の特性をふまえた保健事業を実施することを求めている。
従来の特定健診(40~74歳が対象)の「標準的な質問票」は、メタボリックシンドローム対策に着目した質問項目が設定されており、高齢者の特性を把握するものとしては十分ではなかった。
「後期高齢者の質問票」は、フレイルなど高齢者の特性をふまえて健康状態を総合的に把握するという目的から、(1)健康状態、(2)心の健康状態、(3)食習慣、(4)口腔機能、(5)体重変化、(6)運動・転倒、(7)認知機能、(8)喫煙、(9)社会参加、(10)ソーシャルサポート――の10類型を示している。
さらに、これまでのエビデンスや保健事業の実際、回答高齢者の負担を考慮し、15項目の質問で構成されている。
類型名 | No | 質問文 | 回答 |
---|---|---|---|
健康状態 | 1 | あなたの現在の健康状態はいかがですか | ①よい ②まあよい ③ふつう ④あまりよくない ⑤よくない |
心の健康状態 | 2 | 毎日の生活に満足していますか | ①満足 ②やや満足 ③やや不満 ④不満 |
食習慣 | 3 | 1日3食きちんと食べていますか | ①はい ②いいえ |
口腔機能 | 4 | 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか ※さきいか、たくあんなど | ①はい ②いいえ |
5 | お茶や汁物等でむせることがありますか | ①はい ②いいえ | |
体重変化 | 6 | 6ヵ月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか | ①はい ②いいえ |
運動・転倒 | 7 | 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか | ①はい ②いいえ |
8 | この1年間に転んだことがありますか | ①はい ②いいえ | |
9 | ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか | ①はい ②いいえ | |
認知機能 | 10 | 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの 物忘れがあると言われていますか | ①はい ②いいえ |
11 | 今日が何月何日かわからない時がありますか | ①はい ②いいえ | |
喫煙 | 12 | あなたはたばこを吸いますか | ①吸っている ②吸っていない ③やめた |
社会参加 | 13 | 週に1回以上は外出していますか | ①はい ②いいえ |
14 | ふだんから家族や友人と付き合いがありますか | ①はい ②いいえ | |
ソーシャルサポート | 15 | 体調が悪いときに、身近に相談できる人がいますか | ①はい ②いいえ |
National prevalence of frailty in the older Japanese population: Findings from a nationally representative survey(Archives of Gerontology and Geriatrics 2020年8月9日) 高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ(厚生労働省)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2021 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2021年01月28日
- 【オピニオン新連載】行動科学に基づいた保健指導スキルアップ~対象者の行動変容を促すには?~
- 2021年01月26日
- 【新型コロナ】接触確認アプリ「COCOA」がコロナ禍の心理的ストレスを減らす? 企業従業員の心の健康をどう守るか
- 2021年01月26日
- スマホの運動アプリで1日の歩数を2000歩増やせる 新型コロナをきっかけに、運動への関心は世界中で拡大
- 2021年01月26日
- 「脂肪肝」が手遅れになる前にスマホで早期発見 病気と認識してきちんと対策 「脂肪肝プロジェクト」を始動
- 2021年01月26日
- 人工知能(AI)を活用して大腸がんを高精度に発見 医師とAIが一体となり、がん検査の見逃しをなくす
- 2021年01月25日
- 「内臓脂肪」と「腸内細菌」の関係を解明 肥満の人で足りない菌とは? 腸内細菌のバランスが肥満やメタボに影響
- 2021年01月25日
- コレステロール高値で高尿酸血症のリスクが上昇 メタボリックシンドロームと高尿酸血症の関連に新たな知見
- 2021年01月19日
- 【新型コロナ】「自然」の豊かな環境でストレスを解消 心の元気を保つために「行動の活性化」を
- 2021年01月18日
- 「和食」が健康にもたらすメリットは多い 5割が「健康に良い」、8割以上は「和食が好き」
- 2021年01月18日
- 冬の「ヒートショック」を防ぐ6つの対策 急激な温度変化は体にとって負担 血圧変動や脱水に注意
最新ニュース
- 2021年03月02日
- 【新型コロナ】ワクチン接種の利益とリスクを正しく理解し判断を 感染症学会「有効性は高く、副反応は一過性」
- 2021年03月02日
- なぜ体重は正常なのに「代謝異常」に? 体脂肪の「質」が肥満・メタボや糖尿病に影響 順天堂大学
- 2021年03月02日
- 女性が多量飲酒をすると乳がんリスクが1.7倍に上昇 女性ホルモンが影響か 日本人女性16万人対象の大規模調査
- 2021年03月02日
- 人工知能(AI)により生活習慣病の将来リスクを予測 保健指導での意識・行動の改善に貢献 国際医療研究センターなどが共同研究
- 2021年02月26日
- 【新型コロナ】コロナ禍のいまこそ運動を オンライン運動プログラム「こそトレ!」 慶應大学と藤沢市が連携
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ