食の安全を守る国際標準「HACCP」を義務化 食品の「日本品質」を輸出
日本では「危害要因分析にもとづく重要管理点」と訳されることもあるHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)。
HACCPは、食品の製造において、原材料の受け入れから、製品ができあがり出荷されるまでのあらゆる工程のなかで、微生物による汚染や異物の混入などの危害を予測し、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録する衛生管理のシステムのこと。
この手法は 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会から発表され、各国にその採用を推奨し国際的に認められたものだ。
日本では、食肉や水産食品などについて加熱の温度や時間などの「製造基準」が定められているものの、その基準が守られているかのチェック方法までは決めていない。安全性の確認は、食品衛生法が事業者に義務付けている一部製品の抜き取り検査に頼っていた。
また、原材料の入手を輸入に頼ることが多い日本では、異物混入などによる事故が起こった際に原因の特定に結び付きにくいことがある。こうした事態にもHACCPは有効に働くとされている。
厚労省では、有識者による検討会で対象品目や時期の計画づくりに着手し、早ければ来年から食品衛生法改正などを行う。
HACCPを導入した施設では、必要な教育・訓練を受けた従業員によって、定められた手順や方法が日常の製造過程において遵守されることが不可欠となる。
2014年度の農林水産省の「食品製造業におけるHACCPの導入状況実態調査」では、食品の売り上げが50億円以上の大手では77%がHACCPを導入済みだったが、50億円未満の中小企業では29%、1億円未満の零細企業では13%。企業の規模が小さくなるほど導入が減ることが判明している。
HACCP導入を実施した企業の多くが「品質・安全性の向上」「企業の信用度やイメージの向上」「従業員の意識の向上」の効果があったと回答している。
一方で「施設・設備の整備に多額の資金が必要」「HACCP導入後の運用コストが大きい」「従業員に対する研修が必要」といった問題点を挙げる企業も多い。
環太平洋経済連携協定(TPP)が発効すると、食品の関税が撤廃・引き下げとなり、輸出入の増加が見込まれる。米国やカナダなどに食肉などを輸出する場合はHACCPの実施が求められ、日本の中小企業が輸出を増やす上で障壁になる可能性がある。
また、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて食の安全をアピールするためにも、国際的に信用される衛生管理への転換が急務となっている。
厚労省では、「HACCP導入により食品の安全性は格段に高まる。これまでの最終製品の抜き取り検査に比べて、より効果的に安全性に問題のある製品の出荷を防止できる。"日本品質"の高さを海外に知らしめるために多くの企業に参加してほしい」と述べている。
HACCPチャレンジ事業(厚生労働省)
HACCP(ハサップ)(厚生労働省)
食品製造業におけるHACCPの導入状況実態調査(農林水産省 2015年)
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