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「緊急避妊薬(アフターピル)」の市販薬化に産婦人科医は慎重な姿勢 「まず性教育の充実に取り組むべき」
2021年10月19日
日本産婦人科医会は、望まない妊娠を防ぐために使われる「緊急避妊薬(アフターピル)」の市販薬化(OTC化)について慎重な姿勢を示している。
産婦人科医を対象を対象としたアンケートでは、「賛成」が55%、「反対」が42%で、無条件で賛成している医師は7.8%と1割未満だった。
「OTC化の検討に先行し、性教育の充実に取り組むべき」などの意見が多い。
一方、市民団体などからは「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性がアクセスできるようにするべき」という意見も出ている。
産婦人科医を対象を対象としたアンケートでは、「賛成」が55%、「反対」が42%で、無条件で賛成している医師は7.8%と1割未満だった。
「OTC化の検討に先行し、性教育の充実に取り組むべき」などの意見が多い。
一方、市民団体などからは「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性がアクセスできるようにするべき」という意見も出ている。
「緊急避妊薬(アフターピル)」のスイッチOTC化を要望する声
「緊急避妊薬(ECP、アフターピル)」は、性交後72時間以内に服用することで避妊効果を示す。避妊効果は8割程度で、現状では入手するには医師の処方が必要となる。
緊急避妊についての診療は、対面診療が原則になっている。例外的に、オンライン診療での緊急避妊薬の処方が適用されるのは、近隣に受診可能な医療機関がない場合や、女性の心理的な状態をみて対面診療が難しいと判断された場合とされている。
現在、緊急避妊薬について市民団体などから、「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女が、緊急避妊にアクセスできるようにするべき」などと、スイッチOTC化を要望する声が出ており、厚生労働省は検討を始めている。
緊急避妊薬は海外ではすでに90ヵ国以上が薬局で処方箋の必要がなく薬剤師から購入できる。日本でもオンライン著名キャンペーンで12万件の賛同が集まったという。
厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」では、緊急避妊薬のスイッチOTC化について、市民団体や、日本薬剤師会、日本産婦人科医会などからヒアリングが行われた。
性犯罪・性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」を設置
日本産婦人科医会は、緊急避妊薬の市販薬化(OTC化)について、その社会的影響を考え、慎重な姿勢を求めている。
「オンライン診療での緊急避妊を開始するにあたり、性教育を充実させる方針が示されたにもかかわらず、具体的政策の方向性が示されていない」「確実な避妊法の普及が進んでいない」ことなどを背景としてあげている。
同学会は、緊急避妊(EC)について、「避妊せずに行われた性交、あるいは避妊したものの避妊手段が適切かつ十分でなかった性交(UPSI)の後に緊急避難的に用いる避妊法」として、「経口避妊薬(OC)や他の避妊法のように、性交の前に計画的に妊娠を回避しようとするものとは根本的に異なる。頻用するものではなく、性感染症を予防するものでもない」と説明している。
UPSIの内容としては、▼避妊をしないで行われた性交、▼不確実な避妊法の施行、▼レイプや性的暴力などが考えられる。実際に緊急避妊外来を受診した理由としては、「コンドーム破損」「避妊しなかった」「コンドーム脱落」「膣外射精」「コンドーム膣内残留」などが多く、「レイプや性的暴力」はそれほど多くないという。
ただし、強制性交などの性的暴力の被害に遭った女性の警察への相談は多くない理由として、被害者がその被害の性質上、支援を求めるのが難しいことがある。「警察の認知件数は氷山の一角」とみられている。
そのため、性犯罪・性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」が、2018年からすべての都道府県に設置されている。しかし、その認知は現状では十分に進んでいない。
産婦人科医の54.7%が賛成、42.0%は反対
日本産婦人科医会は、緊急避妊薬の処方および予期せぬ妊娠に関する診療を行っている産婦人科医を対象に、2021年8月~9月に調査を行った。回答数は5,492件だった。
それによると、緊急避妊薬のスイッチOTC化について、賛成が54.7%(無条件で賛成7.8%、条件付き賛成46.9%)、反対が42.0%だった。OTC化に無条件で賛成している産婦人科医は7.8%だった。
OTC化の検討にあたり、設けた方が良いと思う要件や、必要と思う取り組みとして、「性教育の充実」81.4%、「複数錠の販売を禁止」74.6%、「十分な研修を積んだ薬剤師による販売と服薬指導」70.1%、「性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの充実」60.0%、「3週間後に妊娠検査薬を使うなど妊娠検査の実行」56.9%、「男性への販売を禁止」56.2%が多くあげられた。
OTC化により「懸念される問題がある」と考える産婦人科医は92%に上り、その具体的な内容として、「転売の可能性がある」64.6%、「コンドーム使用率の低下による性感染症リスクの拡大」61.1%、「服用後の妊娠(異常妊娠含む)への対応が遅れる」60.2%、「避妊に協力しない男性が増える」57.5%、「性暴力への悪用の可能性」53.3%が多くあげられた。
緊急避妊薬のスイッチOTC化
産婦人科医の46.9%は「条件付きで賛成」
産婦人科医の46.9%は「条件付きで賛成」
出典:日本産婦人科医会、2021年
「性教育を充実させるべき」 92%はOTC化に懸念される問題があると回答
このように、緊急避妊薬のOTC化の検討にあたり産婦人科医では「性教育の充実を条件とする」という意見が多い。
「性教育の充実を実施するのには時間がかかる。先行して性教育の充実に取り組むべき。92%がOTC化に懸念される問題があると回答しており、懸念事項の解決に向けた早急な検討も重要」と、同学会では述べている。
また、日本では、「避妊法の主流がコンドームであること」「確実な避妊法の普及率が上がらないこと」「固定的な性別役割の意識が根強く、ジェンダーにもとづく暴力が深刻であること」「性的同意やジェンダーに関する教育や性暴力被害者支援が不十分であること」など、ジェンダー課題が山積しているとしている。
「産婦人科医は、緊急避妊薬処方を入口と捉え、確実な避妊法の普及および性暴力被害者支援のゲートキーパーとしての役割を果たしている。ジェンダー課題を後退させることがないよう、全般を見据えた広い視点での議論を求める」としている。
第17回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚生労働省 2021年10月4日)
公益社団法人 日本産婦人科医会
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(内閣府男女共同参画局)
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