抗菌薬や薬剤耐性の認知度は向上、適正使用には課題も-「抗菌薬意識調査レポート2024」より

感染症治療に使われる抗菌薬(抗生物質)が効かない薬剤耐性(AMR)の問題が世界中で深刻化している。そのような中、国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターがこのほど、「抗菌薬意識調査レポート 2024」を発表した。
調査結果によれば、抗菌薬やAMRの認知度は昨年より改善が見られたものの、抗菌薬の適正使用や正しい知識は依然として不十分であることがわかった。一方で、処方された抗菌薬を飲み切る人の割合は増加している。
抗菌薬の不適切な使用を背景に、薬剤耐性菌が世界的に増加している。この事態を受け、2015年の世界保健総会は薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プランを採択。加盟各国には2年以内に薬剤耐性への国家行動計画の策定が求められ、日本でも2016年に初のアクションプランが決定された。以降、関係省庁が連携しながら効果的な対策を推進している。
今回の調査は、一般の人々が抗菌薬や抗生物質、さらに薬剤耐性についてどのように認識しているかを把握し、問題点と今後の取り組みの方向性を明らかにすることを目的に実施。2024年7月、全国の15歳以上の男女を対象にインターネット調査が行われ、727の回答が集まった。
調査の結果、「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と答えた人は89.1%で、昨年より8.2ポイント増加。また「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがある」と回答した人は42.8%で、昨年より7.4ポイント増えていた。
一方で、「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」に対して「間違っていると思う」と正しく回答した人の割合は16.0%にとどまり、約6人に1人に過ぎない。同様に、「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」との問いに「間違っていると思う」と正しく回答した人は25.9%で、約4人に1人。これらの結果から、正しい知識の普及はまだ不十分であることが浮き彫りとなった。
行動面では「処方された抗菌薬を最後まで飲み切った」と回答した人は74.1%で、昨年より3.8ポイント増加していた。また、「とっておいた抗菌薬・抗生物質を人にあげたことがある」と回答した人は4.3%で、直近3年間で年々減少している。これらの結果から、抗菌薬の不適切な使用については一部で改善が見られることが示された。
そのほか、アンケートでは「体調不良時に医師にかかる前にネット検索やAI診断を活用したことがあるか」や「起床後に体調不良が認められた場合、学校や職場を休むか」などについても調査が行われた。
このうち、「発熱等の症状で学校や職場を休む」と回答した人は55%で、昨年より1.6ポイント減少していた。この割合が最も多かったのはコロナ禍の2022年で、以降2年連続で減少しており、時間の経過とともに「感染させない」ための行動規範がゆるんでいる可能性が示唆されている。
一方で、「こまめな手洗い」をしている人は83.6%、「咳エチケット」を守っている人は75.8%と、基本的な感染症対策は高水準で継続されている。
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院

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