ニュース
魚を食べる人は認知症になりにくい 魚の摂取量が多いと認知症リスクが61%低下 日本人を対象に調査
2021年02月16日

魚をよく食べる人ほど認知症のリスクが低いことが、日本人を対象とした研究で明らかになった。魚をもっともよく食べている人は、15年後の認知症のリスクが61%低下した。
魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)についても、同様の結果になり、もっとも多いグループでは、それぞれ72%、56%、58%の認知症のリスク低下がみられた。
魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)についても、同様の結果になり、もっとも多いグループでは、それぞれ72%、56%、58%の認知症のリスク低下がみられた。
魚をよく食べる日本人を対象に調査
「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。
今回の研究はJPHC研究の一環として行われたもので、国立がん研究センターなどの研究グループによるもの。研究成果は、医学誌「Journal of Alzheimer's Disease」に掲載された。
研究グループは、1990年に長野県の佐久保健所の管内8町村に在住していた40~59歳の約1万2千人のうち、1995年と2000年のアンケートに回答し、かつ2014~15年に行った「こころの検診」に参加した1,127人のデータを解析。
魚介類、また魚に多く含まれる「n-3系多価不飽和脂肪酸」の摂取量と、その後の「軽度認知障害」や「認知症」との関連を調べた。
認知症の3分の1はリスク要因を取り除くと予防できる
「不飽和脂肪酸」は、脂肪を構成する脂肪酸のうち、植物や魚の脂に多く含まれるものをいう。体内で合成できないため、食事で摂取する必要がある。
不飽和脂肪酸はさらに、「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられ、さらに多価不飽和脂肪酸は「n-3系」と「n-6系」に分けられる。
n-3系には「DHA」(ドコサヘキサエン酸)、「EPA」(エイコサペンタエン酸)、「DPA」(ドコサペンタエン酸)、「α-リノレン酸」があり、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、悪玉のLDLコレステロールを減らすなど、さまざまな作用があると注目されている。
海外の研究では、認知症の3分の1は、そのリスク要因を取り除くと予防できると推計されており、正常と認知症の中間といわれる「度認知障害」や、認知症を、早期に発見し予防につなげることが重要であると考えられている。
いくつかの研究では、魚を摂取すると認知症リスクが低下するという報告があるが、主に欧米で行われた複数の論文の結果をまとめたメタアナリシスでは、明らかな効果は示されていない。その理由として、魚の摂取量に地域差があること、追跡期間が短いことが考えられる。
魚をよく食べていた人の15年後の認知症リスクを調査

1日魚を約1切れ以上食べていると、認知症のリスクは低下
その結果、1,127人の参加者のうち、380人が軽度認知障害、54人が認知症と診断された。認知症については、魚介類の摂取量が多いほどリスクの低下がみられ、もっとも摂取量が少ないグループ(中央値56g/日)を基準とした場合、もっとも多いグループ(中央値82g/日)では61%の認知症リスクの低下がみられた。
魚に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)についても、同様の関連がみられ、もっとも多いグループでは、それぞれ72%、56%、58%のリスク低下がみられた。
軽度認知障害については、魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量とは、関連がみられなかった。
今回の調査では、もっとも多く魚介類を摂取するグループの摂取量の中央値は1日82gだった。魚一切れの重量は、魚の種類や大きさにもよるが70g程度なので、1日魚を約1切れ以上食べているグループとみられる。
魚介類やn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が多いと認知症リスクは低下

出典:国立がん研究センター・社会と健康研究センター、2021年
魚の脂肪酸が神経機能に保護的に働いている可能性
今回の研究では、中年期の魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量が、15年後の認知症のリスク低下と関連があることが示された。
認知症は発症までに長い時間を要するが、先行研究では追跡期間が短いことなどから、魚介類の摂取量を評価した時点で、認知症とは診断されていないが認知機能が低下している人の、魚の摂取量が少ない、つまり、認知症によって魚の摂取量が少なかったことを観察していた可能性(因果の逆転)が指摘されていた。
今回の研究では、認知症を評価する約15年前の食事調査アンケートからの摂取量を用いたため、因果の逆転の可能性は少ないと考えられる。
さらに、もう1つの問題点として、これまでは魚の摂取量が少ない国で行われた先行研究が多く、今回は魚類の摂取量が多い日本で検討を行った結果、魚介類の摂取量が多いと認知症のリスクが低いという関連が明らかになった。
魚介類には、DHAなどの、n-3系多価不飽和脂肪酸が多く含まれており、神経機能に保護的に働く可能性が動物実験などで示されています。そのため、魚介類の摂取量と同様、DHA、EPA、DPAの摂取量が多い場合に、認知症のリスク低下と関連がみられたことが考えられました。
軽度認知障害の予防効果についてはさらに研究が必要
一方、今回の研究では、魚介類・n-3系多価不飽和脂肪酸摂取量と軽度認知障害との関連はみられなかったて。その理由として、軽度認知障害と診断された人は、正常と診断された方とあまり特性が異ならなかったことが考えられるという。
また、軽度認知障害は認知症の前段階と考えられているが、軽度認知障害と評価された人の中には認知機能が軽快する人もいるため、1回の診断だけでは正確な診断ができなかった可能性が考えられる。
「今回の研究では、認知機能評価を1度しか行っていないこと、食事の変化を評価していないこと、該当地域の一部(14%)の対象者しか調査に参加していないため、今回の結果は一般集団では異なる可能性があるため、今後さらなる研究が必要です」と、研究者は述べている。
多目的コホート研究[JPHC研究](国立がん研究センター・社会と健康研究センター)Association Between Dietary Fish and PUFA Intake in Midlife and Dementia in Later Life: The JPHC Saku Mental Health Study(Journal of Alzheimer's Disease 2020年12月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2021 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2021年02月24日
- 「健康寿命延伸のための提言」を公開 横断的根拠にもとづき具体的にアドバイス 国立がん研究センターなど6機関が連携
- 2021年02月24日
- 【新型コロナ】コロナ禍で生活や意識はどう変化した? 働き方とライフスタイルはこう変わった 東大社会科学研究所が調査
- 2021年02月24日
- 【新型コロナ】コロナ禍で子供の15~30%に中等度以上のうつ症状が 保護者のうつも深刻 成育医療研究センターが調査
- 2021年02月24日
- 【新型コロナ】コロナ禍で急性心筋梗塞の治療開始が遅れる 重症合併症の増加につながった可能性 コロナ禍でも医療の質の維持を
- 2021年02月24日
- ラクトフェリンが冬の急性胃腸症状を抑制 ノロウイルスを抑える作用の報告も 信州大学など産官学連携の取組み
- 2021年02月22日
- 【ダウンロード可能】現役の保健指導スタッフと共同制作!「撃退!トリプルリスク」指導箋&取扱説明書
- 2021年02月17日
- 「食物繊維」は肥満・メタボ・糖尿病の人にもメリットが大きい 玄米・大麦・雑穀など「全粒穀物」でリスク低下
- 2021年02月17日
- 座っている時間が長い人は内臓脂肪が多い 「立つ時間」「歩く時間」を増やして内臓脂肪蓄積を抑制 京都府立医科大学
- 2021年02月16日
- 【新型コロナ】看護職の4割強が「仕事を辞めたい、自信がなくなった」 コロナ禍では看護職の精神健康ケアも必要
- 2021年02月16日
- 魚を食べる人は認知症になりにくい 魚の摂取量が多いと認知症リスクが61%低下 日本人を対象に調査
最新ニュース
- 2021年03月05日
- 【健やか21】「女性の健康週間」特設Webコンテンツの公開について(厚生労働省)
- 2021年03月04日
- 「新常態の働き方を考える」へるすあっぷ21 3月号
- 2021年03月02日
- 【新型コロナ】ワクチン接種の利益とリスクを正しく理解し判断を 感染症学会「有効性は高く、副反応は一過性」
- 2021年03月02日
- なぜ体重は正常なのに「代謝異常」に? 体脂肪の「質」が肥満・メタボや糖尿病に影響 順天堂大学
- 2021年03月02日
- 女性が多量飲酒をすると乳がんリスクが1.7倍に上昇 女性ホルモンが影響か 日本人女性16万人対象の大規模調査
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ