ウォーキングが腸内フローラを改善 腸内細菌叢が変化し脳を健康に
生活習慣病の治療が思わしくない、ダイエットの成果がなかなか出ない・・・そんな時は腸内にいる「腸内フローラ」が影響している可能性がある。腸内フローラとは、腸内に住む細菌の生態系のことを指す。
腸内細菌と言えば、「善玉菌」「悪玉菌」を思い浮かぶかもしれないが、腸の中には100兆を超える、数百種類もの細菌が住んでいて、その細菌の出す物質が健康にさまざまな影響を及ぼしていることが分かってきた。腸内フローラは糖尿病やがんなどの病気や、肥満や加齢などの体質だけでなく、脳にまで影響していると考えられている。
米コロラド大学の研究チームによると、人生の早い段階でウォーキングなどの運動することで、この腸内フローラがより健康的になり、その後の人生で脳をより健全に保ち、代謝的活性を促進する可能性があるという。
運動をすると血中のブドウ糖や脂肪酸が利用され、血糖値の上昇が抑えられる。エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善され、減量効果を得られる。メンタルヘルスにも良い影響を及ばす。
それに加えて、腸内細菌叢も改善し、免疫システムやさまざまな神経機能の発達にも良い効果をもたらすという。運動と腸内細菌についての研究ははじまったばかりだ。
「運動を習慣として続けることで、2型糖尿病や高血圧などの生活習慣病に良い効果をもたらされるだけでなく、腸内フローラも改善します。人生を通じて健康により保てやすくなります」と、コロラド大学のモニカ フレッシナー教授(統合生理学)は言う。
腸内細菌はヒトが産まれたときから腸内にあり、500万もの遺伝子を遺伝的プロファイルに付加しており、生理学的に大きな影響を与えている。「この腸内フローラは、食事や運動、睡眠などの生活習慣によって変えていくことができますが、若い頃に基礎ができている可能性があります」と、フレッシナー教授は指摘する。
研究チームはマウスを使った実験を行い、運動を毎日行ったマウスの腸内では良好な腸内細菌叢が形成されており、運動をしなかったマウスに比べ、体に良い影響を与える善玉菌である「プロバイオティック」の状態が良いことを確認した。
健康な腸内細菌叢は脳の機能を健康に保つためにも有益であり、抗うつ作用をもたらすという。ヒトの脳は腸内細菌の出す物質の影響を受けていることは、過去の研究でも確かめられている。
運動が腸内フローラを改善する効果は年齢が上昇しても維持されるかについてはよく分かっていない。しかし「運動をはじめる時期は早ければ早いほど良く、腸内環境が改善し脳にも良い影響があらわれることが分かっています」と、フレッシナー教授は言う。
運動をすると腸内フローラが活性化することは、アイルランド大学の研究でも明らかになっている。
研究チームは運動が腸内フローラにもたらす影響を評価するため、40人のプロラグビー選手から採取した糞便と血液サンプルを、一般男性(対照群)のもとと比較した。対照群となった46人の男性はスポーツ選手ではないが、ラグビー選手の身体サイズと年齢が似ていた。
参加者は食事に関するアンケートに答え、実験の4週間前に187種類の食品を食べた頻度・量、通常の身体活動レベルを報告した。
その結果、運動量の多いラグビー選手は対照群の男性よりも、腸内細菌叢が多く、筋肉・組織の損傷を示す酵素であるクレアチンキナーゼのレベルが高いにも関わらず、炎症マーカーが低レベルだった。
腸内菌の種類も多かった。例えば、ラグビー選手の腸内菌は標準BMIの男性よりも40分類群、BMIが高い男性よりも48分類群多かった。例えば、腸内細菌であるアッケルマンシア属には肥満や2型糖尿病を改善する作用があるとされているが、ラグビー選手ではこの腸内細菌が多かった。
「健康を保つには、腸内細菌と呼ばれる常在菌を無視するわけにはいきません。腸内で善玉菌を増やし、活動を活発にするために食事が重要ですが、運動も大切な要素です。運動は腸内細菌の状態を改善し、免疫力や代謝を高めます」と、研究者は述べている。
Early-life exercise alters gut microbes, promotes healthy brain and metabolism(コロラド大学ボルダー校 2015年12月29日)
Early life exercise may promote lasting brain and metabolic health through gut bacterial metabolites(Immunology and Cell Biology 2016年1月12日)
The Irish Rugby Team has Exceptional Guts(Teagasc 2014年6月10日)
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