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高齢者の「孤立化」を防止 孤独な生活が健康上の障害に

 「孤立」は高齢者の健康にとって大きな障害となる。長寿の秘訣は、家族や地域で社会的交流を保つことだ。孤独を強く感じている高齢者では、そうでない場合に比べ、死亡率が上昇することが、米国の調査で明らかになった。孤独のもたらす悪影響は、肥満の2倍に達するという。
孤立を感じる高齢者の死亡率は14%上昇
 シカゴ大学のジョン カシオポ教授(社会心理学)らは、50歳以上の米国人2,000人以上を6年間追跡して調査した。

 他人から隔絶されていると感じている高齢者は、そうでない高齢者に比べ、死亡率が14%上昇することが判明した。

 孤立している高齢者では、睡眠障害を抱える割合が高く、ストレスホルモンであるコルチゾールの起床時の分泌が増え、免疫細胞の機能低下、抑うつといった健康への悪影響が起きていることが明らかになった。

 地域社会や対人関係から切り離されている高齢者では、高血圧症を発症する割合も高く、脳卒中や心臓病のリスクが上昇し、危険な状態にあるという。

 米国では前向きに物事を考える高齢者が多く、生活を元気に楽しんでいる反面、独立心が強く孤立化しやすい傾向があるという。米国人口は多様な人種で構成され、貧富の差が大きく、各州の地域差も大きい。

 社会的孤立に陥りやすい高齢者の特徴として、「単身世帯」、「経済的に余裕がない」、「健康状態が良くない」などを挙げている。また高齢者の社会的孤立の背景に、高齢夫婦世帯や高齢者の単身世帯が増えていることや、生活の利便性の向上、人口密度が低いなど地域的な要因がある。

親密な対人関係を維持することが大切
 カシオポ氏が高齢者の生活で重要とするのは次の3点だ。
親密な対人関係:自分がこれまでどのように暮らしてきて、どんな人であるかを知っている他人との交流を保つことが大切。
双方向的な交流:対話を通じて直接的に交流し、双方で結びつきを確かめられる関係性が望ましい。
共同体の一員であるという自覚:家族や地域社会などの共同体の本質は、互助的なつながりを通じて、自分がグループの一員であることを確かめられること。

 フロリダやアリゾナなど冬も温暖な地域は、職場を定年退職した高齢者に人気が高く、退職後に豊かな生活をおくることが米国ではもてはやされている。

 しかし、実際には退職後に住み慣れた土地を離れることで孤立化が促される例は多いという。「高齢になってから、顔を知っている人も少ないような土地に引っ越すことは、良い考えではありません。退職後も地域や職場でつちかわれた人間関係を維持し、孤立化しないようにする対策することが必要です」と、カシオポ氏は言う。

 また、インターネットが普及している現代では、対面して交流し社会的なつながりを求める動きはいっそう減少している可能性があるという。

 「米国でも人口の多い団塊世代がいっせいに高齢化を迎えています。高齢者が社会的な関係性を保ちながら、自分の身を守るための対策が必要とされています」と、カシオポ氏は指摘している。

Loneliness is a major health risk for older adults(シカゴ大学 2014年2月16日)

[Terahata]
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