働く人の「ストレスチェック」すべての事業場で義務化へ
厚生労働省 検討会「中間とりまとめ案」を了承
厚生労働省は、10月10日に開催された「第7回 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」で、中間とりまとめ案を公表した。
そのなかで、従業員50人未満の事業場にもストレスチェック制度の義務を拡大する方向性が示され、実施へ向けて十分な準備期間を設けることや、地域産業保健センター等の支援体制の強化などを盛り込み、同案は了承された。
ストレスチェック制度導入とその現状
働く人たちのメンタルヘルスの問題は、以前から課題として認識されてきたが、長年、その対策は各事業場に任されてきた。しかし、平成26年に労働安全衛生法(安衛法)が改正され、翌年12月からストレスチェック制度を導入し、本格的に対策が進められるようになった。
この制度は労働者自身のストレスを評価し、その結果をもとに職場環境の改善や医師の面接指導を行うことが基本となっている。メンタルヘルス不調の予防に重点を置いたもので、ストレスに早期に対応することができるようになった。
従業員50人以上の事業場に対して義務づけられており、50人未満では努力義務となっている。
「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合は、労働者数50人以上の事業場では91.3%だったが、30~49人では71.8%、10~29人で56.6%と、小規模事業場になればなるほど低い状況であった。
ストレスチェックの実施状況をみると、50人以上の事業場では84.7%、50人未満では32.3%にとどまっている。
メンタルヘルス不調者は右肩上がりで増加傾向
厚労省「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害の労災支給決定件数は増加傾向にあり、令和4年度には710件、先ごろ公表された令和5年度では883件に増加し、過去最多を更新していた。
また、メンタルヘルス不調によって連続1カ月以上の休業、または退職した労働者がいる事業場の割合も上昇傾向にあり、ここ数年は1割を超えて推移している。
出典:「第1回 ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会(令和6年3月29日)」資料2 P.12 より
今年3月に「検討会」を設置し、ストレスチェック制度をめぐって議論
こうしたなか、昨年6月に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)』では、「多様な働き方の推進」の項目において「メンタルヘルス対策の強化等の働き方改革を一層進め」るとされた。
さらに、平成26年の改正安衛法の実施状況について議論された「第134回労働政策審議会安全衛生分科会」(令和2年)では、今後、ストレスチェック制度について効果検証を行い、検討していくべきと指摘されていた。
これらを踏まえ、厚労省はストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について、実施状況などを検証し、その結果必要なものについて対応を検討することを目的に、今年3月に「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を設置して議論を重ねてきた。
ストレスチェック制度の効果については、学術論文や研究報告をもとに検証を行い、「ストレスチェック及び面接指導の実施により、自身のストレスの状況への気付きを与える効果や、個々のストレスを低減させる効果が確認された」と評価している。
その一方で課題として挙がったのが、50人未満の事業場への義務化の要否と、集団分析・職場環境改善の実施だ。


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